京指物とは
京指物(きょうさしもの)とは、京都で作られている木工品です。指物には、京都で発展した京指物以外にも、江戸指物や駿河指物などのさまざまな種類があります。江戸指物はその名のとおり、江戸(現在の東京都)で発展した指物です。また、駿河指物は静岡県で作られている指物で、それぞれ地域の特性が活かされています。
ちなみに指物とは、木を巧妙に成形して組み上げていく工芸品です。余計な材料を使わずに仕上げているため、表面が滑らかで美しい仕上がりになります。
京都は昔から煌びやかな世界観が特徴的で、京指物にもその文化が取り入れられてきました。金釘(かなくぎ)を使わずに木だけで組み上げていく指物はシンプルで素朴な印象になりがちですが、京指物は木の表面に絵を描いたり装飾を付けたりして華やかさを演出しています。
ほかの指物とは少し違い、宮廷など高貴な人々が主に使っていた木工品です。木目の美しさや木のぬくもりはしっかりと残しつつ、京都らしい煌びやかな印象を上手くプラスしているのが京指物の特徴といえるでしょう。
使用しているのは桐材(きりざい)がメインですが、ほかにも欅(けやき)・檜(ひのき)・桜・杉・松などの天然木が使われています。
京指物は宮廷に愛され続けた高級品
京指物の始まりは、平安時代にまでさかのぼります。今から1,000年以上も前の京都が栄えだした頃に、宮廷で儀礼に使う品が作られていました。当時は指物という特定の工芸品はなく、大工の手によって木工品が多く生産されていたようです。
日本国内にはもともと豊富な木材資源があったため、平安時代よりも前から木工品の技術が発達していた説もあります。そこから金属や石などを使った品物が海外から輸入されるようになり、それらの技術や構造を取り入れながら徐々に木工品は成長していきました。
時代が進んでいくと、それまで大工の手で作られていた木工品が「指物師」によって作られるようになります。指物を作る専門職である指物師が浸透し始めると、茶道に使う道具や武士の調度品なども作られるようになりました。
さらに時が流れて江戸時代になると、江戸では江戸指物が発展。その頃には京都でも京指物が発展しており、座敷や書院造、華美な茶道具など多くの作品が生み出されました。
宮廷で使われるものだけでなく、商人用や歌舞伎役者用の調度品も作られるようになり、京都独自の文化や技術が進んでいきます。江戸時代前後には京指物の需要が高まり、幅広い木工品を作っていたようです。
京指物が経済産業省指定の伝統工芸品となったのは、約45年前の1976年。それからも成長し続け、現在でも限られた職人の手によってたくさんの作品が作られています。
煌びやかな装飾と上品さが魅力の京指物
京指物は、上品で気品あふれる京都らしい雰囲気が特徴的。京都といえば美しい景色や建物、情緒漂う寺や神社などを想像しますよね。京指物はそれらのイメージを崩さない、上品なデザインが魅力です。
主に使われている桐材は、木工品の材料としては非常に優秀で、丈夫なだけでなく防虫や防臭の効果も期待できます。ゴマノハグサの木から取れる桐材は日本で最も軽いとされ、さまざまな家具や木工品に使われています。
中に汚れが染み込みにくく、多少の傷であれば復活する「復元性」も持ち合わせているため、木材としてはかなり質が高いものになります。その分価格も高いため、高級品である京指物に多く使われているそうです。
京指物を作る工程において、木の選別や管理は非常に重要です。まずは選定した木を伐採して雨風にさらしたあと、適度なサイズにカットして自然乾燥させるのが最初の工程です。乾燥させたあとはゆがみのある部分を矯正し、木材として使いやすい状態に仕上げます。
下処理が済んだ木材は決められた寸法にカットして成形し、1つ1つ丁寧に組み上げて完成形になったら、漆で模様を描きます。さらにその上から金粉や銀粉などを使って煌びやかに仕上げるのも、京指物の大きな特徴といえるでしょう。
また、表面に彫り込みをして模様を描く手法も多いです。そして最後に取っ手などの装飾品を付けると、京指物の完成です。
時代背景に合わせた作品を生み出す京指物
京指物は昔、貴族や宮廷のために作られてきました。当時は一般人が使用しないような作品ばかりでしたが、現代では時代背景に合わせてさまざまな作品が作られているのが特徴です。たとえばパン食が増えた日本で多く使われる保存ボックスや、プレゼントに使える桐箱など、需要に合った商品展開をしています。
桐材で作られたボックスはカビや湿気などから食材を守ってくれるため、パンやお菓子を保存するのに適しているそうです。利便性に優れているのはもちろん、見た目もオシャレでインテリアとしても活躍してくれるでしょう。
また、木製の名刺入れなど普段使いにおすすめな商品も作られていますよ。昔ながらの手作りの良さや美しさを活かしつつ、現代に合わせた工芸品を作り続ける京指物は素晴らしいですね。
とはいえ、管理が大変そうでなかなか手が出ない方も多いでしょう。実は京指物の管理はそれほど難しくはなく、濡れたり汚れたりしたときには乾拭きすればOK。もともと桐材は汚れが付きにくいため、日々のお手入れをしておけば激しく傷む心配もないでしょう。
京指物の見学・体験ができる場所
京指物資料館
所在地 | 京都府京都市中京区夷川通堺町西入る絹屋町129番地宮崎平安堂ビル2F |
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電話番号 | 075-222-8112 |
定休日 | 毎週水曜日 |
営業時間 | 10:00~17:00 |
HP | http://www.kyoto-t-f-museum.jp/ |
備考 | 資料館や展示品の見学 |
京都伝統産業ミュージアム
所在地 | 京都市左京区岡崎成勝寺町9番地の1京都市勧業館みやこめっせ 地下1階 |
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電話番号 | 075-762-2670 |
定休日 | 不定休 |
営業時間 | 9:00~17:00(入館は16:30まで) |
HP | https://kmtc.jp/ |
備考 | 館内見学、職人による実演の見学 |