別府竹細工とは
別府竹細工(べっぷたけざいく)とは、大分県別府市周辺で生産されている、竹製の工芸品です。県内で産出するマダケという竹を主材料として作られます。その伝統的な製法を長年守り続けてきたことにより、1979年に経済産業大臣より、伝統的工芸品の指定を受けています。
日用品から芸術品へと姿を変えた別府竹細工の歴史
別府竹細工の起源は、奈良時代まで遡ります。『日本書紀』には、景行天皇(けいこうてんのう)が九州南部の熊襲(くまそ)討伐を終えた帰りに別府に立ち寄った際、お供の台所方が良質な竹から茶碗カゴを作ったことが記されています。
こうして生まれた竹細工は、室町時代に入ると、行商用のカゴとして使われるようになります。そして江戸時代に入ると、別府は温泉地として有名になり、各地から湯治客が集まります。その湯治客が、炊いた米を入れるカゴなどの土産物として竹カゴを買い求めたため、別府の竹細工はますます生産されるようになりました。
さらに、1902年、別府浜脇両町学校組合立工業徒弟学校(現・大分県立大分工業高校)が創立されます。徒弟学校は多くの竹職人を輩出し、別府竹細工を単なる土産物に留まらない優れた工芸品として、その価値を高めていったのです。
そんな別府竹細工ですが、高度経済成長期を迎えた日本では、プラスチック製品の輸入が盛んになります。安価で丈夫なプラスチック製品に圧され、別府竹細工は存続の危機に瀕してしまいました。
別府竹細工はこれまで培われた高度な技術を活かし、手軽な生活用品から、次第に高級竹製品や芸術品としての道を歩むようになります。1967年には生野祥雲斎(しょうのしょううんさい)が竹工芸初の人間国宝となり、別府竹細工というブランドはますます高度で洗練されたものへと昇華されます。
このように、別府竹細工は、その時代の需要に応じて柔軟に姿を変えていきながら、今日まで受け継がれているのです。
多彩な編組が美しい別府竹細工の特徴
別府竹細工の特徴は、竹ひごを手で編み上げる「編組(へんそ)」という技法。「四つ目編み」「六つ目編み」「八つ目編み」「網代編み」「ござ目編み」「松葉編み」「菊底編み」「輪弧編み」の8つの編組を基本とし、実に200通り以上の編み方が確立されています。
この多彩な編組こそが、別府竹細工を唯一無二の魅力を持つ工芸品にしているのです。また、材料にマダケを使っていることも、別府竹細工ならではの特徴。
マダケはモウソウチク、ハチクとともに日本の三大有用竹の一つに位置している、生活に深く関わりのある竹なのです。しなやかで丈夫な材質であり、竹細工のみならず建築にも使われています。
そんな別府竹細工ですが、作り方にはいくつかの工程があるのです。材料となる竹を、苛性(かせい)ソーダを入れた熱湯で煮沸し、油を抜きます。
天日干しで乾燥させた竹を切断していき、どんどん薄く加工していきます。薄くなった竹は小刀で幅を揃えられ、竹ひごに加工されるのです。
竹ひごができたら、底の平面を編んでいく「底編み」、中心部を編む「胴編み」、先端の部分を編む「首編み」によって形を作っていき、最後に縁(ふち)を仕上げます。
編み上がった作品は染料入りの熱湯で煮沸染色します。染色した竹細工は、乾燥させて布で磨いていくことで、艶が生まれるのです。
そのまま完成という場合もあれば、最後に漆を塗って乾かす場合もあります。別府竹細工は、最後の染色加工の種類によって呼び名が異なります。
青竹のままのものを「青物」、油抜き加工したものを「白物」、染色したり漆を塗ったりするものを「染物」や「黒物」と呼びます。このように、一口に別府竹細工といっても、その姿はさまざまなのです。
別府竹細工の現代での使われ方とお手入れ方法
伝統ある別府竹細工も、今日では、さまざまな種類の製品が作られるようになりました。カゴを中心に、美しい青竹を使った日用品や、ファッション性を追求したバッグ、インテリア照明など、その種類は多岐にわたります。
軽くしなやかで丈夫、かつ腐食もしにくいという竹の特徴は、さまざまな場面で活躍します。近年ではピアスやイヤリング、髪留めなど、アクセサリーの世界にも進出しています。
また、別府市内にある旅館の内装に竹編みの技法が用いられるなど、美術工芸品としての制作も数多く行われているのです。
別府市にある別府竹工芸訓練センターにて訓練を受けた一流の竹細工作家たちの作品は、その精巧な作りに驚かされます。
男性作家だけでなく、女性作家も活躍しているので、作家に注目して作品を探してみるのも面白いでしょう。
インターネット通販で購入することもできるので、ぜひ写真をじっくり眺めて、自分に合った別府竹細工の作品を見つけてください。
そんな別府竹細工ですが、取り扱いの方法を知っていれば、長い間その魅力を楽しむことができます。
別府竹細工を菓子皿などの食器として使う場合は、一度水で濡らしてから使ってください。そのまま使うと、次第に黒ずんできたり、食べ物の匂いがついてしまったりします。
また、油分の多い揚げ物などを盛り付ける場合は、クッキングシートなどを敷いて油が染み込まないようにしてください。
別府竹細工のザルを購入した際は、使う前に熱湯に浸すことで変色防止になります。鍋いっぱいに水を沸騰させ、大さじ1くらいの塩を入れたものに浸して、そのあと水洗いしてください。
また、洗う時には、普通の食器と同じように中性洗剤を使って洗えば大丈夫です。網目の細かいザルはたわしを使って洗い、軽く水分を拭き取ってから、風通しのよいところで乾かします。
竹はカビが発生しにくい代わりに、乾燥で割れてしまう恐れがあるため、直射日光の当たるところで乾かすのは避けましょう。
仮にカビが生えてしまった場合でも、カビを拭き取ってから熱湯をかけることでカビを取り除くことができます。
別府竹細工は熱に強く、丈夫で劣化しにくいことから、さまざまな用途で使うことができます。また、使ううちに風合いが変わり、深みが増していくことも魅力です。ぜひ、別府竹細工を長い間使って、その変化をお楽しみください。
別府竹細工の見学・体験ができる場所
別府市竹細工伝統産業会館
所在地 | 大分県別府市東荘園8丁目3組 |
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電話番号 | 0977-23-1072 |
定休日 | 月曜日(月曜日が祝日の場合は翌日)、12月29日~1月3日 |
営業時間 | 8:30~17:00 |
HP | https://takezaikudensankaikan.jp/ |
備考 | 入館料390円(20名以上の団体は330円) 体験学習あり |
別府竹細工東京教室
所在地 | 東京都墨田区京島3-22-12 |
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電話番号 | メールのみ(HP内お問い合わせフォームより) |
定休日 | 火曜日、水曜日、木曜日、金曜日(体験教室) |
営業時間 | HPをご確認ください |
HP | https://www.beppu-take-kumiai.com/index.htm |
備考 | 【体験メニュー】竹細工編組基本型の習得(六ツ目編み・四ツ目編み・網代編み)、材料取り 入会金2,000円、会費45,000円(10回) |