京仏壇とは
京仏壇は、京都府京都市を中心とした地域で作られている金仏壇です。
京都は平安の時代より千年以上にわたり、都として栄えてきました。その間、仏教も盛んとなり、多くの寺院が立ち並ぶ宗教都市としても繁栄を築きました。
今でも日本の仏教文化の中心であり、それにまつわる伝統工芸も数多く残されています。国内の寺院用仏具は、その大半が京都で作られています。
京仏壇はそういった伝統の粋を集めた総合工芸品です。
現在、京都には各宗派の総本山が100以上、寺院の数は3000以上あるといわれています。仏壇の様式も宗派ごとに異なり、京仏壇の職人はそれぞれの様式にあった、精緻な仏壇を制作しています。
日本で最も長い歴史を持つ京仏壇は、多くの寺院の厳しい要望に耐えうる技術力を保ち続けてきました。その品質の高さで、一般家庭からの需要にもこたえています。
日本の仏壇の発祥地・京都の仏壇作りの歴史
日本に仏教が伝来したのは500年代半ばの飛鳥時代。平城京のあった奈良を中心に、仏教文化は栄えてきました。
794年、平安遷都を行った桓武天皇は、強大化した寺社勢力の影響を絶つため、奈良から寺院の移転を禁じました。京の都が建設された際には、官寺として東寺・西寺が建立されたのみでした。
その後、日本の二大開祖として名高い、最澄、空海が活躍した時代から平安仏教は繁栄していきます。多くの寺院が建立され、それとともに仏具の需要も増していきました。
1000年代のはじめには定朝(じょうちょう)が、仏師の共同組織「仏所」を七条にかまえ、ここから日本の仏具制作は本格化していったといわれています。
さまざまな仏具を作り出すことで高度化した技術は、小さな寺院ともいうべき仏壇の製作にも生かされていきます。しかし、当時の仏壇は、主に寺院、または高位の貴族や武家のためのものでした。
一般の家庭に仏壇が普及していくのは江戸時代以降になります。キリシタンを取り締まるための寺請制度が敷かれ、各家がいずれかの寺院の檀家となることが義務付けられたことで、仏壇の需要が高まりました。それにともない、京仏壇が持つ歴史の長さ、格調の高さはあこがれの対象となり、多くの人々から求められるようになりました。
明治期になると一時的に需要は落ち込みますが、明治半ばから活況を呈し、次第に京都の職人たちは、より高級な仏壇作りに舵を切っていきます。
第二次世界大戦では、日本中の多くの寺院が焼失してしまいました。被災を免れた京都は、各宗派の総本山が集まっていたこともあり、再建を進める全国の末寺、檀家に対して、仏具・仏壇を供給していくこととなります。
現在では、京都は仏壇発祥の地として、高い技術力を誇る全国屈指の産地となり、1976年には経済産業大臣より、国の伝統的工芸品に指定されています。
宗派ごとのニーズにこたえる京仏壇の特徴
京仏壇は、金箔と漆で仕上げられる金仏壇です。箔押、蒔絵、漆塗、金具加工などの美しさが特徴で、それらに優れた職人の技巧が見て取れます。
きらびやかな金箔や精緻な彫刻が特に印象的ですが、全体としては華美に流れず、むしろスッキリとした印象。京文化の奥ゆかしさの表れともいえます。
京都にはさまざまな宗派の総本山があり、仏壇も宗派によって異なります。それぞれの仏壇は、その宗派の総本山の本堂を模して造られているのです。
細かな装飾に関しても違いがあり、たとえば、浄土真宗本願寺派の仏壇の欄間には牡丹が彫られています。宗派ごとの細かなニーズに対応し続けてきたことで、京仏壇の職人の腕は鍛え上げられてきました。
そういった背景もあり、生産を効率化させるため、京仏壇の製作は、徹底した分業化がされています。工程は10部門に分かれ、関わる職種は40以上、部品の数は2000点にも上ります。
生産体制としては、製品の企画、最終組み立て、流通を担う「商部」と、各部を作る「工部」に分かれています。
「工部」は木地、木彫、漆塗、箔押し、蒔絵彩色、飾り金具などの部門に分かれており、そこからさらに工程は細分化されています。
「商部」ができあがった各部のすべてを寸分の狂いなく組み上げるまで、8ヶ月を要します。
ひとつひとつの工程では、さまざまな仏具作りで培われてきた技術が生かされており、それが結集した京仏壇は、まさに総合工芸。
こうして組み上げられた仏壇は、その品質と格調の高さから「京もの」と呼ばれています。工芸品を超えたひとつの芸術品として評価され、国内はもとより、遠く海外へも出荷されているのです。
京仏壇の現代での使われ方とお手入れ方法
京仏壇の多くは高級品で、大半は寺院に納められていますが、もちろん、一般家庭でも購入できます。
宗派ごとに作り分けられているのが京仏壇の特徴ですので、購入の際は、各宗派に則った正式な仏壇を提供している専門店に相談してください。
近年では、京仏壇の高い技術はアクセサリーの制作など、新たなプロダクトデザインに生かされています。そういったもので、職人技の一端に触れてみるのもいいかもしれません。
京仏壇は、高度な技法で製作されており、古いものになると、現在では再現することが難しい貴重なものもあります。古い京仏壇を持っている場合は、新調するより、可能な限り修復し、長く使い続けることをおすすめします。
京都の専門店であれば、本体や扉の木地・漆・金箔・金具・蒔絵、障子の紗など、すべての部分が新品同様に修復可能です。
京仏壇の見学・体験ができる場所
京都伝統産業ミュージアム
所在地 | 京都市左京区岡崎成勝寺町9-1 京都市勧業館みやこめっせ 地下1階 |
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電話番号 | 075-762-2670 |
定休日 | 不定休(ホームページ参照) |
営業時間 | 9:00~17:00(入館は16:30まで) |
HP | https://kmtc.jp/ |
備考 | 京都に息づくさまざまな伝統工芸の世界を分かりやすく紹介。京仏壇の展示のほか、職人実演も行われている(スケジュールはホームページを参照) |
若林佛具製作所 京都本店
所在地 | 京都市下京区七条通新町東入西境町147 |
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電話番号 | 075-371-3131 |
定休日 | 水曜日 |
営業時間 | 9:00~18:00 |
HP | https://www.wakabayashi.co.jp/ |
備考 | 現代的な仏壇から、伝統の京仏壇、最高級仏壇まで幅広く取り揃える。組み立て作業を見学できる施設も併設。 |