肥前吉田焼

肥前吉田焼

肥前吉田焼とは

肥前吉田焼(ひぜんよしだやき)とは、佐賀県嬉野市で生産されている陶磁器です。

小規模の産地ながら、ほかの焼物にはない独特の魅力を持ち、特に食器類は古くから知名度が高く、庶民の生活に広く浸透しています。

伝統的な陶磁器はもちろん、時代の流れに合わせて新しいタイプの陶磁器も積極的に創作するその意欲的な活動が、多くのファンを獲得しています。

肥前吉田焼の歴史と、佐賀藩主・鍋島直茂の功績

肥前吉田焼の歴史は古く、西暦1500年代後半には既に陶磁器の生産が行われていたことをうかがわせる痕跡が、発掘調査によって明らかになっています。

言い伝えによると、1577年に吉田を流れる羽口川の上流で白く光る石が発見され、これが陶磁器の生産につながったと記録されています。

江戸時代に入って鍋島直茂が佐賀藩の藩主に就くと、焼物の生産をさらに活性化させるために朝鮮から職人を招き、吉田の地に窯元を構えたことから吉田焼が誕生。

1800年代に入ると、副島弥右衛門が吉田焼の窯数を増やし、生産を向上させたことにより吉田焼はさらに発展。

この頃から食器類が生産品の中心となりました。

一時期は価格の下落などで吉田焼は窮地に立たされますが、明治に入ると復興を目指し、士族を中心に陶器製造会社「精成社」が吉田の地に設立されます。

おもに食器を生産し、朝鮮や中国へ輸出することによって吉田焼は息を吹き返しました。

近隣の名産地である有田焼の影響も受け、生産技術が向上し、大正に入ると朝鮮半島の陶磁器市場を独占するほどに高い人気を獲得。

しかし好景気は長くは続かず、戦争によって朝鮮半島の情勢が悪化したことにより販路が断たれ、ほかの産地に押されていった吉田焼は再び存亡の危機を迎えます。

窮地を脱するために吉田の窯元たちが協力し、共同出資して設立した「吉田製陶株式会社」によって陶磁器生産の合理化を図りました。

復活した肥前吉田焼は食器の生産に力を入れ、現在は嬉野温泉の観光地としての人気向上に伴い、観光客向けに数多くの陶磁器を提供しています。

伝統を守りながら新技法も取り入れる肥前吉田焼の特徴

肥前吉田焼の特徴は、工芸品としての美しさも持ちながら、食器などの生活用品を多く生産していることです。

美術的価値の高い大型の花瓶などはほとんどなく、あくまでも顧客の日常生活で実際に使用できる陶磁器の生産に特化。

肥前吉田焼において食器の生産は1800年代から本格的に行われ、明治に入って朝鮮や中国に向けて販路が拡大された頃から、大量生産・大量販売をしています。

さらに肥前吉田焼には地理的要因もあり、嬉野は茶葉の産地でもあることから、茶碗、急須などの茶器が多く生産されてきました。

また、嬉野は九州を代表する温泉地でもあり、観光地として近年ますます注目されています。

温泉を目的に訪れた観光客にお土産として陶磁器を買ってもらおうという試みが実を結び、肥前吉田焼は徐々に知名度が向上。

現在では食器の一大ブランドとして人気を獲得しています。

そんな肥前吉田焼ですが、過去には近隣の有田焼や波佐見焼の下請けとして、影の立場で生産活動を行ってきました。

その間、技術を磨いて独自の陶磁器スタイルを確立し、現在に至ります。

肥前吉田焼には11軒の窯元があり、それぞれが得意な生産品と特徴を持っています。

肥前吉田焼の個性のひとつである水玉模様を中心に食器類を生産している窯元、最新の3Dデータで型作りを行い、デザイン性の高い茶器や食器類を数多く生産している窯元もあります。

肥前吉田焼の現代での使われ方とお手入れ方法

肥前吉田焼は古くから食器を中心に生産されており、基本的には現在もそれは変わっていません。

中でも飯椀、急須、湯呑、そば猪口、土瓶が代表的な生産品です。

昭和を代表するデザインの水玉模様が象徴的で、ほかの食器のような絵付けの水玉模様とは違う、独特の「丸を彫る」工法によって描かれています。

嬉野が茶葉の産地であることから、肥前吉田焼は茶器の生産にも力を入れており、日常生活で使用する急須と湯呑は品揃えが充実。

それゆえ、嬉野を訪れた観光客が茶葉と茶器をセットでお土産に購入してくれることも多いのです。

肥前吉田焼の茶器は、お茶を美味しくのむこと、ティータイムが楽しくなるような製品を目指して生産されています。

肥前吉田焼の陶磁器を使用する場合、日々のお手入れは丁寧に洗うことと、よく乾燥させることです。

初めて使うときには、あらかじめ煮沸しておくと、「焼きを締める」という効果が期待できるため、汚れが付着しにくくなります。

水につけておくだけでも一定の効果はあるので、試してみるとよいでしょう。

ただし、使用後に長く水につけておくと汚れや洗剤がしみ込んで落ちなくなってしまうので注意しましょう。

シミや茶渋がついてしまったときは、粗塩をつけてこすることによってきれいに落ちることがあります。

においが付着してしまったときは、重曹を入れた水に浸けておいた後、乾燥させるとにおいを取ることができます。

肥前吉田焼の見学・体験ができる場所

肥前吉田焼窯元会館

所在地 佐賀県嬉野市嬉野町大字吉田丁4525-1
電話番号 0954-43-9411
定休日 年末年始(12月29日~1月1日)
営業時間 8:30~16:30(体験受付時間は8:30~15:00)
HP https://www.yoshidayaki.jp/
備考 【絵付け体験】陶器の形状・サイズによって1点880円~1,320円(税込)かかります。【手びねり体験】料金(税込):1名2,310円平日・土曜は1名でも体験可能です。(20名以上の団体は事前予約が必要)日曜・祭日は5名以上の団体のみ(事前予約が必要)

江口製陶所

所在地 佐賀県嬉野市嬉野町大字吉田丁4753
電話番号 0954-43-9421
定休日 日曜・祝日
営業時間 10:00~15:30
HP https://eguchiseitosho.jp/
備考 【工場見学】 月曜~水曜のみ受け付けております。(要予約) 電話またはメールでお問い合わせください。

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