京仏具とは
京仏具とは、京都府で作られる仏具や仏壇のことです。京都市、宇治市、亀山市などで生産されており、伝統的な技術を受け継いだ職人が、手作りで高品質な製品を生み出しています。
寺院用と家庭用の2種類がある京仏具は、木製仏具、金属仏具、木彫仏など、種類もさまざま。宗派の法式によって、デザインや仕様なども異なります。
仏教伝来から続く京仏具の歴史
仏具の歴史は、西暦500年代の仏教伝来まで遡ります。日本で仏教が広まると、宗派ごとに専用の仏具が作られるようになりました。この出来事が、現在の仏具生産のルーツとなっています。
京都での製作が盛んになったのは、西暦700年代のこと。当時仏教の中心だった京都には、各宗派の総本山が多く集まっていました。そのため、宗派の法式に合わせた仏具作りが活発化。高品質な製品が多数作られるようになり、技術もどんどん発達していったのです。
平安時代中期になると、仏具の製造技術はさらに進化していきます。京都の仏師である定朝(じょうちょう)は、京都七条に「仏所(ぶっしょ)」を作りました。仏師の工房となった仏所には、腕利きの職人が集まるようになり、優れた仏具や彫刻を数多く生産。仏工(ぶっこう)たちが競い合うように腕を磨いた結果、仏具作りの技術は、より成熟していきました。この頃から、京仏具の生産が本格化したとされています。
江戸時代に入ると、寺請(てらうけ)制度の影響を受け、仏壇の需要が増加。キリシタンでないことを認められた人々が檀家となり、多くの家庭で仏壇を置くようになったのです。この出来事により、家庭用仏具の生産が加速。職人の技術が凝縮された質の高い京仏具は、人々の日常により浸透していきます。
その後も多くの製品を生み出し続けた京都は、常に仏具の一大産地でありつづけました。京仏具は宗派によって様式が違うため、大量生産はされていませんが、職人があらゆる技術を詰め込んだ総合芸術として、現在も多くの人から愛されています。
伝統的な工程で作り出される京仏具の特徴
京仏具の特徴は、長い歴史の中で磨かれてきた品質です。多くの人を魅了する優れた製品は、檜(ひのき)や欅(けやき)、松などの材料にもこだわっており、質の良いものだけを厳選。割れや捻じれのない整った木材を選び出し、美しい製品を作り上げていきます。
また、宗派や寺院によって、デザインや仕様などが異なることも特徴。それぞれの様式に合わせ、需要に適した製品を丁寧に作り上げていきます。
装飾の違いが出るのは、木彫刻の工程。宗派が定めた様式に従い、花鳥や動物などの彫刻を施していきます。数十種類の鑿(のみ)や小刀を用いた細かい彫刻には、高度な技術と卓越したセンスが必要であり、熟練の職人が作業を担当。優れた彫刻は、力強い生命力や癒しなどが表現され、高い評価を得ています。
彫刻の手法は、ひとつの木材から彫り出す「一木造り」、複数の木材を用いる「寄木造り」の2種類。部位ごとに作ったパーツを組み上げていく寄木造りは、大型の製品に適した手法です。
漆を使用する京仏具は、表面に鏡のような艶が出ることも特徴。漆を塗った際にできる刷毛目の凹凸を、蝋色(ろいろ)という工程でならしていきます。表面を平らに整えることにより、京表具の美しさをさらに強めているのです。
艶やかな漆の表面には、金粉や銀粉による蒔絵(まきえ)が描かれています。絵の上から漆を塗り、研いで模様を浮き上がらせることが基本的な手法ですが、製品によっては研がないこともあり、それぞれ異なる魅力が人気です。ほかにも、粉を粗くする手法や盛り上げる手法などがあり、多彩な表現が可能。蒔絵の自由度の高さが、京仏具の幅広いデザイン性につながっています。
製品によって異なる特徴を持つ京仏具は、彩色(さいしき)工程の際に出る職人の個性も魅力。彩色には、胡粉(ごふん)の下地に色を重ねる「極彩色」、淡い色で素材をいかす「木地彩色」、金粉押しの上から描いていく「箔彩色」などの手法があります。複数の彩色方法に加え、使い方や構図などに彩色師の独自性が強く出るため、さまざまな楽しみ方ができるのです。
京仏具の現在とお手入れのコツ
京仏具は、現在も寺院用と家庭用が2種類生産されており、全国で高い人気を獲得。美しい装飾や優れたデザイン性は、国内だけでなく海外でも評価が高く、活躍の場が広がっています。
高品質な仏具を長く使い続けるためには、こまめに手入れをすることが大切です。できれば毎日埃を落とし、週に1回は拭き掃除を行うようにしましょう。
木製仏具は、表面の埃を取り除いたあと、柔らかい布で水拭きする方法がおすすめ。最後に乾拭きを行い、余計な水分をなくしておけば、劣化を防ぐことができます。ただし、金箔は剝がれやすいので、力を入れすぎず、慎重に拭くようにしてください。
金属仏具の場合は、全体を丁寧に洗ったあと、水気をしっかりと拭き取っておきましょう。お供え物として入れる食品を、傷まないうちに早めに取り除くことも大切です。
真鍮製、アルミ製の製品であれば、市販の研磨剤を使う方法も効果的。磨いてから柔らかい布で拭けば、美しい見た目を維持できます。ただし、金メッキの製品はメッキが剥がれるので、無理に磨かないようにしましょう。
京仏具の見学・体験ができる場所
京仏具小堀 京仏具資料館
所在地 | 京都府京都市山科区西野山百々町88 |
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電話番号 | 0120-27-9595 |
定休日 | 月・土・祭日・年末年始(12月30日~1月4日) |
営業時間 | 9:00~17:00、見学開始時刻 10:00~、13:00~、15:00~のいずれか |
HP | https://kobori.co.jp/archives/10729 |
備考 | 京仏具の展示、金箔押し体験(1人1回500円) |
京仏具犬塚
所在地 | 京都府京都市下京区東洞院通上数珠屋町332 |
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電話番号 | 075-351-6553 |
定休日 | 日曜日 |
営業時間 | 9:00~19:00 |
HP | http://www.kyobutugu.co.jp/ |
備考 | 京仏具の見学あり |