岡崎石工品とは
岡崎石工品は、愛知県岡崎市周辺で採掘されている花崗岩(かこうがん)で製造した工芸品です。岡崎は日本三大石材産地の一つで、古くから質の高い花崗岩が手軽に採取できたことから、石工文化が地場産業となりました。「ものづくり王国」をスローガンに掲げている愛知県にとって、歴史とともに発展してきた岡崎石工品は代表的な逸品です。1979年に経済産業大臣より国の伝統的工芸品として指定されました。
地場産業として長い歴史をもつ岡崎石工品
岡崎の石工品の始まりは、室町時代後期にさかのぼります。築城の際、近隣の山でとれた良質な花崗岩を上納し、石垣をつくりました。
現在の岡崎石工品の原型を築いたのは、安土桃山時代のことです。日本の名城の一つ、岡崎城は徳川家康が生まれた城でした。戦国の世だったため、幼少期に岡崎城を後にして波乱万丈な人生を歩みましたが、家康はこの地を本拠地として大切にしていました。
家康が関東へ移封された後、1590年に城主となった田中吉政は、岡崎城の造営、堀の構築、城下町造成を大規模におこないました。その際、河内や和泉にいた優秀な石工職人を呼び寄せたことから、その職人たちが岡崎に移り住み、独自の技術を磨いていったのです。
岡崎石工品が産業として栄えた大きな理由は、輸送手段に恵まれたことです。室町時代より幾度も改修がおこなわれた矢作川(やはぎがわ)は、岡崎城への重要な舟運を担っていました。この矢作川を利用して重い石燈籠を、江戸にも大阪にも運ぶことができたのです。
岡崎の石工業が発展したもう一つの理由は、戦後の高度成長期に、急激な技術革新により機械化が進み、効率が上がったことです。当初は数十軒しかなかった石屋が、この頃には350軒まで増えていました。加えて自動車産業が発展し、道路の整備が進んだことも大きな要因となっています。
すぐれた技術の継承により発展した岡崎石工品の特徴
岡崎石工品の特徴は、良質な花崗岩が身近に採取できることと、優秀な石材職人の技術が長年伝承されてきていることです。白雲母を含む希少な花崗岩「岡崎みかげ」は日の光を受けるとキラキラと輝いて見えます。その美しい天然石を活かす技術をもつすぐれた職人が、岡崎では400年以上もの間、とぎれることがなく育ってきているのです。
岡崎以外に日本の石材産地で有名なのは、茨城県真壁町、香川県庵治町です。茨城県真壁町は良質な花崗岩が潤沢に採取できることから、種類と量が圧倒的に多いことが特徴としてあげられます。香川県庵治町の石は、青みがかったまだら模様がめずらしく、世界でも有数の高級品です。それぞれの地域で個性が異なることが、お互いに発展してきた理由といえます。
岡崎石工品は石燈籠が代表的ですが、墓石、鳥居、玉垣、水鉢、狛犬にいたるまで、神社仏閣を見回せば数に限りがありません。また公共の場にある石碑やモニュメント、一般の庭園における燈籠などもおなじみの品々です。ここでは代表的な織部型燈籠の作業工程をご紹介します。
まず一番頂上の「玉」の下場づくりから。定規をつかって、荒石の中心の位置をわり出す芯出し、玉の直径の線を描く矩出し(かねだし)、不要な部分を削る荒どり、大まかに形をとる荒づくり、そして表面をびしゃん・たたき・こべらといった道具で繊細に仕上げます。
屋根の部分の「笠(かさ)」、燈明をともす「火袋(ひぶくろ)」、受皿の「受(うけ)」、全体をささえる「柱(はしら)」、基礎の部分の「地輪(ちりん)」なども同様に仕上げます。
ほかの部位とちがうのは、火袋をつくる際に、切断機で荒石の天場面と下場面を平らに切削することと、柱の荒づくりにせっとうとのみを用いることです。そして柱上部のふくらみは、こべらで文字を彫刻、下部に仏像の模様を彫ります。6つの部位を彫りあげ、ほぞと呼ばれる凹凸をつけたら、積み上げて完成です。
岡崎石工品の現代とお手入れ方法
近年は、住宅事情の変化から石燈籠の出荷数が減ったり、維持することが困難なことから墓じまいをしたりする人が増えています。そのなかで、もっと身近に石を利用してほしいという思いから、一輪挿しや表札、ウエルカムボードなど新しい商品に挑戦している岡崎の職人もいます。
岡崎には、日本で唯一の石材加工科を有する職業訓練校があり、石工職人をめざす若者が全国から集まります。「石都岡崎」ならではの石工技術の継承が、今も連綿とおこなわれているのです。
【墓石のお手入れ方法】:屋外にあるお墓は、丈夫な石とはいえ手入れをしないと劣化してしまいます。やわらかい雑巾やスポンジで墓石の汚れをやさしく落としましょう。文字や彫刻の部分は古いハブラシをつかうと便利です。汚れを落としたら、水をかけて雑巾できれいに拭き取ります。お酒などをかけると、鳥や虫が寄ってきて汚すのでさけましょう。スチール缶などを置いたままにしておくと、サビが染みついてとれなくなるので注意が必要です。
岡崎石工品の見学・体験ができる場所
岡崎石工団地協同組合
所在地 | 岡崎市上佐々木町梅ノ木48 |
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電話番号 | 0564-31-3823 |
定休日 | 土・日曜・祝日 |
営業時間 | 9:00~15:00(終了16:00) |
HP | https://aichinavi.jp/educations/detail/1399/ |
備考 | 見学・体験 1カ月前までに要予約 |
石嶽石工業(いしたけいしこうぎょう)
所在地 | 愛知県岡崎市米河内町字梨形35番地2 |
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電話番号 | 0564-46-3614 |
定休日 | 日曜・祝日 |
営業時間 | 8:00~17:30 |
HP | http://www.ishiya-ishitake.jp/ |
備考 | 展示あり |