伊賀焼とは
伊賀焼とは三重県伊賀市を中心に作られる焼物で、伊賀市は忍者の里としても広く知られています。三重県では古くから良質な粘土が採取されていたため、焼物の文化が少しずつ発展しました。伊賀焼に使われる粘土は熱に強く、高温で繰り返し焼き上げた力強い見た目が魅力的です。
焼くことによって変化した表面の風合いや、土そのものの雰囲気を強く感じられる焼物としても人気があります。また、伊賀焼は料理に使う土鍋のイメージが強い人も多いでしょう。熱に強い伊賀焼は調理器具にも多く用いられている焼物で、じっくりと火が通ることから美味しい料理が作れるといわれています。
高温で焼くことで作られる緑色のビードロや黒い焦げ、灰かぶりや山割れなど独特の色合いや雰囲気が楽しめるのも伊賀焼の魅力のひとつです。これらの美しい見た目は偶然作られたようにも感じてしまいますが、実は職人たちが仕上がりを計算しながら焼き上げています。
また、わざと歪ませて作る焼物も多いです。歪んだ形が非常に芸術的かつ個性的な見た目をしていて、作り手の心や技術を身近に感じられます。
時代の変化にあわせて発展してきた伊賀焼
伊賀焼の主な産地である三重県伊賀市では、かつて市内にある槙山周辺の窯で盛んに焼物が作られていました。伊賀焼が作られ始めた正確な年代は分かっていませんが、現在の形である伊賀焼のもととなる古伊賀は700年代頃から作られていた記録が残されています。
当時は朝鮮半島から伝わったとされる須恵器が多く作られていて、複数の窯跡が見つかっているそうです。伊賀焼は日本六古窯のひとつに数えられており、昔からあった良質な粘土と薪の材料となる豊富な森林が焼物文化の発展を加速させたと考えられています。
【室町時代には耳あり伊賀焼が登場】
伊賀焼の歴史の中には「伊賀に耳あり、信楽に耳なし」という有名な言葉があります。これは、室町時代に作られていた水指などに付いていた取っ手のような部分を耳と呼んでいたのが理由のようです。伊賀焼には耳付きのものが多くあり、一方で信楽焼には耳がなかったために2つを比較する言葉として使われていました。
それまでは焼物に大きな区別や差がありませんでしたが、室町時代頃になると産地ごとの形や装飾の違いが生まれるようになります。
【時代の変化に合わせて変わっていく伊賀焼】
初期の伊賀焼は擂鉢(すりばち)や壺といった雑器の製作が中心でしたが、安土桃山時代に茶の湯が盛んになると、茶壺や茶入などの茶器が作られるようになります。茶器制作の中心人物は、伊賀の領主であった筒井定次です。
やがて安土桃山時代が終わると伊賀焼はほとんど焼かれなくなりますが、江戸時代中期には藤堂藩の支援もあって再び作られるようになりました。この頃に作られていた伊賀焼の技術が、現代へと引き継がれています。現在の伊賀焼は国指定の伝統的工芸品に指定されており、全国各地に盛んに出荷されるなど人気の高い焼物です。
小石混じりの素朴な風合いが魅力の伊賀焼
伊賀焼は土に小石が混じる素朴な風合いをした焼き物です。表面にはヘラで「山手道」と呼ばれる波線や格子状の型が描かれています。さらに釉薬を使って「焦げ」や「ビードロ」を演出することに加え、「耳」と呼ばれる装飾を施すのも伊賀焼の大きな特徴。また、意識的に「ゆがみ」や「へこみ」を作ることで、飽きの来ない造形的な美しさも生み出しています。
【耐火温度が高い】
伊賀焼は形を作って乾燥させてから素焼きを行い、釉薬をかけてから再び焼成して作るのも特徴です。高温で焼き上げることで「灰かぶり」や「山割れ」が生じ、独特の風合いへと仕上がります。古琵琶湖に由来する陶土を高温で焼いて仕上げるため耐火温度が極めて高く、日常でも扱いやすいといった特徴もあります。
【伊賀の七度焼とは】
伊賀焼を作る工程の中に「伊賀の七度焼き」と呼ばれるものがあります。これは、高温の窯の中で七回焼くという意味で、繰り返し焼くことから途中で壊れてしまう作品も多いそうです。繰り返し焼いて仕上げると独特の風合いや自然な雰囲気が生み出され、伊賀焼特有の見た目をした焼物になります。
現代での使われ方とお手入れ方法
伊賀焼の素朴な風合いは料理によく合い、現代でも土鍋などに多く使われています。控えめな色合いが盛り付けた料理を引き立ててくれるので、和食に最適な食器としても人気が高いです。丈夫で扱いやすい焼き物なので、家庭でも積極的に使えるでしょう。
伊賀焼の土鍋を購入して初めて使うときには、「目止め」と呼ばれる作業をする必要があります。目止めとは水漏れを防止するために行うもので、お粥を炊いて土の隙間を埋めていきます。米のとぎ汁などでも行えますが、伊賀焼の場合はお粥で目止めを行うのがおすすめです。
目止めが終わったらキレイに洗い、しっかりと乾燥させてから収納します。調理に使用したあとは臭いが付かないように早めに洗い、水分を拭き取って乾燥させてください。濡れたまま保管するとカビや劣化の原因になってしまいます。
また、使用前は鍋底に水分が付いていないか必ず確認しましょう。濡れたまま直火にかけてしまうと、底が割れてしまう可能性があるので危険です。
伊賀焼の見学・体験ができる場所
伊賀焼伝統産業会館
所在地 | 三重県伊賀市丸柱169-2 |
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電話番号 | 0595-44-1701 |
定休日 | 月曜(月曜が祝日の場合翌日休館)、年末年始 |
営業時間 | 9:00~17:00 |
HP | http://www.igayaki.or.jp/?page_id=23 |
備考 | 館内見学、体験など |
長谷園
所在地 | 三重県伊賀市丸柱569 |
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電話番号 | 0120-529-500 |
定休日 | お盆、年末年始 |
営業時間 | 9:00~17:00 |
HP | https://www.igamono.co.jp/ |
備考 | 工房見学、購入など |