紀州へら竿 とは
紀州へら竿(きしゅうへらざお)とは、へらぶなを釣る目的で作られている釣竿です。主に和歌山県橋本市や伊都郡九度山町で生産されています。
紀州へら竿のもととなる技術は明治時代に大阪市で誕生、その後和歌山県橋本市に技術が伝えられました。
へらぶなは日本各地の河川や池、湖に生息しており、難易度が高いとして釣り人のなかでも愛好者の多い魚です。
釣り人たちは、へらぶな釣りを楽しむために餌や浮きに工夫を凝らし、ついに「紀州へら竿」を完成させました。
材料に使うのは天然の竹。10月から12月に切り出した高野竹(スズ竹)・真竹(まだけ)・矢竹(やたけ)などを乾燥させ、そのなかから厳選して使います。
この切り出しの作業から仕上げまでは、1人の職人(竿師)によって手作業でおこなわれています。そのため1本の竿が完成するまでに半年から1年かかることも。
そんな紀州へら竿の特徴は簡単には折れない強さと美しい装飾です。握りやすいグリップも多くの釣り人たちから愛され、2013年には経済産業大臣指定の伝統的工芸品になりました。
代々受け継がれる紀州へら竿の歴史
紀州へら竿の始まりは大阪。明治時代の1882年、初代「竿正(さおしょう)」の溝口象二が真竹を裂いて削る「削り穂(けずりほ)」を考案、大阪でへら竿を作り始めました。
当時はへら釣りだけでなく、チヌ釣りにも使われていたようです。そのうち釣れる時期の限られるチヌよりも年中釣れるへらぶなのための竿として「へら竿」という名前が定着しました。
その技術は継承され、溝口象二の息子であり弟子の二代目「竿正」溝口昇之助が「削り穂」を穂先に使うことを発案。そして原材料に高野竹(スズ竹)を使い始めたのが溝口昇之助の弟子・「竿五郎」椿井五郎です。
「竿五郎」から教えを受けた竿銘「師光」児島光雄・竿銘「源竿師」山田岩義が橋本市へ戻り、本格的な紀州へら竿の技術が橋本市に根付いたとされています。
紀州へら竿は多くの系統に分かれており、各竿を区別するために竿銘(作家や作品の名前)がつけられています。それらの技術は師匠から弟子へ、代々大切に受け継がれています。
紀州へら竿は2013年に経済産業大臣によって国の伝統的工芸品に指定され、2020年度全国伝統的工芸品公募展では「日本伝統工芸士会会長賞」を受賞しました。
紀州へら竿には芸術的な側面も
紀州へら竿の特徴は、真竹・高野竹・矢竹を組み合わせていることや、持ち手に装飾が施されていることです。
基本的に真竹は穂先(竿先)、高野竹は穂持ち(二番目)、矢竹は三番・元に使われます。長さやしなり具合によって使う竹を選定していきます。この選定作業を「生地組み」といいます。
「生地組み」の後におこなわれるのが、紀州へら竿の製造工程のなかでも最も重要とされている、竹を炭火であぶっていく「火入れ」の作業です。これをすることで竹の反発力を高めることができます。
装飾が施される持ち手は竿師それぞれの特徴があらわれる部分です。漆と蒔絵粉で装飾する「蒔絵(まきえ)」や貝殻の内側や真珠層の素材を漆地にはめ込む「螺細(らでん)」など、伝統的な装飾技術を駆使して、個性ある竿にしていきます。
このようにして作られる紀州へら竿は、竿師ひとりひとりの思いがこもった伝統工芸品です。カーボンやグラスファイバー製では味わえない、手作りの竿ならではの“釣り味”が楽しめます。
紀州へら竿の現代での使われ方とお手入れ方法
紀州へら竿はへらぶな釣り専用の釣り竿です。伝統的で実用性もある紀州へら竿は、ベテラン釣り師のあいだでも憧れの的になっています。
そんな紀州へら竿の原材料は天然素材の竹。作るのにもたいへんな時間と労力がかかります。しかしそれを乗り越えてできあがった竿は、へらぶな釣りには最高の道具です。きちんと手入れをすれば50年は持つとされています。
紀州へら竿のお手入れの基本はきちんと乾燥させること。釣りで使用した後は水気をよく拭き取るようにしましょう。乾燥させるときは直射日光を避け、風通しの良い日陰に置きます。
保管の際は、通気性の良い常温の部屋に置いておきます。
こうすることで、貴重な紀州へら竿を長く楽しむことができるでしょう。
紀州へら竿 の見学・体験ができる場所
紀州へら竿 匠工房
所在地 | 和歌山県橋本市清水558-4 南海電鉄高野線紀伊清水駅内 |
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電話番号 | 受付専用ダイヤル080-2420-8983 |
定休日 | 金曜日 |
営業時間 | 火・水・木・土/ 8:00〜16:30 |
HP | https://sites.google.com/koya36.com/takumikobo/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0 |
備考 |
【工房見学】 【体験プログラム(要予約)】 |
紀州へら竿 和人
所在地 | 和歌山県橋本市隅田町河瀬401-2 |
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電話番号 | 0736-39-2246(9:00~17:00) |
定休日 | - |
営業時間 | 「はじめてのへらぶな釣り教室」(要予約) |
HP | http://www.kazuhito.jp/index.html |
備考 | 紀州へら竿の伝統的工芸士・田中和仁(和人)氏のホームページです。へらぶな釣り教室や釣りや紀州へら竿を身近に感じられるYouTubeをおこなっています。 |