真壁石灯篭とは
真壁石燈籠(まかべいしどうろう)は、茨城県桜川市真壁町周辺が産地の花崗岩(かこうがん)でつくられた石工品です。この地方は古くから有数の石材産地であり、伝統的に石の工芸品がつくられてきました。
真壁町の加波山(かばさん)より採掘されるみかげ石は、白みが強いごま塩風の灰色で、優しい色合いが特徴です。年月を経ても退色せず、より風合いが増して趣のあるわび・さびを演出します。1995年に経済産業大臣より国の伝統的工芸品として指定されました。
日本三大石材産地からうまれた真壁石燈籠の歴史
茨城県真壁町周辺は、古くから良質の花崗岩が採掘されてきた、日本三大石材産地のひとつです。付近の遺跡からは、石斧や石器が数多く出土。古代から道具の素材として石が利用されていたことがわかります。また加波山は山岳信仰の対象として崇拝されており、人々は石に対しても畏敬の念がありました。室町時代末期につくられた五輪塔や古い石碑、仏石なども見つかっています。
真壁石燈籠は1824年のものが最古で、真壁町にある寺院の境内に現存しています。江戸時代には、石燈籠が常夜灯として、地域の城郭や神社仏閣に奉納されていました。そのころ真壁の石工たちは、石材工業の先進地である信州高遠の職人と交流をはかり、だんだんと技術が磨かれていきます。そうして石匠(せきしょう)の一人、久保田吉兵衛(くぼたきちべい)が18種類の技法を確立。その伝統的な技法は、子弟相伝により現在まで継承されています。
明治時代には、硬くて頑丈なことや石目がそろって美しいところが認められて、真壁石は迎賓館赤坂離宮の造成に使用されました。そのことで建築材としても有名になり、皇居の縁石や三越本店にも用いられています。昭和に入ると造園ブームにより、日本庭園に合わせた石燈籠が数多くつくられるようになりました
自然に溶けこむ優美な真壁石燈籠の特徴
真壁石燈籠の特徴は、庭園や周辺との一体感を生みだす、そのたたずまいにあります。年月がたつとコケをまとい、見事に溶けこんでいくのです。それは二つと同じ模様がない天然石、18種の伝統的技法、そして雪見系・立物系など数百にもおよぶ伝統的な形を掛け合わせてできあがります。
真壁石燈籠の作業工程は、石の選択から始まります。地層でできている石には目があり、よく見極めないと割れてしまいます。ここで最適な石を見つけることが重要です。
石燈籠は6つの部位から成り立ちます。宝珠(ほうじゅ)、笠(かさ)、火袋(ひぶくろ)、受(うけ)、竿(さお)、地輪(ちりん)。その部分ごとに定規で寸法をとり、「墨出し」という彫る境目の線を描く作業、のみ・びしゃん・こやすけなどの伝統的工具で手彫りをほどこす作業、そして全体的に仕上げて、最後にすべてを組み立てます。
まずは石燈籠のシンボル、頂上の「宝珠」。石を削って「笠」と組み合わせるためのほぞを切り出します。ほぞとは各部位のつなぎ目につくる凹凸の突起のことです。つぎに宝珠の下の受花(うけばな)を完成させて、全体の細かい部分を整えます。
「笠」は屋根の部分です。おおよその形を大まかに整えて、荒どりから始めます。下面の形を整えたら、傾斜面の仕上げ。そして「宝珠」を受けるほぞと、「火袋」とつなぐためのほぞをつくったら、紋様を刻みます。
燈明をともす「火袋」には、紋様などの彫刻をほどこします。つぎは重要な火口を削る作業。内部を空洞に削ったら、墨出しを目印に火口を抜きます。この作業には高度な技術が求められます。
「火袋」の受皿である「受」は、まず側面や受花を削ってから、「竿」と組み合わせるためのほぞを下面に削ります。そして最後に紋様の彫刻をほどこしていきます。
基礎の部分の「地輪」と上部の「受」をつなぐ、柱の役割の「竿」は、全体の重さを支える大切な部位なので、もっとも上質な石を用います。上下の面を水平に整えてほぞをつくり、つぎに帯や紋様の仕上げ。ふくよかな丸みをおびた柱を表現するには、長年の経験と技術が必要です。
基礎の部分の「地輪」は、およその形を整えて、側面と下面が垂直になるように削ります。この部位には反花(かえりばな)の紋様を入れたら、ほぞをつくり細部を彫って仕上げます。
これらの6つの部分が完成したら、ほぞを組み合わせて積み上げます。ひとつひとつの部位を手彫りでていねいに仕上げていくことで、繊細な石燈籠ができあがるのです。
真壁石燈籠の現代
真壁石燈籠は現代も、伝統的技法により伝承されています。そればかりでなく、数々のイベントに積極的に出展することで、現代的な価値の再発見や親近感につなげる試みもおこなっています。さらに2002年からは、桜川市の夜祭りやひな祭りにおいて、石燈籠を展示して景観を演出したり、筑波大学と「石匠の見世蔵プロジェクト」をすすめたりなど、活発な取り組みもおこなわれています。
真壁石灯篭の見学・体験ができる場所
加藤石材
所在地 | 茨城県桜川市真壁町羽鳥979 |
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電話番号 | 0296-54-1346 |
定休日 | 日曜日 |
営業時間 | 8:00~17:00 |
HP | http://www.tourou.com/ |
備考 | 展示場あり |
大倉産業(株)大倉石材センター
所在地 | 茨城県桜川市真壁町山尾650 |
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電話番号 | 0296-54-1911 |
定休日 | 土・日・祝 |
営業時間 | 8:00~17:00 |
HP | http://okura-sangyo.co.jp/place.html |
備考 | 展示場あり |