三条仏壇とは
三条仏壇とは、新潟県三条市一帯で作られている金仏壇のことです。
京仏壇の構造に近いつくりで、基本に忠実な宮殿(くうでん)と、高度な技法で作られている金具装飾、金銀粉で彩られた繊細で優美な絵柄が特徴的です。
三条仏壇作りは地場産業として発展し、金仏壇のなかでも品質の良さが評価されていたこともあり、1980年に国の伝統的工芸品の指定を受けました。
既定の伝統技法を用いて作られている仏壇には、基準をクリアした証として、「伝統証紙」と「組合指定証紙」が貼られています。
「仏都三条」で生まれた三条仏壇の歴史
三条地方は、昔から仏教への信仰心があつく、「仏都三条」と呼ばれるほど仏教が盛んな地域でした。
地域産業の方では、江戸時代初頭は「金物の町」として有名でしたが、江戸時代中期には「仏壇作りの町」として有名になっていました。
なぜここまで仏壇作りが盛んに行われるようになったのかというと、大きな寺院の建設が関係しています。
三条地域では、1299年に本成寺、1690年には真宗大谷派三条別院(東別院)が建てられました。
本成寺は、日蓮を宗祖とする法華宗陣門流(ほっけしゅうじんもんりゅう)の総本山で、敷地面積が6000 坪あり、境内には本堂、客殿、鐘楼、千仏堂などの建物があります。
真宗大谷派三条別院は、親鸞を宗祖とする浄土真宗の寺院で、浄土真宗の門徒たちによって建てられました。
仏教寺院の主要な7つの建造物を備えた七堂伽藍(しちどうがらん)の三条別院は、「北陸随一の寺院」と称されるほど立派なお寺で、三条教区(新潟県中越・下越・佐渡地方)の中心となっています。
当時の三条地域では、これらの大規模寺院を建てるため、京都から優秀な宮大工たちが集められていました。そして、地元の職人たちと共に寺院の建設にあたっていたのです。
その際、寺院の建築技術と共に伝わったのが、仏壇作りの技術です。
なかでも、三条別院の存在は、仏教作りの普及に特に大きな影響を与えたと考えられています。
北陸随一と称される三条別院の完成により、浄土真宗信仰が広がり、金物の町として栄えていた地域は、仏壇作りの町として栄えるようになっていきました。
また、三条地域には信濃川が流れていて、原材料などを輸送しやすかった点も、仏壇作りが広がった理由の1つだといわれています。
三条仏壇の現代での使われ方とお手入れ方法
三条仏壇は、新潟・白根仏壇や長岡仏壇といった、同県内の仏壇作りとは異なり、7つの工程に分業して作り上げていきます。(白根仏壇、長岡仏壇は5つの工程に分けて作られています。)
仏壇の本体部分を作る「木地作り(きじづくり)」では、釘などを一切使用しないほぞ組みと呼ばれる技法でくみ上げていきます。
釘を使用せず、木材の接合部分を凸凹に加工してはめ込んでいるため、強度があり、見た目も美しく仕上がります。
本尊を置く宮殿部分を作る工程では、本山と東別院の宮殿を模して「枡組み(ますぐみ)」あるいは「肘木枡組み(ひじきますぐみ)」の技法が使われています。
また、三条仏壇は金具作りも特徴的です。
銅や真鍮(しんちゅう)、銅合金などの材料を、何種類ものタガネを使い分けた手打ち技法で加工していきます。
元々、金物産業で栄えていた三条市は、金物を加工する技術も優れていました。
そのため、職人たちが作る仏壇用の飾り金具は、ウロコや羽などの模様の細かさや、手作業とは思えないなめらかな曲線がとても魅力的です。
漆で絵を描き、その上から金粉などを蒔きつけて金銀の絵柄を表す蒔絵の工程では、「平蒔絵(ひらまきえ)」「錆上蒔絵(さびあげまきえ)」という技法が用いられています。
これらの製造技術を持つ職人のなかでも、特に高度な技術を持っている職人たちは伝統工芸士と認定されるのですが、三条仏壇作りに関しても各工程で伝統工芸士たちがいます。
三条仏壇作りの業界では、この伝統工芸士たちが中心となって、技術の伝承、後継者育成、新たな販路開拓の模索などが日々行われているのです。
三条仏壇の現代での使われ方とお手入れ方法
基本に忠実なつくりで、格式高い趣がある三条仏壇ですが、近年は新しい祈りのかたちの提案も行っています。
それは、『空壇(くうだん)』と呼ばれる、本来の仏壇とはまったく異なるかたちの仏壇を提案するというもの。
現代アートチーム「目」との共同プロジェクトにより完成した空壇は、壁にかけられるタイプの仏壇で、仏間など仏壇を置くスペースがない家でも、祈りの場を確保できるのが特徴です。
ほかにも、蒔絵の技術力を活かしたブローチやカラトリー、金具作りの技術力を活かした銅製タンブラーなど。
三条仏壇の技術力を、さまざまな場所で活かす取り組みも積極的に行われています。
三条仏壇の見学・体験ができる場所
燕三条Wing 燕三条駅観光物産センター
所在地 | 新潟県三条市下須頃502-3(JR燕三条駅2階) |
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電話番号 | 0256-34-7310 |
定休日 | 年末年始(12月30日~1月1日) |
営業時間 | 10:00~18:30 |
HP | http://www.tsubamesanjo.jp/wing/sale.html |
備考 | 燕三条の観光と産業の情報を発信している場所。三条仏壇、燕鎚起銅器、越後三条打刀など、伝統工芸品の展示販売も行っている。 |
山田仏壇店
所在地 | 新潟県三条市南四日町1-8-3 |
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電話番号 | 0256-32-4428 |
定休日 | お問い合わせください |
営業時間 | 9:00~19:00 |
HP | https://www.yamadabutudan.com |
備考 | 三条・燕・西蒲仏壇組合の理事長山田貴之氏(塗箔部門の伝統工芸士)が運営している仏壇仏具店。三条仏壇以外にも、壁掛けタイプの空壇など多種多様な製品を扱っている。 |