京友禅とは
京友禅(きょうゆうぜん)とは、京都の工芸品である染織物です。「友禅染」とも呼ばれます。その伝統的な製法を長年守り続けてきたことにより、1976年に経済産業大臣より、伝統的工芸品の指定を受けています。
京友禅の歴史と宮崎友禅
京友禅の染色技法自体は1000年以上前から伝わっていましたが、模様が完成し、京友禅となったのは江戸時代のことです。
京友禅を作った宮崎友禅(みやざきゆうぜん)は、もともとは京都の扇絵師であり、扇に洒落た絵を描くことを生業としていました。
その絵が巷で評判となり、扇だけでなく着物にも友禅の絵を取り入れた模様染めをしたことが始まりだといわれています。
明治時代には化学染料が京友禅に取り入れられ、友禅が手描きで行っていた描きを、型紙におこして行うようになりました。
近年では、京友禅の新作が出展される「京友禅競技大会」という大会が京都で行われ、多くの人が訪れています。今や京友禅は老若男女を問わず、多くの人々の目に留まる伝統的工芸品となっているのです。
2種類の作り方を持つ京友禅の特徴
京友禅の魅力は、鮮やかな刺繍や金箔によって作られる多彩な模様にあります。絹を原材料として作られる京友禅は分業制で製造が行われ、一つ一つの作業工程が専門家の手によってなされています。
京友禅の作り方は2種類あり、それぞれ「手描き友禅」と「型友禅」と呼ばれています。ここでは、2種類の作り方をそれぞれご紹介していきましょう。
まず、手描き友禅は、模様の一つ一つにハケや筆で色を付けていくのが特徴です。最初に、下絵作家が友禅模様を基調とした模様やサイズを考案し、着物と同じ寸法の図案を描きます。
次に、仮縫いをした反物に、青花を用いて下絵を描きます。その下絵の上に行うのが、糸目糊という、もち米と米糠(ぬか)の粉に食塩と少量の石灰などを加えて煮た糊を使い、模様の輪郭を描いていく「糸目置」という工程。
糸目置をすることで、布を染めた時に染料が模様の外に出ていくことを防ぎ、京友禅特有の日本画のような染め方ができるのです。
糸目置をしたら、染料を定着させてにじみを防ぐために豆汁(ごじゅう)を塗る「地入れ」を行います。次に行うのは、筆またはハケで染料を挿していく「挿し」の工程。この「挿し」ですが、職人が思ったような色を出せるようには何年もかかるといわれている、熟練の技術が光る工程です。
色を挿し終わったら、染料を生地に定着させるため、高温の蒸し箱で約1時間蒸します。そのあと行うのは、伏せ糊と呼ばれる糊を使って模様の外側に色が外に漏れ出さないようにする「堰出し糊置」の工程。
堰出し糊置を行ったら、大きなハケを使い、地色を染めていきます。布をムラなく染めるには、かなりの経験と技術が要求されるのです。
再度蒸し箱で蒸したら、不要になった糊と余分な染料を水で洗い落とします。キレイになった布を、お湯でのして、シワを取っていきます。最後に金箔や刺繍で装飾を施したら、手描き友禅による京友禅は完成です。
型友禅の場合、手描き友禅では手描きで行っていた工程を、型紙を使って行います。型紙は、柿渋を用いて手漉和紙をはりあわせた地紙に、友禅模様を彫刻したものを使用します。
一点物となる手描き友禅と違い、同じ模様の布を何枚も染めることができ、大量生産に向いている方法です。
まず、手描き友禅と同様に下絵作家が図案を描き、型紙を作っていきます。色の数だけ型紙の枚数が必要になるため、色の数や模様の複雑さによっては、100枚以上の型紙を使う場合もあるのです。
次に、作業台の上に生地を糊で貼り付けます。柄がズレないよう、一枚板の作業台にまっすぐに貼る必要があるため、慎重さが要求される作業です。
次は、さきほど作成した型紙を生地の上に置き、染色していく「型置き」の工程。型友禅における染色は、ハケに付けた染料を摺り込んで染める「摺り染」と、もち米糊に染料を混ぜた「色糊」をヘラでしごく「しごき染」の2種類があります。
色を塗った後は「糊伏せ」という、型で染色を施したところに、糊を置いていく工程です。この糊は、手描き友禅の場合と同様、染料が必要な箇所以外に染みないようにする役割を担っています。
次は、糊伏せがされていない部分にハケで地色を染めていく「引き染め」の工程。均等に色を塗っていく技法だけでなく、ぼかしを入れて美しい色のグラデーションを出す技法もあります。
染色が終わったら、高温で蒸して染料を定着させ、糊や余分な染料を水で落とします。仕上げに刺繍や金箔を施し、全体を整えたら型友禅による京友禅は完成です。
手描き友禅と型友禅の使い方は用途によって使い分けられます。一点物を作成したい時は手描き友禅、同じ柄の布を大量生産したい時は型友禅。
しかし、どちらの作り方にも共通しているのが、多くの職人の手によって、長い時間と多くの手作業の工程を経て作り出されることです。この丁寧な手作業こそが、京友禅を一切妥協のない、美しい工芸品たらしめているのです。
京友禅の現代での使われ方とお手入れ方法
京友禅はおもに振袖など、着物に利用されることが多い工芸品です。京友禅の豪華絢爛な装飾は、晴れの日などの特別なシーンで活躍してくれることでしょう。
近年では京友禅を使ったアロハシャツなど、京友禅をより気軽に身にまとえるような衣服も作られています。また、手ぬぐいや巾着、スマートフォンのカバーにまで、京友禅は雑貨としても幅広く利用されています。
これらの京友禅を長く愛用するためには、適切なお手入れが必要となるのです。特に、着物は長く使うものなので大切に扱う必要があります。
まず、京友禅の着物を着た後はすぐに陰干ししましょう。陰干しすることで湿気を取ることができ、しまった後の虫食いを防ぐことができます。
また、京友禅の着物をしまうときには桐タンスを使いましょう。桐には防湿、防虫効果があるため、桐タンスにしまうことでシミや変色、虫喰いを防ぐことができます。
桐タンスにしまった後も、年に3度ほど虫干しすることで、湿気による変質の防止に繋がります。このようなお手入れを続けることで、京友禅を末永く愛用していただくことが可能です。
京友禅の見学・体験ができる場所
京都伝統産業ミュージアム
所在地 | 京都府京都市左京区岡崎成勝寺町9-1 京都市勧業館「みやこめっせ」地下1階 |
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電話番号 | 075-762-2670 |
定休日 | 年末年始 |
営業時間 | 9:00~17:00(入館は16:30まで) |
HP | https://kmtc.jp/ |
備考 | 京友禅の見学ができます。 |
京友禅体験工房 古代友禅株式会社
所在地 | 京都市下京区高辻通猪熊西入る十文字町668番地 |
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電話番号 | 075-823-0500 |
定休日 | 不定休 |
営業時間 | 9:00~17:00 |
HP | http://www.kodaiyuzen.co.jp/index.html |
備考 | 【体験メニュー】ハンカチ:1,280円 扇子:2,530円 巾着:2,200円 タンブラー:2,200円 風呂敷:2,200円(大)、1,630円(小) Tシャツ:2,200円 子供Tシャツ:1,800円 うちわ:2,200円 カジュアルバッグ1,780円(大)、1,530円(小) ※すべて税込み価格 |