大阪泉州桐箪笥とは
大阪泉州桐箪笥は、大阪府の伝統工芸品のひとつです。岸和田市や堺市周辺で作られており、生産量があまり多くないことから、希少価値の高い家具として知られています。
「桐箪笥の最高峰」と名高い大阪泉州桐箪笥は、重厚かつ気品のある雰囲気が特徴。長い歴史があり、経済産業大臣指定伝統的工芸品にも認定されています。
大阪泉州桐箪笥の歴史と江戸時代の大阪
大阪泉州桐箪笥は、起源となる正確な年代が、いまだ特定されていません。しかし、古い文献から、江戸時代の中期と推測されています。
江戸時代が始まりとされる理由は、300年以上前に執筆された書物『難波鶴』の中に、箪笥職人についての記述があるからです。箪笥職人の存在は、当時からすでに箪笥が生産されていたことを示しています。その頃の箪笥作りのベースが、大阪泉州桐箪笥へつながったとされているのです。
箪笥作りの進化には、大阪の商業的な発展も大きく影響しています。地理的に日本の中心だった江戸時代の大阪は、「天下の台所」と呼ばれており、流通の拠点でした。そのため、とても豊かであり、人が多く集まっている場所でもありました。
多くの人々が生活する場所では、自然と衣類の需要が増加します。すると、収納のために必要となる家具も、高い人気を集めるように。人々の需要に応えるため箪笥作りが活発になる中で、桐箪笥もどんどん発展していったのです。
大阪泉州桐箪笥の製造技術は、江戸時代後期になると、かなり確立されていたと考えられています。その頃には、農民の需要が増えていたことも、重要なポイントです。
江戸時代末期は、農業の技術が向上した時期であり、財産を蓄えようとする農民が増えました。すると、財産を子供に託すための手段として、家具を選択する流れが出てきます。嫁入り道具として、箪笥を持たせる親も多かったのです。
農民の需要も加わったことで、桐箪笥の生産はさらに活発化。多くの職人が腕を競い合い、品質の高い箪笥が次々に作られる中で、大阪泉州桐箪笥の製造技術もより磨かれていくことになりました。
高品質な素材がもたらす大阪泉州桐箪笥のメリット
大阪泉州桐箪笥の大きな特徴は、原材料となる桐が厚く、組手が多いことです。厚さ20ミリ以上の桐材を、職人が高度な技法を用いて組み上げていきます。そのため、重厚で堅牢な桐箪笥として、長く愛され続けているのです。
桐材は、近年海外産のものを使うことも多くなりました。国内では伐採が進んでいるため、厚く良質な桐材を十分に確保することができません。不足分は、アメリカのバージニア州やペンシルバニア州から取り寄せ、常に最高の桐箪笥を生産できるようにしています。
桐材の質を高める秘訣は、こだわりの乾燥方法。製材後、1~3年かけてじっくり自然乾燥させることにより、変色しにくい高品質な桐になります。
大阪泉州桐箪笥は、防湿性、耐火性、防汚性などが高いことも魅力的なポイント。さまざまなメリットを兼ね備えた桐材が、素晴らしい箪笥を作り上げています。
防湿性の高さは、桐の膨張によって得られるものです。桐は、湿気を吸うと表面が膨れるため、隙間がぴっちりと埋まり、外からの湿気を防いでくれます。湿気が多い日本では、表面の目がつまった桐は、最適な素材なのです。
乾燥している状態では表面が縮むため、通気性を確保することもできます。適度に乾いた空気が入るため、必要以上にじめじめすることはありません。
優れた耐火性の秘密は、水分の吸収です。湿気を素早く吸収する桐は、燃えにくい性質があり、火によるダメージを中まで通しません。表面が焦げていても、木の内部は無事であることが多いのです。
防汚性は、刈萱(かるかや)の根を束ねた「うずくり」という道具により、表面を摩擦することで高まります。蝋を用いた防水加工も施しながら、丁寧に仕上げを行うため、美しさをしっかりと維持できます。
弱アルカリ性である桐は、防虫性も抜群。防汚効果と防虫効果がどちらも備わっていれば、簡単に劣化することはありません。
古い桐箪笥は、汚れや傷みが目立つこともありますが、洗い替えによる修復が可能。長く使えるため、江戸時代と同じく、次の世代へ託せる家具として高い人気を獲得しています。
大阪泉州桐箪笥の現在とお手入れのコツ
大阪泉州桐箪笥は、大切な衣類や道具などの保管に最適。現在も、長持ちする高品質な家具として、多くの人の生活を支えています。
品のある重厚な見た目には、観賞する楽しさがあるため、蒔絵や漆塗りを施した特注品も人気です。さまざまな美しい箪笥が、伝統的な技法を受け継いだ職人の手によって、生産され続けています。
大阪泉州桐箪笥の美しさを長く保つには、日頃の手入れも欠かせません。ほこりの付着は、カビやシミの原因となるため、柔らかい布で乾拭きしましょう。水拭きはNGなので、注意してください。
防湿性の高い桐材でも、多量の水気は劣化を促進させる恐れがあります。水がかかった場合には、紙などで水分を吸い、しっかり乾燥させましょう。
長く使い続け、傷や汚れがひどくなっているものは、お店に洗い替えを依頼してください。新しく塗装し直し、金具を付け替えれば、新品同様の美しさを取り戻すことができます。
大阪泉州桐箪笥の見学・体験ができる場所
株式会社田中家具製作所
所在地 | 大阪府岸和田市荒木町2-18-5 |
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電話番号 | 072-443-8835 |
定休日 | 毎週火曜、第三水曜 |
営業時間 | 9:00~18:00 |
HP | https://www.hatsune-kagu.com/ |
備考 | 【展示】製品約50点、パンフレット 【実演】製造工程の見学(10名程度) 【体験】カンナで板を削る、桐箱作り |
株式会社留河
所在地 | 大阪府岸和田市大町1-8-27 |
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電話番号 | 072-445-0775 |
定休日 | なし(ただし日曜日は見学不可) |
営業時間 | 要問い合わせ |
HP | https://www.tomekawa.com/ |
備考 | 【展示】製造工程の資料、パンフレット、製品 【実演】製造工程の見学 |