新潟漆器とは
新潟漆器とは、新潟県新潟市周辺でつくられる漆器のことです。江戸時代、北前船の寄港地であった新潟では、陸からも海からも全国各地のさまざまな文化が入って来ていました。
その販路は江戸・大阪をはじめ、北海道にまで広がったり、まさに物資の貿易地としての歴史ある場所なのです。
新潟に漆器の文化が入り始めたのは江戸初期。江戸後期には、日本有数の漆器の生産地として知られるように。そんな新潟でつくられる漆器は、『変わり塗の宝庫』とも呼ばれる多種多彩な色や模様が特徴的です。
これは、多くの物資の集散地である新潟という土地柄、全国各地の人や物との交流を通して、さまざまな種類の漆器が入って来た影響が大きいのでしょう。
貿易によるさまざまな個性を取り入れ磨かれ栄えた新潟漆器の歴史
1615~1624年、秋田県能代の春慶塗(しゅんけいぬり)※が伝えられ、盆や膳などの日用品が入って来たのが、新潟漆器のはじまりだといわれています。
その後、1638年には現在の古町7番町付近に「椀店(わんだな)」と呼ばれる”塗り物の専売地域”が定められ、保護政策がとられました。
また、1764~1817年にかけて、蒔絵の技法を三根山藩の藩士渡辺源蔵より、堅塗(かたぬり)の技法を会津若松の畑清兵衛が伝えたほか、磯草塗、金磨塗、銀真塗がつくられるなど、新潟漆器独自の多様な漆技術が発展したのです。
そして1819年、江戸時代末期の新潟は漆器の特産地となり、塗り物店や塗物師、椀店、蒔絵師、職工、指物師など店も職人も増え続け、1886年には組合も結成。竹塗の技法が入ってきたのち、1899年に新潟市漆器同業組合として認可されました。
満州事変の影響で漆が入手困難になったものの、昭和初期には組合員の数も増え、漆器産業で最高潮の繁栄となったのです。
その後日中貿易の断絶の影響で漆器業界全体は大ピンチに。昭和後期からはさらに生活様式の変化などで需要が減り、後継者不足にも悩まされますが、新潟漆器の新しい製品として『夕日塗』の開発などの新しい試みにも挑戦中。
そんな新潟漆器は2003年、国の伝統的工芸品に指定されています。
※下塗りをした、ひのきやもみじなどの上に透明漆をかけ、木目が透けて見えるように仕上げた漆塗りの一種
自分好みの漆仕上げを見つけたい!新潟漆器の特徴
新潟漆器の特徴は多種多様な作風です。伝統的工芸品として指定されている以下5種類の変わり塗についてそれぞれわかりやすく解説します。
『花塗り』は研ぎ・ツヤあげ・胴摺・磨きを行わず、模様付けもないシンプルな技法。漆に植物性油を混ぜた朱合漆がつかわれているため、ふっくらぽってりしたつややかな仕上がりが特徴です。
『石目塗(いしめぬり)』は、石のザラザラとした肌合いを、炭粉によって表現したもの。塗膜が固くキズつきにくいのが特徴で、お盆や底面にも多くつかわれる技法。石目塗に蒔絵をほどこしたものは『萬代蒔絵』と呼ばれています。
『錦塗(にしきぬり)』は、麻紐を束ねた”タンポ”という道具をつかい、彩漆で叩き塗りや型置きをしたあと、いくつかの色漆を重ね、表面を研ぐことで不規則なまだら模様にする技法です。青森の津軽塗技法に似ています。
『磯草塗(いそくさぬり)』は板状にしたタンポを回転させるようにして漆を塗り研ぎ出すことで、波間にただよう海藻がゆらゆら揺れているかのような紋様になります。江戸時代中期に弥彦の渡辺縫之守が考案。
『竹塗』はほかの漆器にはない、新潟漆器特有の、器の表面を本物の竹のように見せる技法。下地の際に漆に砥粉を混ぜた錆で竹の節などをつくり、その上に真菰粉(まこも)など色漆で竹の肌や模様をつけていきます。元は江戸の刀の鞘塗りが発祥とされる技法です。
このほかにも金磨塗(きんまぬり)・青銅塗(せいどうぬり)・青貝塗(あおかいぬり)・呂色塗(ろいろぬり)・紫檀塗(したんぬり)などがあるほか、現在は夕日塗や朧銀塗(おぼろぎんぬり)という新しい技法も注目されています。
自分に合った漆器を見つけたい人におすすめ!新潟漆器の多様性を楽しもう
伝統工芸品の中でも魅力的なつややかさをもつ漆器たち。なかでも新潟漆器は、伝統的工芸品として指定されているだけでも、5種類もの個性の異なる漆の製品に触れることができるというちょっと変わった漆器です。
質感や色、デザインなど自分に合った漆器を見つけたいなら、ぜひ新潟漆器をチェックしてみてください。
お椀やお盆などの日本的なアイテムのみならず、ビールなどを注いでも楽しめるタンブラーやワイングラス、マグカップ、カトラリーや文具などさまざまな製品が登場しています。
それぞれの漆によって「石のように」見えたり、「竹のように」もしくは「金属のように」も見えたりするようにつくられていますが、どの製品も木が材料ですから、とても軽くて使いやすいので安心です。
なにより天然素材なので身体にも優しく、つかい続けるほどに手になじみ愛着が湧いてきます。
新潟漆器の見学・体験ができる場所
北方文化博物館(ほっぽう ぶんかはくぶつかん)
所在地 | 新潟県新潟市江南区沢海2丁目15-25 |
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電話番号 | 025-385-2001 |
定休日 | 年中無休 |
営業時間 |
9:00~17:00(4~11月) 9:00~16:30(12~3月) |
HP | https://hoppou-bunka.com/ |
備考 |
沈金(ちんきん) 体験:1人3,000円~、 入場料は別料金 ①11:00~②14:00~希望時間を選んで予約 |
URUSHI OTAKI(ウルシオータキ)
所在地 | 新潟県村山市上片町2-32 |
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電話番号 | 0254-52-6988 |
定休日 | 毎月第2日曜日 |
営業時間 | 9:00~18:00 |
HP | https://www.u-ohtaki.com/taiken/taiken.htmll |
備考 |
絵付け2,500円、箸塗り1,200円 対象:小学校高学年~一般 |