琉球ガラスとは
琉球ガラスは、沖縄でつくられているガラスの工芸品です。廃棄ガラスを砕いたものや、珪砂(けいしゃ)、ソーダ灰、石灰岩などを溶かして成形する技法は、独特の風合いを生み、どこかあたたかく親しみやすいのが特徴です。アメリカ文化と切っても切り離せない沖縄で、試行錯誤の末、たくましく発展してきました。1998年に沖縄県の伝統工芸品に認定されています。
アメリカ文化の影響を受けて発展した琉球ガラスの歴史
琉球ガラスの始まりは今から110年ほど前の明治時代で、那覇市に工場が建ち、長崎や大阪のガラス職人により技術が伝えられました。当時は型吹きと呼ばれる技法で、おもにランプのほややハエとり瓶など無色透明の実用品を製造。しだいに需要が増え、一大産業となりました。しかし原料の破損ガラスが思うように集まらず枯渇状態になったことや第二次世界大戦の被害により、工場はすべて消失してしまいます。
ふたたび琉球ガラスが活気づいたのは、第二次世界大戦後のことです。アメリカの統治下で物資が不足する中、琉球ガラスの職人は、駐留アメリカ兵が廃棄するジュースやビールの空き瓶に着目。再生ガラスとしてリサイクルすることにしました。コーラ瓶のうすい青色、セブンアップの緑、ビール瓶の茶色など、色つきの廃瓶により色ガラスが誕生。当時は、そのままの色を1色のみで活かすシンプルな製品でした。
その後も物資不足は続き、器をつくっても入れるものがない状況で、ガラス工場の経営は困難を極めました。しかし米軍関係者やその家族が工場見学に訪れた際、何気なく置いてあった職人用の灰皿やコップ、遊びでつくった花瓶などを気に入り、注文が入るようになりました。アメリカのライフスタイルにガラス製品はなくてはならないもので、駐留中のみならず、本国へ帰還するアメリカ兵からも工房には大量の注文が。オーダーにより多種多様な製品をつくることで、技術は飛躍的に磨かれていきました。
1950年代後半からは、沖縄にプラスチックやビニールの製品が多く出回るようになり、生活雑器としてのガラス製品の売れ行きは下降していきます。しかしその後、観光客向けの土産品としてシフトしていったのです。1972年に沖縄が本土復帰するまでの間は、6割がアメリカ向けで2割が日本、残り2割が島内への出荷でした。1975年に沖縄海洋博覧会に出展したことで、琉球ガラスが国内外に広く知られることになりました。
マイナスをプラスに変える逆転発想の琉球ガラスの特徴とは
琉球ガラスの特徴は、再生ガラスならではの独特な風合いとこまかな気泡の模様です。最初は必要にせまられ使用した廃棄ガラスが、むしろ落ち着いた色合いを表現してくれます。窓ガラスを使用すると、できあがりは淡いブルーグリーンに。茶色のビール瓶や一升瓶に窓ガラスや透明の瓶をまぜ合わせるとムーディーな黄色に、とガラスそのものの色を活かしながら、淡い透明感をつくっていきます。
そして気泡についても逆転の発想で、模様として活かすことにしました。通常のガラス製品では、気泡が入ると不良品となってしまうのですが、再生ガラスはどうしても気泡が生まれやすいのです。こまかい気泡は光にあたると、キラキラ反射して涼しげに見えます。意図的に剣山をつかって気泡をつくる製品もあるほどです。
再生ガラス利用の効果はもうひとつ、その丈夫さと安定感にあります。丸っこくて厚みがあるため割れにくく、ちょっとした衝撃にも強いのでキャンプなどのアウトドアにも使用できます。
伝統的な琉球ガラスの製造工程は、まず材料となる廃棄ガラスを色別に分けて、洗浄することから始まります。きれいになった材料を溶解窯のるつぼに入れて、1300℃~1500℃で溶かします。ドロドロになった火玉を「吹き竿」の先に巻きとり、息を吹きこんでふくらませながらまわして成形。最初は小さく球状に巻きますが、基本の形となるのでゆがまないように注意します。ガラスはつねに状態が変化しているので、一瞬一瞬が勝負です。
つぎに吹き竿から切り離し、整形窯であぶりながら、形を整えて口を広げていきます。とくに再生ガラスは冷めてかたくなるのが早いので、チームワークで作業をおこないます。できあがったら低熱窯で徐々に冷やします。瓶はふたと容器がかみあうように金剛砂(こんごうしゃ)でこすり、仕上げます。
琉球ガラスの現代とお手入れ方法
琉球ガラスは現在、昔と同じ再生ガラスで製造されているものと、新しい珪砂やソーダ石灰でつくられているものがあります。再生ガラスは製造時のとりあつかいの難しさや、材料となる廃棄ガラスの減少から継続が難しい側面があります。しかし温かみのある風合いに根強いファンがおり、伝統的な技術として残していこうとする職人も増えてきました。着色剤を使用したポップで鮮やかな色の製品も、観光客向けのお土産としてよろこばれており、これからの琉球ガラスの道筋を模索しています。
耐熱ガラスでないものは、電子レンジやオーブンなどの使用はできません。食洗器や乾燥機、冷凍庫に入れることも破損の原因になります。クレンザーや研磨剤入りのスポンジ、金属たわしなど傷がつくものはさけ、中性洗剤でやさしく洗いましょう。
琉球ガラスの見学・体験ができる場所
那覇市伝統工芸館
所在地 | 沖縄県那覇市牧志3丁目2-10てんぶす那覇2F |
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電話番号 | 098-862-1023 |
定休日 | 水曜日・年末年始(12/29~1/3)メンテナンス(1/3~1/20) |
営業時間 | 10:00~19:00 |
HP | https://kogeikan.jp/ |
備考 | 琉球ガラス体験 グラス2,700円~ 10:00~16:30 |
琉球ガラス村
所在地 | 沖縄県糸満市字福地169番地 |
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電話番号 | 098-997-4784 |
定休日 | 年中無休 |
営業時間 | 11:00~17:30 |
HP | https://www.ryukyu-glass.co.jp/ |
備考 | ガラス吹き体験1,870円~ |