名古屋桐箪笥とは
名古屋桐箪笥(なごやきりたんす) とは、主に愛知県名古屋市で作られている木工品です。
質の良い桐でできた名古屋桐箪笥は、約400年前の名古屋城築城に携わった職人たちによって作られたのが始まりとされています。
ほかの地域の桐タンスと比較すると20センチほど幅が広めに作られているところが特徴で、金具には金や銀の装飾が施され、豪華な印象を受けるタンスです。
桐特有の軽さや防湿性もあり、デザインと実用性を兼ね備えているのも魅力のひとつ。製造工程には造材、木取り、狂い直し、加工、加飾、金具付けなどがあり、全部を合わせると130ほどありますが、これらすべてが1人の職人によっておこなわれています。
名古屋では嫁入り道具にお金をかける風習があったことや豊かな森林資源がある飛騨地方に近かったことなどが要因となり、名古屋桐箪笥は発展していきました。
1981年には国の伝統的工芸品に指定され、古くからの伝統や技術が守られ続けている高級タンスです。
400年の歴史を持つ名古屋桐箪笥
名古屋桐箪笥の始まりは約400年前。
名古屋城の築城に携わった職人たちがそのまま城下町に住むようになり、そこで「箪笥」や「長持(ながもち)」などを作り始めたのが起源とされています。
実はもともとタンスというものが存在しなかった日本。収納家具としては木製の長持や櫃(ひつ)が使われていましたが、タンスのような衣服を収納する家具はありませんでした。収納を必要とするほど余剰な衣服を持っていなかったからです。
鎌倉時代以降になって台所用の棚ができ、江戸時代にようやく引き出しのついた今のようなタンスが誕生します。
タンスの需要が高まり始めたのは徳川幕府の全国統一後。暮らしや経済が安定するにつれ、人々の生活は豊かなものに。
織物の生産も増加し、高級品を求める人も多くなります。一般人が高級呉服を手にすることも増えていきました。
そこで収納家具として名古屋桐箪笥を含む高級タンスが普及していったのです。
明治時代ごろには、金具に金や銀の色、真鍮のメッキなどを施し、「袋戸(ふくろと)」に金箔画や漆塗蒔絵(うるしぬりまきえ)を描く豪華な装飾が確立します。
ここで名古屋桐箪笥らしさの代表的な型が完成しました。1981年には伝統的な技術と美しさが認められ、国から伝統的工芸品の認定を受けます。
名古屋では嫁入り道具にお金をかける風習があり、高級品として名古屋桐箪笥が用いられることもありました。しかしこの風習も時代とともに姿を消してしまいます。
名古屋桐箪笥の伝統的価値が揺らぐことはありませんが、近年のライフスタイルの変化による需要の減少や、職人の後継者不足が課題になっています。現在、それを補うべく、伝統的な夫婦たんす作りの技術を活かした、マンション等のリビングや寝室等の洋間にもマッチする扱い易いデザインの総桐チェストの開発にも力を注いでいます。
華やかな装飾が魅力の名古屋桐箪笥
名古屋桐箪笥の特徴としては、ほかの高級タンスに比べて20センチほど幅広く作られていることや見た目が豪華なことがあげられます。
幅が広めの名古屋桐箪笥の右下あたりには昇箪笥(のぼりたんす)という小さな引き出しがついていることも多いです。
金具には金や銀の色を使い、上部にある袋戸には金箔画や漆塗蒔絵を描いて豪華な雰囲気を演出しています。
華やかな装飾が映えるためには土台となるタンスももちろん重要。名古屋桐箪笥は金具付けなどの装飾の前に仕上げの加工をおこなっています。
仕上げ削りをしたあとにおこなうのが、タワシに似た「浮造り(うづくり)」と呼ばれる道具で磨いていく作業です。ハンの木の実で作られた「ヤシャブシ液」と「砥の粉(とのこ)」を混ぜた液で着色し、ろうで磨けば、高級感ある美しい見た目ができあがります。
木材の加工から金具付けまでのすべての工程を1人の職人がおこなっているのも名古屋桐箪笥の特徴で、完成までに長い時間と洗練された技術を要する高級な伝統工芸品です。
時代の移り変わりとともに需要が減少している名古屋桐箪笥ですが、本物志向の人々からはまだまだ根強い人気を誇っています。
名古屋桐箪笥の現代での使われ方とお手入れ方法
質の良い材料と流行に流されないデザインで、今でも人々に愛されている名古屋桐箪笥。
お手入れとしては、カビや狂いを防ぐために定期的にお部屋の換気をすることをおすすめします。表面の掃除をするときは水拭きや洗剤の使用は避け、木目に沿って乾拭きをします。
万が一キズや汚れがついてしまった場合は、専門の業者へ相談しましょう。名古屋桐箪笥の修理・再生を専門とした工房もあり、思い出深いタンスも責任を持って修理してくれます。
名古屋桐箪笥はきちんとお手入れをすれば何代にもわたって使うことのできる、質の良いタンスです。親から子へ、子から孫へ、代々受け継いでいけるように大切に扱っていきましょう。
名古屋桐箪笥の見学・体験ができる場所
(有) 出雲屋家具製作所「直営ショールーム・名古屋桐たんす工房 出雲屋」
所在地 | 愛知県春日井市前並町前並8-4 |
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電話番号 | 0568-31-8627 |
定休日 | 第1・第3火曜日・水曜日(祝日は営業)臨時休業日 |
営業時間 |
9:00~18:00 ショールーム来場の際は、お気軽に電話・メール等にてお問合せ下さい。 |
HP | https://izumoya.co.jp/ |
備考 | 直営ショールームには、伝統工芸士5名を中心に製作した伝統的工芸品指定の「名古屋桐たんす」を中部地区最大級の品揃えで多数展示。また、想い出深い深い古い桐たんすのリメイク(洗い・修理・再生)の相談も承っております。 名古屋桐箪笥伝統工芸士会・名古屋桐箪笥工業協同組合員。 |
伊藤タンス店
所在地 | 愛知県名古屋市中区平和2-801 |
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電話番号 | 052-321-5756 |
定休日 | 日曜日 |
営業時間 | 9:00~18:00 |
HP | https://itotansu.com/ |
備考 | 創業100余年の豊富な実績と高い技術力で、家具制作・修理などのご依頼に対応しています。 |