越後三条打刃物とは
越後三条打刃物(えちごさんじょううちはもの)とは、新潟県三条市で生産されている伝統的な刃物です。
打刃物と呼ばれる日本古来の伝統的な鍛冶技法で生産された刃物で、戦後に広く普及した大量生産の刃物とは一線を画した高度な技術が凝縮されています。
越後三条打刃物は熟練の鍛冶職人たちが伝統を守っており、日本国内のみならず海外でも高く評価されている、実用的かつ機能美にあふれた刃物です。
越後三条打刃物の歴史と、名代官・大山清兵衛
越後三条打刃物の歴史は江戸時代初期に始まったと伝えられています。
当時の越後は現在ほど豊かな稲作地帯だったとはいえず、たびたび起こる河川の氾濫のために貧しい農民が多く、年貢米を納めることも苦労する生活を余儀なくされていました。
三条城の代官として着任していた大山清兵衛がそのような農民たちの様子を見て、江戸から釘職人を招き、農閑期の副業とするため農民たちに釘作りを伝授させます。
大山清兵衛の計らいにより2年間ほど釘作りを学んだ農民たちは、徐々に生活が潤い始めるとともに、釘作りを専業とする農民も現れ始めました。
さらに釘作りの技術を応用して、農作業に使う鎌や鍬(くわ)などの生産が始まります。
藩の石高向上のために次々と新田開発が行われたことも追い風となって、農具の生産が増え、三条城下に鍛冶職人が集う「鍛冶町」が形成されました。
鍛冶町が栄えたことにより、信濃川の水運を利用して三条の農具が広く流通するようになり、次第に商業も発展。
金物商人を介して大工道具などほかの生産の注文も入るようになります。
こうして三条は鍛冶の一大産地になり、最初に生産が始まった釘も江戸の街の発展に大きく貢献するなど、越後三条打刃物は全国にその名が知られるようになりました。
現在の三条は包丁などの刃物の世界的な名産地になっており、その原点となったのが大山清兵衛の計らいによって生まれた越後三条打刃物なのです。
鍛造によって生まれる越後三条打刃物の特徴
越後三条打刃物の特徴は、古くから伝わる打刃物の工法で製造されていることで、高温の火で鉄を真っ赤に焼き、ハンマーで叩いて鍛えて生産します。
また、その工法によって鍛えられたことによる切れ味の鋭さや、刃が欠けたり摩耗したりしにくく、丈夫で長持ちする耐久性も特徴です。
越後三条打刃物は10品目もの生産品が伝統的工芸品に指定されており、包丁などの生活用品から鎌などの農具、鉋(かんな)などの大工道具までさまざま。
越後三条打刃物の発展の原点となった和釘も指定されており、現在でも全国の建築現場で重宝されています。
このように越後三条打刃物は多岐に渡る生産品目も特徴で、それぞれの道具に合った形状と材質で生産されているため、扱いやすいという評価も得ています。
越後三条打刃物は鍛冶職人の手によってたくさんの工程を経ており、過酷な肉体労働と極限まで高めた集中力で生産された貴重な工芸品です。
真っ赤に熱した鉄を金型で叩き、形を整える鍛造という工程は高度な技術が必要で、熱せられた鉄の中の組織が均一化されて強度が高くなります。
鍛造によってさまざまな形の作品を作ることができるので、越後三条打刃物において最も重要な工程ともいえます。
工場で刃物が大量生産される現代でも、極上の越後三条打刃物は職人の手作業で丹念に生産されているのです。
越後三条打刃物の現代での使われ方とお手入れ方法
越後三条打刃物は元々は釘の生産から始まりましたが、やがてその技術が農具の生産に応用され、包丁や大工道具などへと広がっていきました。
その伝統は現在も継承されており、2009年4月に経済産業大臣から伝統的工芸品に指定されました。
その内訳は、「包丁」「切出(きりだし)小刀」「鉋」「鑿(のみ)」「鉈(なた)」「鉞(まさかり)」「鎌」「木鋏(きばさみ)」「ヤットコ」「和釘」の10品目にも及びます。
これらの工具は工芸品としてだけでなく、実際の作業現場で職人たちに広く使用されており、切れ味の良さや耐久性が高く評価されています。
職人が使用する工具類を除くと、包丁や小刀、鎌などが該当しますが、これらは一般家庭でも広く使用されています。
また、越後三条打刃物は耐久性に優れていますが、日頃のお手入れをすることによって、より長く愛用することができます。
包丁は砥石を使って研ぎますが、少し切れ味が悪くなったと感じたときが頃合いです。
明らかに切れ味が悪くなってから研ぐのは時間と手間がかかるので、定期的に研ぐことでメンテナンスを楽にすることができます。
時々、包丁を殺菌させようと火であぶる人がいますが、切れ味が悪くなるので絶対に行わないようにしましょう。
長期間使用しない場合は、水気をしっかり取り除き、椿油などの刃物用の油を塗って新聞紙で包んで保管すれば、新聞紙が水分を吸い取り刃物に付着することを防いでくれます。
小刀も基本的にお手入れ方法は同じで、水分が付着して錆びることを防ぐために、乾いた布でこまめに拭き取ることで長持ちさせることができます。
鎌は特に草や木の水分が付着することが多いので、使用後は中性洗剤で洗浄し、乾いた布で拭き取るとよいでしょう。
越後三条打刃物の見学・体験ができる場所
三条鍛冶道場
所在地 | 新潟県三条市元町11-53 |
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電話番号 | 0256-34-8080 |
定休日 | 月曜日(祝日の場合は翌日)/12月29日から翌年1月3日まで |
営業時間 | 9:00~17:00 |
HP | https://kajidojo.com/ |
備考 | 【和釘づくり】大人1人500円、中学生以下1人250円 【ペーパーナイフづくり】大人1人1,000円、中学生以下1人500円 【包丁研ぎ】大人1人300円、中学生以下1人150円 |
水野製作所
所在地 | 新潟県三条市荻堀1397-62 |
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電話番号 | 0256-46-4378 |
定休日 | |
営業時間 | 9:00~17:00 |
HP | https://mizunoss.com/ |
備考 | 斧・鉞(まさかり)・掴箸(つかみばし)の製造・販売と、斧と鉞の研ぎ直し・柄の交換、掴箸の合わせやがたつきの修正を行っています。 |