大内塗とは
大内塗とは、山口県山口市で作られている漆器のことをいい、室町時代の大名である大内氏の庇護のもとで作られ始めたことから名づけられました。平成元年に経済産業省より国の伝統的工芸品に指定されています。
渋みのある濃い朱色の地塗りと、下塗り、中塗り、上塗りの漆塗りで丈夫に仕上げているのが特徴です。
大内塗の1つである大内人形(大内雛)は、かわいいフォルムと表情で人気があり、夫婦円満の象徴としてお祝い事で飾られます。
大内塗の歴史と大内弘世
多々良姓(たたらせい)大内氏の第24代当主大内弘世(おおうちひろよ)は、周防・長門(すおう・ながと)二国の守護大名として1300年中期に山口市に本拠地を築き、京都に倣った市街整備を行い、京都から多くの文化人や公家を受け入れる土台を作りました。
京都から迎えた花嫁を喜ばせるために、人形師に屋敷中を人形で飾らせ、大内氏の館を人々は人形御殿と呼びました。また、宇治から取り寄せたゲンジボタルを放ち、そのゲンジボタルは現在も一の坂川(いちのさかがわ)に生息しています。
大内塗は朝鮮や明へたくさん輸出され、豪華絢爛で独特な文化の1つとなります。大内文化は、室町文化に影響を受けた五重塔の建築や庭園の築庭、水墨画の雪舟やフランシスコ・ザビエルを受け入れるなど、大内氏の庇護のもとで発展し、1500年代中期に大内氏が滅亡するまで続きました。
明治時代に郷土史学者近藤清石(こんどうきよし)によって大内千人椀が毛利家の所蔵品から発見され、それを参考に大内塗が復興しました。大正時代には大内塗の技法を生かし、山口県工業試験場で大内人形が作りだされました。また、大内氏時代に作成されたもので現在も残っているものとして、興隆寺の僧が寄進した漆塗足付盤があり、山口県指定有形文化財に指定されています。
細やかな手作業で受け継がれる大内塗の技法
大内塗の特徴は、漆塗りを繰り返すことで強度を高め、手描きによる色漆のデザインに塗師の細やかな意匠を感じるところです。
大内家の家紋である大内菱の形をした金箔を漆の上にはりつけ(箔絵)、金粉や銀粉を散らします(蒔絵)。椀や盆には白や緑、金、黒などの落ち着いた色味の色漆を用いてハギやススキなどの秋草模様を描きます。
男女一対のころんとしたフォルムの大内人形は、長い目に小さなおちょぼ口の穏やかな表情をしており、その着物や扇には松や菊、家紋や袖口などが丁寧に描かれています。
大内塗の職人には木地師と塗師(ぬし)がおり、伝統技術保持者数名で伝統が受け継がれていますが、後継者育成の問題を抱えています。樹脂製品の普及により従来の漆器の需要が少なくなったことと、木地製作や漆塗りの工程の技術習得に息の長い時間が必要であるなどが考えられます。
木材には製品に応じてチナイ、ケヤキ、トチ、ヒノキ、キリ、ホオなどがあり、伐採後数年かけて自然乾燥させます。選別、荒削り、仕上げ削りの木地工程の後、下地工程だけでも傷見、くそ塗り、布着せ、下地塗り、水研ぎ、乾燥・研磨の多くの作業が必要です。
漆塗りの工程では、下塗り、中塗り、上塗りをするごとに乾燥や研磨を繰り返し行います。塵や埃を取り除くために上塗り作業は締め切った上塗り室で行い、漆は和紙で数回濾して純度を高めます。乾燥は室(むろ)で適度な湿度と温度で12~24時間かけて行います。
ほとんどが手作業で行われ、1つの作品作りに約2か月かかる根気のいる作業です。
大内塗の現代での使われ方と伝承
山口県の伝統的工芸品には、赤間硯(あかますずり)、萩焼(はぎやき)、大内塗があり、それぞれの歴史から山口県の魅力を知ることができます。
大内人形はテレビで紹介されるなど近年人気が高まっており、そのデザインには塗師の個性が表れます。大内雛は内裏雛、三人官女、五人囃子の大内雛に雛道具を加えた立派な雛人形のセットが見た目も立派です。
大内文化を広めるために、大内塗の体験が用意されています。山口ふるさと伝承総合センターの「大内塗の箸作り体験」では、上塗りまで終わった箸に蒔絵と箔絵の作業を行うことができます。中村民芸社の体験メニューには、オリジナルアクセサリー作りがあり、小学生以上が対象です。
大内塗には、盆・茶器・花器、重箱・硯箱のほか、江戸時代まで大量生産されていた椀や膳などの食器容器類があります。箸や雑貨、アクセサリーなどはお土産にもおすすめです。
大内塗の見学・体験ができる場所
山口ふるさと伝承総合センター
所在地 | 山口県山口市下竪小路12番地 |
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電話番号 | 083-928-3333 |
定休日 | 12月29日~1月5日・8月14日~16日 |
営業時間 | 9:00~17:00 |
HP | http://y-densho.sblo.jp/ |
備考 | たくみ館では、大内塗の実演見学や教室が開講され、特産品ショップを併設しています。【大内塗り体験】880円、事前の予約が必要です。50名まで。30~60分。【初心者向け教室】大内人形製作。年間20,000円。昼の部と夜の部各15名。 |
中村民芸社
所在地 | 山口県山口市大内御堀4138 |
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電話番号 | 083-927-0619 |
定休日 | 土曜、日曜、祝日 |
営業時間 | 10:00~17:00 |
HP | https://nakamuramingeisha.jimdo.com/ |
備考 | 【アクセサリーづくり体験】2,500円、事前予約制。1日2回開催。5名まで。40~60分。 |