出雲石灯ろうとは
出雲石灯ろうとは、島根県で作られている灯ろうを指します。灯ろうといえば紙や石、竹などで作られた明かりを灯すための道具を想像しますが、出雲石灯ろうはその中でも石で作られた灯ろうです。家の中を照らすのではなく、庭などに置いて使います。
材料に使われている来待石(きまちいし)は苔が付きやすく、日本庭園によく馴染みます。石灯ろうを作っている地域はたくさんあるものの、来待石のような珍しい石を使っている工芸品は数少ないでしょう。出雲石灯ろうはベースとなる型を作ってからパーツを組み合わせ、彫刻を施して仕上げます。サイズやデザインもさまざまで、作品によって雰囲気に違いがあるのも特徴です。日本の伝統工芸品らしい気品あふれる美しさを感じられるのも大きなポイントで、石と苔の絶妙なコントラストが楽しめます。奈良時代から愛される出雲石灯ろう
出雲石灯ろうが最初に作られるようになったのは、奈良時代とされています。奈良時代や平安時代には現在のような来待石を使った石灯ろうではなく、地上に降ってきた火山灰が固まることで作られた砂石やみかげ石などが使われていました。
さらに時代が進んで江戸時代になると、現在のような来待石を使った石灯ろうが作られるようになります。江戸時代以降に作られた石灯ろうは、耐久性が高いのが特徴です。当時作られた作品が、現在でも残されています。【松江藩に認められた出雲石灯ろう】
出雲石灯ろうは江戸時代に松江藩に認められ、「御止石(おとめいし)」に指定されました。御止石は藩主の許可なく販売・持ち出しができないものを指し、ほかの人の手に渡したくないほど品質の高い石灯ろうだったことが伺えます。
【1976年に石工品で初となる伝統的工芸品に指定】
江戸時代から製造が盛んになった出雲石灯ろうは、石工品で初めて国の伝統的工芸品に指定されました。伝統的工芸品に指定されたあとも勢いは衰えず、現在でも多くの作品が生み出されています。
材料の来待石が出雲石灯ろうの美しさを生む
出雲石灯ろう最大の特徴は、来待石と呼ばれる石を使っていることです。来待石は約1400万年前、島根県がまだ海だったころに火山灰が海水で洗われて蓄積したもの。粒子が非常に細かく、自然によく馴染む色合いや風合いが特徴です。
来待石を使って作られた石灯ろうは苔が付きやすく、短期間で庭園にしっかりと馴染んでくれます。新しくキレイな状態ももちろん美しいですが、時間の経過とともに苔や汚れが付いて美しさを増していくのも特徴のひとつです。【400年以上前使える耐久性】
来待石は耐久性が高いのも特徴で、400年以上前に作られたとされる作品が現在も残されています。古くから愛される出雲石灯ろうは、数百年経った今でも変わらぬクオリティの高さを誇っているのです。
また、耐寒性や耐熱性も高く、経年による風合いの変化を楽しみながら長期間飾れます。【苔が付きやすいように加工】
出雲石灯ろうは来待石で作られているため、もともと苔が付きやすいのが特徴です。しかし、仕上げの段階で表面にサメ肌や粒状の模様を付けることで、より苔が付きやすいように加工しています。
ツツキと呼ばれる先の尖った道具を使い、表面に傷を付けるようにして凹凸を作ります。表面が滑らかだと苔などが付きにくいですが、凹凸を付けることで苔がしっかりと吸着するようになるのです。【複数種類の形がある】
出雲石灯ろうの種類は、大きく2つに分けられます。1つは「立ち灯ろう」と呼ばれるもので、大きめで存在感があります。代表的なのが春日灯ろうで、日本庭園でよく見かける縦長の形をしています。
もう1つが座り灯ろうで、背が低くて可愛らしい見た目が特徴です。雪見灯ろうや層塔などがあり、比較的サイズが小さいので家庭用としても重宝されています。現代での使われ方とお手入れ方法
出雲石灯ろうは現在でも伝統技法を受け継ぎながら、多くの作品を生み出している伝統工芸品です。昔ながらの伝統的な技術を継承するのはもちろん、新しい加工法や技術も取り入れながら日々成長しています。
出雲石灯ろうは限られた石工にしか作れない作品のため、熟練の技術を持つ数人の職人のみが現在も作品を作っています。地元である島根県をはじめ、全国各地の寺院や日本庭園で愛される伝統工芸品です。石灯ろうと聞くと日本庭園などで使うイメージが強いですが、実は家庭用の商品も多く作られています。可愛らしい猫足や小さめサイズの石灯ろうもあるので、和風の家に住んでいる方はぜひ取り入れてみてください。また、出雲石灯ろうを購入するとなると、気になるのがお手入れの方法です。基本的に石灯ろうはお手入れをする必要はなく、自然に苔などが付着していく様子を楽しみます。激しい汚れなどが気になるときは、軽く拭くか水などで優しく洗いましょう。石は意外と繊細なので、洗剤などの使用はおすすめしません。石材が劣化し、変色や傷の原因となってしまうので注意しましょう。出雲石灯ろうの見学・体験ができる場所
来待ストーンミュージアム
所在地 | 島根県松江市宍道町東来待1574-1 |
---|---|
電話番号 | 0852-66-9050 |
定休日 | 毎週火曜日(火曜祝日の場合は翌日) |
営業時間 | 9:00~17:00 |
HP | https://www.kimachistone.com/ |
備考 | 来待石の歴史や文化の博物館見学、彫刻体験など |
株式会社勝部石材店
所在地 | 松江市宍道町東来待1-3 |
---|---|
電話番号 | 0852-66-0200 |
定休日 | 不定休 |
営業時間 | 9:00~17:00 |
HP | http://www.katsubesekizai.jp/ |
備考 | 出雲石灯ろうの見学、購入など |