飯山仏壇とは
飯山仏壇とは、長野県飯山市で作られている金仏壇のことです。
飯山仏壇は、部品の製作から組み立てまですべて地域内で一貫して行われています。
1975年に、国の伝統的工芸品に指定されました。
素地仏壇から始まった飯山仏壇の歴史
飯山市で、どのくらい昔から仏壇作りが行われていたのか、正確な史実は存在しません。
しかし、一般的には、1689年に甲府からやって来た寺瀬重高という人物が、素地仏壇を作ったことが、飯山仏壇の始まりといわれています。
飯山地域は、室町時代の頃から浄土真宗の信仰が盛んだったということもあり、仏壇作りは人々の生活に自然と溶け込んでいきました。
そして、寺瀬重高が素地仏壇を作ってからずっと後になり、漆塗りの技法、仏壇彫刻の技法などが取り入れられていくことによって、飯山仏壇は伝統工芸品へと昇華していくことになります。
彫刻に関しては、幕末(一般的には1853年~1869年)の頃に現れた、稲葉喜作という仏壇彫刻師の技術が特に優れていました。
この人物が現れたことがきっかけで、飯山仏壇の評価が高まり、制作方法もより複雑になって細分化されていったと考えられています。
飯山仏壇は現在、飯山市の愛宕町を中心に生産されています。
愛宕町には雁木通り(がんぎどおり)という商店街があるのですが、この通りは全国的にも珍しく、仏壇店が軒を連ねています。
約300メートルある商店街の通りには、およそ11軒の仏壇店が立ち並んでいて、別名「仏壇通り」とも呼ばれています。
このように、今も仏壇産業が盛んな飯山市内には、仏壇関係の就業者の数が約150名。
年間におよそ1,000本の仏壇が生産 されて、全国へと届けられています。
信仰心の篤さが垣間見える飯山仏壇の特徴
飯山仏壇の一番の特徴は、宮殿(くうでん)がよく見えるように細工された長押(なげし)部分です。
弓長押(ゆみなげし)と呼ばれるこの作りは、飯山仏壇ならではの特徴で、宮殿の上部にくる長押を弓型にしておくことで、本尊が置かれている宮殿を拝みやすくする設計になっています。
また、宮殿部分にも、職人たちの細やかな配慮が見られます。
飯山仏壇の宮殿は、肘木組物(ひじきくみもの)と呼ばれる技法で組み上げられています。
この技法も、飯山仏壇独特のもので、肘木を抜けば簡単に宮殿が分解できるようになっています。
なぜ分解しやすくしているのかというと、経年劣化による傷みや色褪せてしまった部分を修繕しやすくするため。
細部まで取り外すことができる仕様になっているので、傷や汚れ、虫食いなどをしっかり修繕することができ、代々引き継いでいけるようになっているのです。
また、金具の部分にも、独特の技法が使われています。それは、梅酢を使った鍍金法(ときんほう)で、銅や真鍮板の耐食性を出しているということ。
傷がつかないように糊付け加工しているため、数十年後経過しても、再び梅酢で鍍金すれば再使用が可能です。
このように、飯山仏壇は、「長年大切に使い続けてほしい」「宮殿をしっかり見て参拝してほしい」という職人たちの優しい思いから生まれた、飯山を代表する伝統工芸品です。
飯山仏壇の現代での使われ方とお手入れ方法
どんなに大切に扱っていても、長年使用していれば扉のガタつきや、装飾の剝がれ、黒ずみなどが出てきてしまいます。
その際に必要となってくるのが仏壇の「お洗濯/おせんたく」。
仏壇を一度分解し、部品の洗浄、漆や金箔の再塗装などを行っていく作業です。
飯山仏壇の場合は、大体50~100年を目安にお洗濯して、きれいな状態に戻します。
飯山仏壇はすべての部品を外せる仕様になっているため、外からでは見えない裏側部分まで完全修復され、より長く、良好な状態で使い続けられるようになっているのです。
しかし、近年は、マンションなど仏間のない住宅が増えていることも相まって、従来の大型で豪華絢爛なタイプの仏壇需要は低迷期を迎えています。
そこで、これまで伝統的な仏壇作りにこだわってきた飯山仏壇事業行動組合は、今の住宅事情の変化に合わせた「新スタイル仏壇」開発プロジェクト事業を立ち上げました。
仏間ではなく、リビングに置けるタイプや、ベッド脇に置けるような小型のタイプの仏壇を考案するなど、。
伝統技法を取り入れつつも、現代のニーズに合わせた仏壇の生産に積極的に取り組んでいます。
そのほかにも、スマートフォン用の台を付けた製品や、小物商品の開発を模索するなど、新たな市場の開拓にも力を入れています。
ちなみに、小型仏壇を作ることは、大型仏壇を作るよりも緻密な作業が発生します。
なぜなら、従来品よりも仏壇のサイズが小さくなるということは、使用する部品も小さくしなくてはいけないためです。
すべての部品を手作りで生産している飯山仏壇。
木地作り、漆塗りなど、大型仏壇と変わらない精度を維持したまま、より緻密に組み立てられ装飾されている小型仏壇は、まさに職人たちの技術力の結晶です。
飯山仏壇の見学・体験ができる場所
飯山市伝統産業会館
所在地 | 長野県飯山市大字飯山1436-1 |
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電話番号 | 0269-62-4026 |
定休日 | 月曜(祝日の場合は翌日休)。12月29日~1月3日 |
営業時間 | 9:00~17:00 |
HP | http://www.avis.ne.jp/~butsudan/spot/museum.html |
備考 | 飯山仏壇、内山紙などの工芸品を展示している。1階のミュージアムショップでは工芸品の販売も行っている。高校生以上300円(200円)小中学生200円(100円)( )内は20名以上の団体料金。※特別展の場合別料金 |
木彫刻工房おけや
所在地 | 長野県下高井郡木島平上木島1449-1 |
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電話番号 | 0269-82-2448 |
定休日 | 記載なし |
営業時間 | 記載なし |
HP | https://kobo-okeya.com/ |
備考 | 飯山仏壇飾り彫りの伝統工芸士が運営している工房。完全予約制で木彫刻の体験ができる。(料金:3,000円~) |