播州そろばんとは
播州そろばんとは、兵庫県東播磨の小野市を中心にしてつくられているそろばんです。
播州そろばんは、部品ごとに作業工程を分業化しており、その工程は100近くあります。
そのことで可能となった大量生産と高度な伝統技術により、1976年に通産大臣(現・経済産業大臣)指定の「伝統的工芸品」として認められました。
時代の移り変わりと需要の変化が密接する、播州そろばんの歴史
算盤(そろばん)の始まりは、室町時代の末期に中国から長崎を経由した後、大津へと伝わったことが始まりでした。
大津は商業地である大阪や京都が近く、商売人たちはそろばんを頻繁に使用します。そのおかげで製造も発達し「大津そろばん」が完成しました。
播州そろばんの基盤となる小野市と大津とは離れていましたが、安土桃山時代に豊臣秀吉の小野市の隣にある三木城を攻略しました。
その際、そこに住んでいた一部の住民が大津に逃れたことで、大津そろばんを知るきっかけが生まれたのです。
大津へ逃れた人たちは、そろばん製造の技法を習得。後に地元の播州に帰郷し、製造を始めたのが播州そろばんの起源といわれています。
小野市は環境的にも、そろばんの生産に適していたため、製造が盛んになりました。
小野市は播州平野の中心に位置し、土壌も肥沃なため農業が発達しており、農業の閑散期にそろばんを製造することができたのです。
江戸時代に入ると、日本各地で寺子屋が奨励され、読み書きそろばんの普及で、そろばんができることが求められました。
そして日清戦争後、水車動力による「大川式製珠機」が発明されたことにより、そろばんの大量生産が可能となりました。
播州そろばんの需要がもっとも飛躍的に伸びたのは、第二次世界大戦後の昭和の時代です。
経済復興と発展も伴って、昭和の半ばまでは、銀行や経理の仕事で、そろばんができることが採用の条件となることも多くありました。
「珠算教室」も増え、そろばんの需要が一気に増えました。
近年では電卓やパソコンの普及により、そろばんの需要が減少しています。
現在は学校での使用、育児や教育の場での使用をメインに、現代使用に合わせたそろばんを開発しています。
職人の手作業なのに大量生産が可能!播州そろばんの特徴とは
播州そろばんは、独特の丸みとひし形が美しいそろばんで、職人の手によってつくられる工芸品ですが、大量生産されています。
播州そろばんを製造する工程は、100近くあるのですが、その工程を分業化させたことにより、大量に生産をすることを可能にしたのです。
職人の手作業でつくる伝統的工芸品を分業でつくることは、ほかの工芸品には見られない播州そろばんの大きな特徴です。
まず、そろばんの細かい部品の製造作業は、枠材、珠、軸(ひご)をつくる作業となります。
そろばんの部品づくり
1.枠をつくる
非常に重くて硬い黒檀(こくたん)という木をインドネシアやアフリカから輸入し、そろばんの枠をつくっていきます。
まず原木を大割にして、細かく切っていき各部分に合わせた板に加工していきます。
2.珠をつくる
播州そろばんは、一丁のそろばんをつくるのに100を越える工程を、多くの職人たちが分業制で製造していきます。
珠にする木は、オノオレカンバといわれる「斧が折れる」ということから名づけられた樺の木を使用します。
樺の幹は1mm成長するのに3年かかるといわれています。高級そろばんには、柘植や黒檀、紫檀(したん)などの木が使われますが、柘植は樺の木以上に成長に時間がかかり貴重なのです。
そのような密度の高い年輪中心部からつくられた珠は重く、弾くととてもいい音がします。
珠をつくるための原木を選定し、丸い形に輪切りにした後、丸い形に打ち抜き、さらに丸く玉の形に削ります。
3.軸(ひご)をつくる
そろばんの軸(ひご)の部分には竹を使用。主に真竹(まだけ)を使用することが多く、高級そろばんには煤竹(すすたけ)を使用します。
この軸によって、正確な珠の動きが保たれるため、そろばんにおける竹軸はとても大事な部分となります。
枠(わく)・珠(たま)・軸(ひご)の細かい作業を分業でつくった後は、それぞれ職人の元に集められて、そろばんを組み立てる工程へと入ります。
そろばんの組み立て作業
1.組み立て用の穴を開ける枠加工(わくかこう)作業
枠加工とは、そろばんの枠に穴を開けて溝をつくり、組み立てていけるようにする作業です。
この時に鉋(かんな)を使い、木材の表面を滑らかにしていく作業も行います。そして、裏板用の板をつくり、裏板がはまる溝につけ、上枠と下枠に「はり」という穴を開けていきます。
この穴は竹軸(たけひご)を通す穴です。そしてこの竹軸に珠を入れていく作業に入ります。
2.竹軸に球を入れる
珠をたくさん入れた箱の中で、軸を差した枠をゆすると見事に珠が軸に入っていきます。職人技が光る工程です。
3.すべてを組み立てて、そろばんを完成させる
珠が入った後は、左右枠、裏板、裏棒などを入れていき、組み立ての仕上げを行います。
最後に紙やすりや椋(むく)の葉で磨き上げ艶出して完成です。
播州そろばんの現代での使われ方とお手入れ
播州そろばんは、パソコンや電卓の普及により、現在では需要が減少しています。
しかし近年では、そろばんは脳トレにもなり、そろばんによって培われる計算力などは重要な基礎能力と考えられ、「世界最良の算数教具」として世界にも広がりつつあります。
播州そろばんのお手入れは、そろばんは木材からつくられているので湿気に弱いです。
そのため乾燥したところで保管するようにしましょう。
また長年使用していると、手脂やほこりなどで滑りが悪くなることがあるので、ブラシなどで珠と珠の間を軽くブラッシング、そして柔らかい布で優しく拭いてください。
播州そろばんの見学・体験ができる場所
小野市伝統産業会館
所在地 | 兵庫県小野市王子町806-1 |
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電話番号 | 0794-62-3121 |
定休日 | 年末年始(12月28日~1月4日) |
営業時間 | 9:00~17:00 |
HP | http://densan.onocci.or.jp/ |
備考 | そろばん博物館があり、展示販売しています。 |
そろばんビレッジ
所在地 | 兵庫県小野市垂井町644-5 |
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電話番号 | 0794-63-7089 |
定休日 | 火曜日 ※年末年始、お盆期間はお問い合わせください。 |
営業時間 | 11:00〜17:00(平日) 10:00〜18:00(土・日・祝) |
HP | http://daiichi-j.com/village-2 |
備考 | カラフルな材料を自分で選んで、世界に一つだけのマイそろばんを作ります。(9〜15桁)1,510円〜2,480円 |