甲州水晶貴石細工とは
甲州水晶貴石細工は、その名の通り水晶を使って作られる工芸品です。山梨県の甲州地方を中心に作られている工芸品で、自然界で採れる素材を使って作られています。自然由来の素材を使って作るため、どの作品も違った美しさが楽しめます。
透明感のある美しい輝きと、熟練の技術で作られた繊細な彫刻が上手く調和した気品あふれる雰囲気が魅力的。水晶の原石は物によって質感が異なるため、キレイに削るのにはかなりの集中力と高い技術が必要です。甲州水晶貴石細工は数ある伝統工芸品の中でも難易度が高く、限られた職人にしか作ることができません。日本国内だけでなく海外に輸出している商品もあるほど、人気の高い工芸品です。さらには、皇室に干支の動物を模した作品を献上するなど、さまざまなシーンで活躍しています。甲州水晶貴石細工の起源は約1000年前
山梨県で甲州貴石細工が作られるようになったのは、今から約1000年ほど前です。当時、御岳昇仙峡(みたけしょうせんきょう)の奥地で水晶の原石が発見され、それを使って工芸品を作り始めたのが起源だとされています。
原石が発見された当時は加工の技術はなく、そのままの状態で飾られていました。時代が進んで江戸時代に入ると、京都から職人を呼んだことで技術が発展。鉄板の上に金剛砂(こんごうしゃ)をまき、水晶を磨いて加工する方法を編み出したのが、水晶を使った工芸品の始まりでした。【明治時代から大正時代にかけて大きく発展】
江戸時代に水晶が加工されるようになると、そこから徐々に技術が発展。明治時代には足踏み回転式の水晶加工技術が生み出され、スピーディーかつ丁寧な加工が施されるようになっていきます。
さらに時代が進んで大正時代になると、手動加工から電力加工へと進化してより効率よく作業が進められるようになりました。この頃には、多くの水晶貴石細工を作っていた記録が残されています。【パリ万博にも出展】
甲州水晶細工は第一回パリ万博に出展され、国内だけでなく世界中の注目を集めるようになりました。水晶を彫刻する技術は珍しく、海外から非常に好評だったとされています。
【1976年6月2日に伝統的工芸品に指定】
昭和中期ごろまでは海外への輸出商品を多く作っていましたが、それ以降は国内向けの商品が多く作られています。1976年には、経済産業省指定の伝統工芸品に指定されました。芸術性の高い作品たちは、現在でも各地から注目されています。
原石の材質によって仕上がりが異なる甲州水晶貴石細工
甲州水晶貴石細工は、天然の原石を使って作られているのが最大の特徴です。自然の素材は採れる場所などによって材質に微妙な差があり、どの作品も違った雰囲気に仕上がります。
それぞれの原石の特徴や質感を見極め、思い描いた形に削るのには熟練の技術が必要です。最初はおおまかな形を描き、粗く削っていきます。そこから少しずつ細かな彫刻を施し、最後に磨き上げて完成。美しく磨き上げられた水晶は透き通るような美しさで、いつまででも眺めていられます。【硬度の高い水晶を使用】
水晶はガラスよりも硬度が高く、キレイに削るのは非常に難しいといわれています。硬い水晶とはいえ、少しのミスで割れたり欠けたりしてしまうので、仕上げの段階に入るまで気が抜けません。
少しずつ表面を削りながら形を作り、完成に近づけていきます。【繊細な5つの技術が光る工芸品】
甲州水晶貴石細工には、透かし彫り・浮出し彫り・深肉彫り・線彫り・平押し彫りの5つの技術があります。それぞれの技術を駆使することで、美しく繊細な彫刻が完成するのです。
透かし彫りは文様などを水晶に彫り込む技法で、細かな作業が必要になります。浮出し彫りは透かし彫りとは逆で、文様が表面に浮き出て見えるのが特徴です。深肉彫りは深く彫ることで立体感を生み出し、線彫りや平押し彫りはシンプルで美しい仕上がりになります。どの技術もとても繊細なもので、特に水晶の場合はキレイに仕上げるのが難しいとされています。これらの技法を組み合わせ、甲州水晶貴石細工ができあがるのです。現代での使われ方とお手入れ方法
甲州水晶貴石細工は、現在でもさまざまな商品が作られています。伝統的な文様が描かれたものはもちろん、干支を模したものや現代の雰囲気に合わせたものが多く販売されるようになりました。
可愛らしい動物をモチーフにした工芸品も多く、若い世代の方からも人気が高まっています。水晶と聞くとかなり高価なイメージがありますが、小ぶりなものやシンプルなものであれば比較的手に入れやすいでしょう。水晶は丈夫で壊れにくいものですが、お手入れの際は傷を付けたり割ったりしないよう注意してください。埃などが気になるときはキレイな布で乾拭きするか、濡れ拭きしたあとに乾拭きをして仕上げるのがおすすめです。繊細な彫刻が施されている甲州水晶貴石細工であれば、綿棒などを活用してお手入れをしても良いでしょう。せっかくの工芸品も汚れてしまっては美しさが半減してしまうので、しっかりお手入れしながら楽しんでみてください。甲州水晶貴石細工の見学・体験ができる場所
山梨ジュエリーミュージアム
所在地 | 山梨県甲府市丸の内1-6-1 山梨県防災新館1階やまなしプラザ内 |
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電話番号 | 055-223-1570 |
定休日 | 火曜日(祝日の場合はその翌日)・年末年始 |
営業時間 | 10:00~17:30(最終入館 17:00) |
HP | https://www.pref.yamanashi.jp/yjm/ |
備考 | 加工体験、見学、購入など |
有限会社土屋華章製作所
所在地 | 山梨県甲府市湯村1-13-11 |
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電話番号 | 055-252-3485 |
定休日 | 日曜祝日 |
営業時間 | 9:30~17:00 |
HP | https://www.tsuchiyakasho.jp/ |
備考 | 作品の購入 |