長岡仏壇とは
長岡仏壇は、新潟県長岡市周辺でつくられている金仏壇です。
材木には、ケヤキ、ヒノキ、ヒメコマツなど、木目が美しく出るものが使用されています。
越後漆器の塗りの技法や、高度な彫刻技法が評価されていて、1980年に国の伝統的工芸品の指定を受けました。
仏壇作りには多くの工程が必要となるため、7つ以上の職種に分業して生産している地域が多いのですが、長岡仏壇は、5つの職種に分業しています。
そのため、長岡仏壇作りの職人たちは1人で複数種類の工程をこなす、高い技術力も持ち合わせています。
宮大工たちの内職から始まった長岡仏壇の歴史
1600年代、長岡藩内には、寺院や社殿を建てるため、全国から宮大工や、仏像をつくる仏師などが集められていました。
しかし、冬になると、雪深い新潟では、一定期間建築作業を進めることができなくなってしまいます。
そこで職人たちは、建築作業ができない期間、内職として仏壇作りを始めました。これが、長岡仏壇の始まりとされています。
冬の期間は雪深く、外に出ることもままならないということもあり、職人たちは家で黙々と仏壇作りの技術力向上と研究に取り組んでいきました。
ちなみに、当時の長岡地域周辺には、仏壇の材料となるケヤキなどの樹木が豊富に自生していて、調達しやすかったという点も、職人たちが仏壇作りを始めた理由のひとつと考えられています。
また、仏壇作りが普及していった理由としては、この地域が漆を乾かすのに適した気候帯だったという点も挙げられています。
さらに、1800年代になると、越後国長岡(現在の長岡市)を治めていた、譜代中小藩の長岡藩が、浄土真宗の保護政策を行ったため、庶民の家にも位牌をまつる文化が浸透していきました。
その結果、位牌を安置するための仏壇を購入する人が増え、1800年代の前半には、長岡仏壇作りが地場産業として定着していきました。
近年では、仏壇作りの伝統技法は維持しつつ、住宅事情や様式の変化に合わせて、家具や棚の上に置ける家具調の仏壇などもつくられるようになっています。
長岡仏壇の特徴
長岡仏壇にはさまざまな特徴がありますが、一番特徴的なのは、本尊をまつる宮殿(くうでん)部分です。
宮殿内には屋根があり、屋根のつくりは本来宗派ごとに異なるのですが、長岡仏壇の場合は、西本願寺と東本願寺の屋根のつくりを合わせた「三ツ屋根型宮殿(みつやねがたくうでん)」になっています。
西本願寺も東本願寺も、浄土真宗の宗派に変わりありませんが、それぞれ、本願寺派、・真宗大谷派に分かれていて、本尊のつくりも微妙に異なっているのです。
これらのつくりの折衷案として三ツ屋根型宮殿を取り入れたのが、長岡仏壇というわけです。
「唐波風(からはふう)」「千鳥破風(ちどりはふう)」と呼ばれる屋根の両脇に、さらに唐破風の屋根を添えたつくりはとても豪華です。
さらに、塗りの工程でも、長岡仏壇の特徴が見て取れます。
長岡仏壇では、木目を出すために漆塗りをする際「呂色仕上げ(ろいろしあげ)」という技法を用いています。
呂色仕上げでは、漆を薄く塗り、乾いたら表面を研磨するという作業を何度も繰り返し行います。
作業が完了するまでには最低3カ月かかるのですが、呂色仕上げをすることで、ツヤを抑えた上品な仏壇になります。
このほかにも、塗りの工程では、木目をきれいに出すための「木目出し塗り」や、砕いた貝殻をちりばめた「青貝塗り」など、さまざまな技法を掛け合わせて、長岡仏壇ならではの気品あふれる雰囲気の仏壇に仕上げていきます。
また、長岡仏壇のもうひとつの特徴として、本体と台座を取り外せる仕組みになっている点も挙げられます。
組み立て式で塗り直しなどの修理を簡単に行うことができるため、長年きれいな状態を維持して使い続けることができます。
長岡仏壇の現代での使われ方とお手入れ方法
長岡仏壇は、台座と本体が分離できるようになっていて、塗りの修繕や細かい部分の清掃まで手入れがしやすいつくりになっています。
仏壇は長年使用していると、どんなに大切に扱っていても、手垢や線香のスス、経年劣化による傷みが出てきます。
しかし、長岡仏壇は耐久性に優れていて、細部まで修復も可能です。
定期的に専門業者に依頼をしてメンテナンスすることで、世代を越えて、代々引き継いでいけるようになっているのです。
また、長岡仏壇作りの職人たちは、磨き上げられた高い技術力を活かして、仏壇以外の製品開発にも積極的に取り組んでいます。
地元長岡で生産されているアルミ合金でできたぐい呑みに、漆塗りと蒔絵をほどこした製品の販売や、疫病退散のご利益があるといわれるアマビエのストラップや置物の製作・販売。
このような日常使いできる身近な製品を通して、長岡仏壇作りの技術力の素晴らしさを感じることができるようになっています。
長岡仏壇の見学・体験ができる場所
小千谷市伝統産業会館サンプラザ
所在地 | 新潟県小谷市城内1-8-25 |
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電話番号 | 0258-83-4800 |
定休日 | 12月29日~1月3日※織之座・匠之座は毎週水曜定休日 |
営業時間 | (3月~11月)9:00~18:00 (12月~2月)9:00~17:00 |
HP | https://www.ojiyasunplaza.jp/guide.html |
備考 | 縮、紬、仏壇などの伝統工芸資料が電磁されている。地場産品の販売や食事処も併設。 |
廣川佛壇店
所在地 | 新潟県長岡市関原町5丁目5番地 |
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電話番号 | 0258-46-2020 |
定休日 | 記載なし |
営業時間 | 9:00~18:00 |
HP | https://www.butsuko.co.jp/ |
備考 | 140年続く老舗仏壇店。長岡仏壇をはじめ、唐木仏壇や現代調仏壇などを取り揃えている。 |