都城大弓とは
都城大弓(みやこのじょうだいきゅう)とは、主に宮崎県で作られている竹工品です。原料には真竹と櫨(はぜ)という木材が使われています。
宮崎県都城市周辺は昔から質の良い竹が採れると評判の地域。大弓のほかにも、木刀などの武具も作られていました。
江戸時代初期には都城大弓の技術が確立。現代までそのまま受け継がれており、ほとんどの工程が手作業でおこなわれています。
ちなみに弓には竹で作られた竹弓、ガラス繊維のグラス弓、炭素繊維のカーボン弓があります。日本古来の弓が竹弓で、グラス弓やカーボン弓は時代の変化によって登場してきた現代の弓です。
このなかでも竹弓は天然素材でできているため、特に扱いが大変とされています。しかし、職人の手作業で作られた竹弓・都城大弓は伝統的な風合いがあり、使えば使うほど味が出てくるため、高価でも人気が衰えない弓です。
代々継承されてきた都城大弓の歴史
戦国時代から武器として使われてきた弓。長さが2メートル以上にもおよぶものは大弓と呼ばれました。
古くから竹の名産地であった都城市周辺は弓や木刀などの武具の生産が盛んで、南北朝の時代には都城大弓の技術が伝承されてきたといわれています。
都城市は薩摩藩主にもなった武家「島津家」の発祥の地としても知られており、武道が奨励されていたとの記録も。そのおかげで武具の生産が盛んだったとも考えられます。
当時生産されていた武具のなかでも特に評価が高かった都城大弓。江戸時代初期には技術・製法も確立されたといわれています。
江戸時代後期の書物「庄内地理志」によれば、都城での弓作りのほか、志和池、金田地区でも弓が作られていたとのこと。
明治時代にはいると、鹿児島県川内地区から楠見善治(くすみぜんじ)が高度な技術を持って都城市にやってきます。
彼は都城市の弓作りの技術発展に大いに貢献し、たくさんの弟子を育てていきました。
その後、都城大弓はその質の良さから台湾や朝鮮、満洲などの東南アジアにまで販路を拡大。都城市は弓の一大生産地となります。
戦後の低迷期を経て、現在も国内髄一の竹弓の生産量を誇っている都城大弓。1994年には経済産業大臣による国の伝統的工芸品にも指定されました。
2002年には、当時の皇太子殿下と皇太子妃雅子様が弓製造の見学にお訪ねになったこともあります。
すべてを1人の職人がおこなう都城大弓
都城大弓の最大の特徴は2メートルにもおよぶその長さです。弓が長いほど命中率が上がったり、遠くまで矢を飛ばすことができたりすることから、都城大弓は当時から優れた武器とされてきました。
都城大弓の製造工程は細かくわけると200以上にもなりますが、そのすべての工程は1人の職人・弓師の手作業によっておこなわれています。
材料には生まれてから3〜4年の真竹を使用。そのぐらいの真竹は弾力があって肉厚で、弓にするのにぴったりだからです。真竹のほかにも櫨という木も使います。櫨を使うことで弓をさらに丈夫に仕上げることができます。
その2つの材料でできた弓芯を弓竹で挟み、クサビで締め付けながら半円状に反りを付けて打ち込んでいきます。それが終われば、弓の張り込みをおこないます。弓の形を整えていく作業です。ここで弓の良し悪しが決まっていきます。
10日くらい張り込んだ後に、やすりで削って仕上げをします。握り手の部分に籐巻き(とうまき)をすれば完成です。
各工程に高い技術を要するため、すべてを習得するまでに10年以上かかるともいわれている都城大弓。現在は国の伝統工芸士の資格を持つ4人の弓師によって製造が続けられています。
都城大弓の現代での使われ方とお手入れ方法
武器として使われていた都城大弓は、現在弓道などのスポーツで活躍しています。カーボン弓やグラス弓と比較すると反動が少なく、直線的に飛ばすことができる弓です。
見た目もしなやかで美しく、縁起物として家に飾られることもあります。都城大弓から作られた竹弓のキーホルダーもあり、お土産にも最適です。
そんな都城大弓は竹でできているので、気温や湿度からの影響を受けやすい傾向があります。竹弓の美しさを保つためにも、細やかな手入れを怠らないようにしましょう。
まず注意したい点が裏反り(うらぞり)です。これは弦を外したままにしていると元の形に戻ろうする力のこと。それを防ぐためには常に弦を張っておくことが重要です。
また、保管するときは高温多湿の場所を避けるようにしましょう。もし気になることがあれば、都城大弓を購入したところへ相談してみるのもおすすめです。
都城大弓の見学・体験ができる場所
(有)横山黎明弓製作所
所在地 | 宮崎県都城市妻ケ丘町8-14 |
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電話番号 | 0986-22-4604 |
定休日 | 日、祝日、第2、第4土曜日 |
営業時間 | 8:00~17:00 |
HP | https://www.reimei-yokoyama-1918.com/ |
備考 | 【工房見学(要予約)】 |
株式会社 楠見蔵吉弓製作所
所在地 | 宮崎県都城市早鈴町(木工団地内)2016 |
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電話番号 | 0986-24-5248 |
定休日 | 日、祝日 |
営業時間 | 8:30~17:30 |
HP | https://www.miyakonojyo-yumi-kumiai.com/kurakichi-kusumi |
備考 | 要相談ですが、工房の見学ができます。 |