名古屋仏壇とは
名古屋仏壇とは、その名の通り名古屋周辺地域で生産される仏壇です。
原材料には高級な材質であるケヤキやヒノキ、白檀(びゃくだん)などの木材が使用されており、各工程別に熟練の職人が伝統技法を用い、数々の厳しい基準をクリアした通産大臣指定の伝統的工芸品です。
人と資源に恵まれた名古屋仏壇の歴史
名古屋周辺は資源に恵まれた木曽地域の近くであったため、仏壇の作成には欠かせない良質な資源の調達が容易であったり、専門的で高度な技術をもつ人材にも恵まれていました。
またこの地域では熱心な仏教の信者が多かったことも、早くから仏壇製作の技術が育った要因です。
江戸時代の初期には、東本願寺を造営する際にかかわった優秀な職人たちが木曽ヒノキを使用して仏壇工芸を広め、現在の基礎が作り上げられました。
また1695年には、高木仁右衛門が「ひろや」という仏壇専門店を創業したことが名古屋仏壇製造の始まりです。
その後も尾張藩が仏壇業者を保護したことにより、技術も守られ成長を続けることができ、時代の流れに応じて育まれてきました。
そして、1976年に名古屋仏壇は経済産業省より国の伝統的工芸品として指定され、現在では名古屋に200以上の仏壇や仏具の専門業者が存在する中でも、日本のトップクラスを誇る地域となっています。
11人の匠が支える名古屋仏壇
名古屋仏壇の大きな特徴といえば、「みつまくり」といって本体を支える台の部分が高くなっていることや、とても豪華な構造が特徴の宮殿御坊造り(くうでんおぼうつくり)が代表的なものです。
台を高くした理由は、昔から木曽三川のたびたびの氾濫があったため、水害から仏壇を守るための先人からの知恵でした。
また仏壇の台の中に仏具を収納するためのスペースがあったり、「組木ほぞ組」といった釘は一切使わない組み立て式の構造になっていたりという理由で、分解や組み立てが容易にでき、補修や洗いなどの手入れも簡単に行えるなど合理的につくられています。
またもう一つの大きな特徴として、名古屋仏壇の製造過程で「八職」といわれる専門の職人たちの存在は欠かせません。
「八職」とは、仏壇作りには欠かせない8部門の専門の職人たちを総称してこう呼ばれており、木地師、荘厳師、彫刻師、塗り師、蒔絵師、外金物師、内金物師、箔置き師の8部門のことを指します。
それぞれの役目としては、厳選された木材を選び、仏壇の形状や大きさに合わせて本体を作る「木地師」、名古屋仏壇の顔ともいえる大事な部分で、ほぞ組みという技法を使い、膨大な数の部品を使って正に仏殿そのものを再現する「荘厳師」。
そして名古屋仏壇の特徴である「三ツ切り欄間」や「枡合い彫刻」の豪華な組み合わせと、そこに多種多様な彫り物を掘りあげる「彫刻師」、仏壇の良し悪しを決める命ともいえる塗りを行う「塗り師」、仏壇の引き出しや障子、扉や文書箱などに繊細で豪華な絵柄や紋などを描く「蒔絵師」。
また、仏壇の外側部分を飾る金具に綺麗に唐草模様や花などの模様を刻み込み彩る「外金物師」、反対に内側を彩るため非常に沢山の内金具を彩り、仏壇をより豪華に引き立ててくれる「内金物師」。
次に「箔置き師」が仏壇の各部分に極限まで伸ばされた金箔を正確に貼り付けます。
そこに天井師、呂色師、仕組師の3部門の職人が加わります。
さらにミリ単位で正確に図られた様々な大きさの格子を組み合わせて豪華絢爛な天井を造りあげていく「天井師」、漆で塗られた面を何度も磨きあげて鏡面のような光沢に変える「呂色師」、そして最後に各職人たちが作り上げたものを回収し工程順に組みあげる「仕組師」。
こうしてはじめて一本の素晴らしい仏壇を仕上げることができ、また多種多様な形の仏壇を作り上げていくことが可能となるのです。
名古屋仏壇はお手入れをすることで半永久的に利用できる
名古屋仏壇の特徴として木地の構造が「ほぞ組」という組み立て方法になっているため、全部の部品を分解し修理したり洗濯したりすることができます。
たとえそれが年月が経ったものであったとしても、補修や洗濯をするとまた元あった輝きを取り戻すことができます。
仏壇を綺麗にする方法としては「洗浄」と「お洗濯」の2つがあります。
「洗浄」とは薬品を使って汚れを洗い流すだけのものになります。
他に特に気になる修理等がない場合や、あまり予算をかけられない場合などにおすすめの方法です。
「お洗濯」というのは、部品の傷や劣化等経年により傷んだり修理箇所があったりする場合に一つ一つ丁寧に修理や修繕を行います。
このお洗濯をすることで通常のクリーニングより耐久性が数十年も良くなります。
なぜなら、すべての部品を薬品で洗浄したのち、乾燥後には再度専門の職人の手により修理が必要な部分はもう一度工程を修理しやり直してくれるからです。
仏壇は安い買い物ではありません。ですが、それは次の世代へと引き継いでいけるための耐久性を見据えた仕事をしているのです。
一般的に仏壇の洗濯は買ってから20年〜30年くらいだといわれています。
定期的にきちんとお手入れすることで、最初の美しさをこれからも損なわれることなく半永久的に保つことができます。
名古屋仏壇の見学・体験ができる場所
愛知県名古屋仏壇商工協同組合
所在地 | 名古屋市中区橘1-6-5 |
---|---|
電話番号 | 052-321-5608 |
定休日 | |
営業時間 | 電話でのお問い合わせ 10:00〜17:00 |
HP | http://nagoya-butsudan.net/ |
備考 | 毎年「尾張名古屋の職人展」にて職人による実演や見学が行われたり、地元の小中学生向けに工房の見学や職人体験等が開催されます。 |
後藤太郎仏壇店
所在地 | 愛知県名古屋市中区橘1-16-18 |
---|---|
電話番号 | 052-321-3366 |
定休日 | 土・日・祝祭日 |
営業時間 | 9:00〜18:00 |
HP | http://www.goto-b.com/ |
備考 | 多くのメディアから取材の依頼がきたり、全国放送で紹介されるなど、たくさんの実績があります。 |