行田足袋とは
行田足袋(ぎょうだたび)とは、埼玉県行田市で作られている足袋のこと。行田市は足袋の生産が国内一位で、足袋が特産品にもなっています。
利根川と荒川という二大河川に挟まれた行田。豊富な水と気象条件が揃ったこの地域では、綿花や藍の栽培・綿布の製造が盛んにおこなわれ、これを原料とした足袋が作られるようになりました。
行田足袋の生産が始められたのは江戸時代の中ごろ。時代とともに生産規模も大きくなり、今では「足袋といえば行田」といわれるほどに成長しました。
生地には木綿、足袋の履き口についているこはぜには真鍮(しんちゅう)やアルミが使われています。足袋は和装には欠かせないアイテムなので、靴下が普及している現代でも需要のあるものとなっています。
足袋といえば行田足袋
行田足袋は約300年の歴史を持つ伝統工芸品です。
その始まりは江戸時代中期。このころに描かれた『行田町絵図』に3件ほどの足袋屋が描かれています。
行田の土地が足袋の原料の生産に向いていたり、江戸時代の五街道の一つ、中山道が通っていたりしたことを理由に、足袋生産が盛んとなっていきました。
当時はひと針ずつ手作業で縫い付けていたため、たいへん手間のかかる代物だった行田足袋。下級武士や農家の女性も副業として足袋生産に携わっていました。 今の埼玉県行田市を治めていた忍藩(おしはん)の藩主も足袋作りを奨励したとされています。
その後100年ほどで足袋屋は約30軒まで増加。さらに足袋は普及していき、足袋商人は東北地方や北海道にまで販売の範囲を広げました。
明治時代に入ると、それまで手作業だった足袋生産にミシンが導入されるようになり、生産量はますます増大。日露戦争の好景気もあいまって足袋工場がたくさん建てられていきます。
大正時代には織布業や染色業、ミシン屋など、足袋生産に関わる産業が行田市内で発展し、行田市全体が「足袋作りの町」として栄えるようになりました。
そんな行田足袋は、2019年に経済産業大臣により国の伝統的工芸品に指定されます。しかし国に認められたのは行田足袋自体だけではありませんでした。
足袋の製造に使われた道具の資料が2015年に「行田の足袋製造用具及び製品」として国の登録有形民俗文化財に登録、2020年には製造用具やその関連資料も「行田の足袋製造用具及び関係資料」として国の重要有形民俗文化財に指定されています。
行田足袋はそれに関わる文化や伝統にも価値が認められたのです。
現代では靴下の普及により昔ほどの足袋需要はなくなりましたが、日本の文化である和装に欠かせないアイテムとして、国内外へ向けて生産が続けられています。
行田足袋はドラマでも大注目!
行田足袋の特徴は蒸れにくさとフィット感。靴下に慣れている現代人にとって足袋は少し違和感があるかもしれませんが、長く履くほどその独特のフィット感を感じられます。
そのフィット感の秘密は立体的な縫製にあります。指の収まりがよくなるように、ふっくらと作られているのです。
昔は着物に合わせるために白い無地のものが主流でしたが、今ではカラフルでポップな柄も作られています。クールなファッションアイテムとして、海外からの観光客のお土産品としても人気です。
さらに、足袋をもとにして作られた「ランニング足袋」も登場。裸足に近い感覚で走れるランニング足袋は、継続して使っていくことで疲労を感じにくいランニングフォームを獲得できるといいます。
ランニング足袋は、フルマラソンのランナーとして有名な高岡尚司さんときねや足袋株式会社によって開発されました。この開発の経緯をヒントに創作された小説はテレビドラマにもなり、行田足袋が世間に知れ渡るきっかけにもなっています。
そんな行田足袋は、成人の約30%に見られる外反母趾や腰痛にも効果があるとか。普段あまり意識しない足の指に意識が向き、力もしっかり使えるので、脳への刺激にもなるとされています。
行田足袋の現代での使われ方とお手入れ方法
着物を着る方にはもちろん、室内履きやファッションアイテムとしても使われている行田足袋。最もポピュラーな白足足袋は着物をかっこよく引き立ててくれますし、普段着に馴染みやすい紺足足袋も好評です。
柄の入った柄足袋もお土産にぴったりで、多くのテレビ番組や雑誌で紹介されています。
足袋は自宅の洗濯機でもお手入れ可能ですが、生地やかたちを損ねないように手洗いするのがおすすめです。干すときはかたちを整え、日陰で干しましょう。
履いているうちに自然とシワは伸びますが、気になる場合はアイロンがけをしても大丈夫です。
底の汚れには硬すぎないブラシで対応しましょう。強くこすると生地を傷める可能性があるので注意してください。
行田足袋の見学・体験ができる場所
足袋とくらしの博物館
所在地 | 埼玉県行田市行田1-2 |
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電話番号 | 048-552-1010 |
定休日 | 平日(夏期休暇あり。冬期は12月半ば〜1月上旬まで休館) |
営業時間 | 10:00〜16:00 |
HP | https://www.tabigura.net/tabihaku.html |
備考 | 【My足袋作り体験(要予約)】 |
創作足袋 千代の松
所在地 | 埼玉県行田市忍1丁目1-16 |
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電話番号 | 048-564-0785 |
定休日 | 不定休 |
営業時間 | 9:00〜18:00 |
HP | http://www.cci-web.com/totsuka/index.htm |
備考 | カラフルな創作足袋(柄足袋)の購入ができます。 |