京うちわとは
京うちわとは、「都うちわ」とも呼ばれる京都の伝統工芸品。精密に並べられた竹ひごの骨組みと、日本画のような美しい絵柄が特徴的です。
古来から団扇は涼をとるためだけでなく、顔を隠すためや装飾品としても用いられてきました。600年頃に中国から団扇が日本に伝わると、宮廷の女性たちもこれを真似し、団扇を愛用したといわれています。
今日でも団扇は、実用的な用途だけでなく美術工芸品としても人気があります。特に京うちわは観賞用に特化した種類も制作されており、贈り物としても最適です。
京の都ならではの洗練された優美なデザインは、京うちわの最大の魅力といえるでしょう。
宮廷の貴族にも愛された京うちわの歴史
団扇のルーツ
団扇のルーツをたどると、周時代の古代中国まで遡ることになります。詳しい起源はわかっていませんが、2000年以上もの歴史があるといわれています。さらに中国からエジプトへ広まり、アジアを中心に広い地域で用いられるようになりました。
当時は現代の用途とは異なる目的で使用されていた団扇。中国や朝鮮では位の高い女性が顔を隠すために用いられ、東南アジア・西アジアでは邪気や悪霊を追い払う道具として扱われていました。
団扇が日本に伝わったのは古墳時代の末期、600年から700年頃といわれています。この頃使用されていた団扇は現在のものよりも持ち手の部分が長く、木製であることが特徴的です。日本でも祭礼の道具や、宮廷の女性たちが顔を隠すために使用されていました。
その後、団扇はさまざまな形に派生し、鉄や革を使って作られた「軍配団扇(ぐんばいうちわ)」や竹を編んだ「あじろ団扇」などが登場しました。
現在のスタイルの定着と京うちわ
現代の団扇の原型となる、竹ひごの骨組みに紙を貼ったスタイルが定着したのは江戸時代になってからといわれています。この頃になると民衆の間にも広がり、招涼を目的として使用されるようになます。
全国でさまざまな団扇が作られるようになる中、「都うちわ」と呼ばれた京うちわは千年の都・京都で独自の発展を見せました。
もともと宮廷の貴族たちに愛用されていた「御所うちわ」をルーツにもつ京うちわは、厳選された素材を使い、柄には金細工をあしらうなどして優美なデザインが追及されたのです。そのためほかの地域で作られる団扇には見られない、高度な技術が培われていきました。
江戸時代以降、民衆の間に広まってからも京うちわの美しさは衰えず、現代にいたるまで人々を魅了し続けています。
1977年には経済産業大臣指定の伝統的工芸品に指定されました。
最高の造形的工芸品と謳われる京うちわの特徴
京うちわの特徴は、団扇面と別に作られた柄を後から取り付ける「差し柄」と呼ばれる構造です。
この構造が登場したのは江戸時代以降。これは「狩野派」や「土佐派」の絵師によって美しく描画された、宮中の貴族御用達の品「御所うちわ」から派生したといわれています。民衆へ広まったのちも、この差し柄の構造が受け継がれています。
また、団扇面には50本から100本もの竹ひごが骨組みとして使われており、その多さも特徴のひとつ。放射状に整然と並べられた竹ひごは、それだけで造形美を感じさせる美しさです。使われている竹ひごの本数が多いほど高級とされ、最も高級といわれる「100立て」は観賞用の飾り団扇として販売されています。
団扇面の紙と骨組み、そして持ち手、それぞれのパーツを別々に制作してから最後に組み上げる京うちわの作業工程は、原料の制作も含め20種類以上。完成までには1年以上の月日を要します。
京うちわの美しさは、何百年ものあいだ受け継がれた職人の技術と手間暇から作り出されているのです。
京うちわの現代で人気のデザインとお手入れ方法
「両面透かし」と「片面透かし」
洗練されたデザインの京うちわは、現代においても「招涼」「観賞」両方の用途で親しまれています。
見た目の美しさから、団扇面が特徴的な「両面透かし」と「片面透かし」は特に人気のデザインです。
「両面透かし」とは骨組みに切り絵細工を貼り付け、骨組みをあえて露出させたデザインの団扇です。紙の部分が少ないため、風を送ることにはあまり適していません。その分、観賞用に特化した大変美しいデザインが魅力となっています。
繊細で日本画のような風情がある切り絵からのぞく美しい竹の骨組みや、持ち手にまでほどこされる細かな細工の数々は、時間を忘れ見入ってしまう素晴らしさです。
また観賞用の飾り団扇は四季折々のデザインが作られ、一年を通して楽しむことができます。
「片面透かし」は団扇面の片面だけ切り絵になっており、実用性とデザイン性を兼ね備えた人気の種類です。両面透かしに比べると比較的安価で、手に入れやすいところもうれしいポイント。あおいでよし、飾ってよし、贈ってよしの三拍子揃ったデザインです。
こちらも一年を通して制作され、季節に合わせたデザインが楽しめます。
購入後のお手入れ方法
京うちわは天然の素材を使って作られているため、直射日光が当たる場所や高温多湿の場所に長時間置いておくと、反りやひび割れの原因になることもあります。
保管の際は直射日光を避け、風通しの良い場所に置くようにしましょう。
また、ほとんどの京うちわは団扇面に和紙を使用していますので、無理な力を加えると破れてしまうこともありますので注意してください。
京うちわの見学・体験ができる場所
京都伝統産業ミュージアム
所在地 | 京都市左京区岡崎成勝寺町9番地の1京都市勧業館みやこめっせ 地下1階 |
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電話番号 | 075-762-2670 |
定休日 | 不定休(HP営業カレンダー参照) |
営業時間 | 9:00~17:00(入館は16:30まで) |
HP | https://kmtc.jp/ |
備考 | 透かしうちわ制作 3,800円~ |
京うちわ 阿以波
所在地 | 京都市中京区柳馬場通六角下ル |
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電話番号 | 075-221-1460 |
定休日 | 日曜日・祝日(4月~7月は18:00まで無休営業) |
営業時間 | 9:00~18:00 |
HP | https://www.kyo-aiba.jp/ |
備考 | 日常使いに適したものから、贈答用まで12種類以上の京うちわを販売しています。オリジナルうちわのオーダーも可能です。 |