奥会津編み組細工とは
奥会津編み組細工(おくあいづあみくみざいく)は、福島県で作られている伝統的な木工品です。大沼郡三島町を中心に生産されており、奥会津山間部のヒロロや山ブドウ、マタタビなどを材料としています。
主な製品は、かご、ざる、菓子器、炊事用具など。日常生活で活躍する使いやすい製品は、昔から農作業などで重宝されてきました。現在も、日常に寄り添ったさまざまな製品が生産され続けています。
奥会津編み組細工の歴史と職人育成の活動
奥会津編み組細工の技法は、縄文時代から存在していたと考えられています。その理由は、三島町の荒屋敷(あらやしき)遺跡から発掘された編み組のかごの断片。この発見により、当時からすでに編み組細工が作られていたことがわかりました。
編み組細工の記録は、江戸時代の書物にも残っています。1748年の『会津農書(のうしょ)写本』には、会津で野草の縄を用いたかごが作られたことが書かれていました。1788年の『東遊雑記(とうゆうざっき)』には、ヒロロを使った蓑(みの)の編み組細工が登場。こうした古文書の情報により、古くから日常の中で使われていたことがわかったのです。
奥会津編み組細工は、その後も長く生産が続けられ、人々の日常を支えてきました。しかし、1965年頃から、高齢化によって職人が減少。伝統的な技法を継承する人がいなくなり、長く続いてきた生産が途絶える可能性が出てきます。
三島町では、この問題を解決するため、奥会津編み組細工の支援を開始。町主催で展示会を開催するなど、編み組細工の魅力を広く伝える活動を始めました。1981年からは生活工芸運動が始まり、編み組細工の工人(こうじん)が町人に指導を行うようになります。
また、編み組細工を地域産業として定着させようとする働きも活発化。2001年には「三島町生活工芸運動友の会」が発足し、地域の産業としてより発展させるための取り組みが始まります。工人から技術を学んだ町人は、個人で注文を取るようになり、共同販売施設への納品なども積極的に行われました。
こうした活動の中で、編み組細工は地域に深く浸透し、代表的な産業となっていきます。作り手を増やすことにも成功し、伝統的な技法をしっかりと継承。現在は多くの工人が生産を行っています。2003年には、国から伝統的工芸品に指定されました。
材料によって変化する奥会津編み組細工の特徴
奥会津編み組細工の特徴は、独特な魅力をもつ手編みです。熟練の技術で丁寧に作られた製品は、自然素材の良さがいかされており、素朴さと繊細さをあわせもつ木工品となっています。
主な細工の種類は、ヒロロ細工、山ブドウ細工、マタタビ細工の3つ。いずれも会津地方で育った植物を素材としており、それぞれ異なる特徴をもっています。
ヒロロ細工は、ホンヒロロやウバヒロロを使った綯い縄(ないなわ)を編んでいくものです。編み目がとても細かく、レース編みのような美しい仕上がりになることが特徴。手さげかごやバッグなどが作られており、繊細な編み目を多くの人が楽しんでいます。
山ブドウ細工の素材は、山ブドウの皮をなめしたもの。6月に一枚皮として採取した山ブドウの皮は、とても頑丈な素材であり、製品の耐久性が高くなっています。そのため、厳しい山仕事などに適しており、長く使える丈夫な編み組細工として人気です。
マタタビ細工は、1~3メートルの厚いマタタビの枝を材料とするもの。とても水切れの良い製品になるため、炊事用具などが多く作られています。水分の多いマタタビの枝を使うことで、手触りがしなやかになることも特徴のひとつ。肌を傷つけない安全性が、高く評価されています。
この3つの細工は、材料の採取から完成までの工程を手作業で行うもの。すべての作業を工人が一手に担っており、基本的に夏は材料の採取、冬は加工を行っています。ただし、高齢の工人が全作業を担当することは難しいため、最近は周囲の協力も重要になってきました。多くの人の努力が、素晴らしい製品を生み出しているのです。
奥会津編み組細工の現在とお手入れのコツ
現在の奥会津編み組細工は、かご、ざるといった伝統的な和の製品に加え、洋風の製品も多く作られるようになりました。手提げバッグやショルダーバッグなどは、若い世代からも支持を獲得。時代の変化に合わせて現代風のアレンジを加え、より日常生活に寄り添ったものが開発されています。
また、後継者を育成するための活動も盛んです。現在も高齢化は進み続けており、伝統的な技術を継承するため、ものづくり教室などを積極的に開催。丁寧な指導で編み組細工の従事者を増やしています。
奥会津編み組細工のかごやバッグを長持ちさせるには、湿気をためこまないための対策を行いましょう。濡れた場合は、タオルで水分を拭き取り、風通しの良い場所で乾燥させることが大切です。
ひどく塗れた場合は、そのまま乾かすのではなく、中に丸めた新聞紙などを詰めておきましょう。多量の水分があると型崩れが起きることも多いですが、詰め物を入れておけば、元の形状を維持しやすくなります。
保管する際も、湿気の多い場所は避けてください。風通しの良い乾燥した場所であれば、カビを防ぐことができます。しばらく使わないものでも、しまい込まずに部屋の中に出しておけば、湿気をとばすことができるでしょう。
奥会津編み組細工の見学・体験ができる場所
三島町生活工芸館
所在地 | 福島県大沼郡三島町大字名入字諏訪ノ上395 |
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電話番号 | 0241-48-5502 |
定休日 | 月曜(月曜が祝日の場合はその翌日)・祝日の翌日・年末年始 |
営業時間 | 9:00~17:00 |
HP | https://www.okuaizu-amikumi.jp/ |
備考 | 奥会津編み組細工の制作体験 |
伝統工芸青山スクエア
所在地 | 東京都港区赤坂8-1-22 1F |
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電話番号 | 03-5785-1301 |
定休日 | 年末年始 |
営業時間 | 11:00~19:00 |
HP | https://kougeihin.jp/ |
備考 | 奥会津編み組細工を購入可能 |