有松/鳴海絞とは
有松・鳴海絞(ありまつ・なるみしぼり)とは、愛知県名古屋市緑区の有松・鳴海地域で主に生産されている織物です。
絞り染めによって染められている織物で、1975年に国の伝統的工芸品にも指定されています。「有松絞」「鳴海絞」と別々に呼ばれることもあります。
有松・鳴海絞の絞り技法は100種類以上あり、さまざまな技法で多種多様な模様を表現しているのが最大の特徴です。
技法は大きく分けると「くくり絞り」「縫い絞り」「桶染め絞り」「板締め絞り」の4種があります。これらの技法を組み合わせたりアレンジしたりすることによって、多くの模様を生み出しているのです。
基本的に1人の技術者が1つの技法を持っている有松・鳴海絞。約100人の職人がそれぞれの持っている技法を後世に伝えていくという形をとっています。
染めができあがるまでにかかるのは50〜60日ほど。図案を考え、型紙を作ったり染めたり、仕上げをおこなったりと、いくつかの工程があります。
昔から手ぬぐいや着物がよく制作されていましたが、現在はインテリア類やマスクなども人気となっています。
約400年の歴史を持つ有松・鳴海絞
有松・鳴海絞の歴史は約400年前までさかのぼります。名古屋城に来ていた人物から絞の技法が伝えられたのがきっかけです。
そして竹田庄九郎という人物が手ぬぐい(豆しぼり)を作って販売し始め、有松・鳴海絞が世に広まり始めます。この手ぬぐいを「九九利絞(くくりしぼり)」と呼んでいました。
愛知県西部あたりを治めていた尾張藩は、有松・鳴海絞を藩の特産品として保護し始め、竹田庄九郎を御用商人に取り立てます。
そこから旅人が故郷へのお土産品として有松・鳴海絞を買い求めるようになり、町の名産品となりました。
この繁盛ぶりは葛飾北斎や歌川広重の浮世絵にも描かれ、有松・鳴海絞の繁栄に大きく貢献したとして、竹田庄九郎をたたえた記念碑も建てられています。
絞り染めはもともと有松の町のみでおこなわれ、販売を隣町の鳴海でおこなうという形でした。それが徐々に鳴海でも絞り染めが生産されるようになり、有松・鳴海全体で絞り屋が見られるようになりました。
その後、組合の結成などをおこないながら有松・鳴海絞が継承されていき、1975年には愛知県で初めて国の伝統的工芸品に指定されます。
1992年には名古屋市で「第1回国際絞り会議」が開催。参加者は国内のみならず海外からも集まり、展覧会やファッションショー、ワークショップがおこなわれました。
これをきっかけに「ワールド絞りネットワーク」を設立し、絞りが世界中に広まります。新しい技術や新素材の開発もおこなわれており、有松・鳴海絞は日々進化する伝統工芸品として今でも注目を集める絞り染めとなりました。
職人技が光る有松・鳴海絞の特徴
国内の絞り染め製品の大半を担う有松・鳴海絞。いちばんの特徴は模様の多さにあります。
絞りには糸でくくったり針で縫ったりするほか、板ではさんだりして模様を表現するなど、約100種類ほどの技法があります。
代表的な技法は、竹田庄九郎によって作られた「手蜘蛛絞り(てくもしぼり)」や鳴海絞の代表的な模様「三浦絞り(みうらしぼり)」、芯に豆を入れて模様を作る「豆絞り(まめしぼり)」などです。
ほかにも多くの絞り技法があり、それらをアレンジすることでもっと多くの模様が表現されます。
有松・鳴海絞の発祥の地である「有松」は、観光地としても有名な場所です。伝統的な卯建(うだつ)が残る和瓦の屋根や塗籠造り(ぬりごめづくり)の壁など、江戸時代の建築物が連なる町並みはまるでタイムスリップしてきたような雰囲気。
この町並みは「江戸時代の情緒に触れる絞りの産地 -藍染が風にゆれる町 有松-」として日本遺産にも認定されました。有松の町を散策しながら有松・鳴海絞の歴史に触れ、絞りの魅力を味わってみるのもおすすめです。
有松・鳴海絞の現代での使われ方とお手入れ方法
有松・鳴海絞は手ぬぐいや着物、浴衣のほか、バッグやストール、小物類も制作されています。
模様や色によってまったく雰囲気の異なるものになる有松・鳴海絞。お土産としてたいへん人気のある伝統工芸品です。
手ぬぐいや浴衣など木綿でできた有松・鳴海絞は自宅でお手入れができます。おしゃれ着洗い用の中性洗剤でやさしく押し洗いをしましょう。干すときは形を整えて日陰で干します。
絹織物でできた絹織物は、専門のクリーニング店や呉服店でのお手入れが安心です。
大切にお手入れして、歴史ある有松・鳴海絞を長く楽しめるようにしましょう。
有松/鳴海絞の見学・体験ができる場所
有松・鳴海絞会館
所在地 | 愛知県名古屋市緑区有松3008番地 |
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電話番号 | 052-621-0111 |
定休日 | 年末年始、その他臨時休館日 |
営業時間 | 9:30~17:00(実演は16:30まで) |
HP | https://shibori-kaikan.com/ |
備考 | 【絞り実演】 絞会館2階 9:30〜16:00 【絞り体験(要予約)】 ハンカチ/900円〜 テーブルセンター/2,200円 のれん/2,800円 エプロン・Tシャツ/3,400円〜 体験で絞った作品は染め上がったあと自宅まで郵送してもらえます。 |
まり木綿
所在地 | 愛知県名古屋市緑区有松1901 |
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電話番号 | 052-693-9030 |
定休日 | 火・水・木曜日 |
営業時間 | 10:00~18:00 |
HP | https://marimomen.com/ |
備考 | 可愛らしい色使いの有松・鳴海絞を取り扱っているお店です。有松・鳴海絞の手ぬぐいや浴衣、ストール、小物類の購入ができます。 |