川辺仏壇とは
川辺仏壇(かわなべぶつだん)とは、鹿児島県南九州市川辺町付近で作られている仏壇のことで、国の伝統的工芸品に指定されています。
川辺町は、日本有数の仏壇産地です。川辺町がある南薩地域は、川辺仏壇の材料にも使われている、マツやヒノキなどの森林が面積の約6割を占めています。
川辺仏壇は1597年の浄土真宗の禁制によって誕生します。浄土真宗が禁制された時代でも、人々はガマ(洞窟)の中でひっそりと念仏を唱え続けました。その影響から、狭い場所でも念仏を唱えられるように仏壇は小さくなり、さらに見かけにはわからない隠し仏壇が作られました。この背景によって誕生した技術が、川辺仏壇のガマ型と呼ばれ、今でも根強く残っています。
信教の自由が認められると、仏壇の制作が盛んになり、川辺仏壇の技術はますます進歩します。1975年には伝統工芸品に指定。現在では、仏壇としてはもちろん、建物や新幹線の内装にも川辺仏壇の技術が受け継がれています。
禁制から発展した川辺仏壇の歴史
川辺町周辺は昔から仏教信仰の強い地域です。鹿児島県内には仏壇に関するものとして、1336年に作られた黒塗りの位牌があり、古くから仏教信仰が強かったことがわかります。
清水川ほとりの崖には「清水摩崖仏軍(きよみずまがいぶつぐん)」と呼ばれる史跡があり、仏像や梵字(ぼんじ)の彫刻が約500mに渡り残されています。
仏教の繁栄は、鎌倉時代初期。鹿児島県南部で勢力のあった河辺氏と壇之浦の戦いで敗れた平家の残党が、川辺町清水の渓谷を中心に仏教にいそしんだことが始まりです。1200年には、河辺氏の菩提寺(ぼだいじ)が建てられ、ますます仏教が盛んになりました。
ところが、1597年に加賀一向一揆や石山合戦の影響で、薩摩藩の大名たちが浄土真宗を恐れ、禁制します。禁制により多くの仏像と仏壇が失われました。
浄土真宗の禁制は約300年続きましたが、禁制中でも洞窟に隠れて、あらゆる手段で信仰を強めていきました。隠れ念仏が強まる中で、見かけはタンス、扉を開くと金色に輝く内装がほどこされた小型の仏壇が作られ、現代まで根強く残っています。
1876年に信教が解禁されたことで、大々的な仏壇の制作が始まります。信教が解禁された後でも、隠れ念仏を継続していた地域があるほど、隠れ念仏は根強く残りました。
仏壇の制作が盛んになるにつれて、ほかの産業との交流がおこなわれたことで技術が発展。もともと一向宗が盛んだったため、仏壇も浄土真宗の金仏壇が中心となり広まっていきました。
1975年に伝統的工芸品として指定、2007年には地域ブランドの保護と活性化を目的とした、特許庁の地域団体商標に登録されました。
「ガマ戸」と呼ばれる独特な作りの川辺仏壇の特徴
川辺仏壇は、スギやマツなどの木地を材料とし、木地の彫刻、天然黒塗りの後、純金箔や純金粉を使用して作られます。美しい彫刻がほどこされた小型の仏壇です。
「ガマ戸」と呼ばれる独特な作りになっていて、見かけはタンス、扉を開くと金箔の内装がほどこされているのが特徴。国産の仏壇としては価格も手ごろです。
川辺仏壇は、「木地」「宮殿(くうでん)」「彫刻」「金具」「蒔絵」「塗り」「金箔押し」「仕上げ」の8工程を、完全分業で製造しています。それぞれの工程を、職人が伝統の技を駆使して川辺仏壇を作り上げます。
技法は、「木地はスギ、マツなどを使用し、構造はほぞ組みかぞうきんすりによる組立式」「宮殿は本組技法」「塗装は精製漆を手塗り」「金箔押しをする」「金具は銅か銅合金」「漆は天然漆」となっています。
川辺仏壇の現代での使われ方とお手入れ方法
川辺仏壇は、全体に黒塗りがほどこされ、内側には金箔が貼ってある仏壇です。サイズやデザイン、予算に合わせて自分にあった仏壇を選ぶことが大切です。
川辺仏壇は木工品なので、直射日光や冷暖房の風を避けた、水平な場所に置きます。金箔部分や漆塗り部分には手を触れないように、汚れたら毛バタキではらったり、布で拭いたりして手入れをします。汚れがひどい場合は、専門の業者に清掃依頼をするとよいでしょう。
現代では仏壇だけでなく、九州新幹線車両「つばめ」のインテリアとして、川辺仏壇の木彫り・蒔絵・彫刻などの技術が活かされています。ほかの車両とは一味違う、独特なデザインが注目を集めました。
また、川辺町清水にある清水岩屋公園には、川辺仏壇の技術を活かして作られた銀閣寺を模したカフェ「サクラノヤカタ」があり、人気スポットとなっています。
仏壇としてはもちろん、内装や建物にも川辺仏壇の技術が活かされており、より身近なものへと発展していきました。
川辺仏壇の見学・体験ができる場所
体験型施設「川辺仏壇工芸会館」
所在地 | 鹿児島県南九州市川辺町平山6140-4 |
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電話番号 | 099-56-0240 |
定休日 | 土・日・祝日(体験は要相談) |
営業時間 | 9:00~17:00 |
HP | https://www.kawanabe-butudan.or.jp/experience/ |
備考 | 川辺仏壇の技術を見学・体験ができます。 |
お仏壇の瑞光堂
所在地 | 鹿児島県南九州市川辺町平山6842番地 |
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電話番号 | 0993-56-1107 |
定休日 | 不定休 |
営業時間 | 平日 8:30~18:00 土曜日 9:00~17:00 日曜祭日 9:00~16:00 |
HP | https://www.zuikoudou.com/ |
備考 | お仏壇のほか、仏具、線香、数珠などが多数そろっています。 |