塩沢紬とは
塩沢紬(つむぎ)とは新潟県魚沼市の塩沢地方で作られている絹織物です。
茨城県結城市で生産される「結城紬」、鹿児島県の奄美大島で生産される「大島紬」に並び、日本三大紬として知られています。一般的には高級な着物に分類されており、昔から贅沢品として扱われていました。
塩沢地方は雪深く冬が長い豪雪地帯として有名ですが、機織りは外に出られない冬の時期の大切な収入源でした。また、冬の湿った空気が機織りに適していることも、塩沢紬などの絹織物が盛んになった理由の1つです。
塩沢地方には塩沢紬の他にも、「塩沢お召し」の名で親しまれる本塩沢や、透け感のある生地で作られた夏塩沢などがありますが、いずれも落ち着いた雰囲気が特徴の上品な着物です。
塩沢紬は複雑で気の遠くなるような作業から生まれます。職人技あってこその伝統工芸品であるため、現代では塩沢紬の生産量は減っている傾向にあります。
越後上布の後を継いだ塩沢紬の歴史
塩沢紬が発祥する前、塩沢地方では麻織物の技術が盛んでした。この麻織物とは「越後上布」のことです。今では幻の織物だといわれるほど貴重な越後上布ですが、当時は非常に多くの生産量を確保していたといわれています。今でも奈良県の正倉院には、1200年以前に織られたとされる越後上布が保存されているそうです。
この越後上布の技術を取り入れて作られた絹織物が塩沢紬で、江戸時代中期ごろから生産が始まったと伝えられています。だんだんと麻織物の需要がなくなると同時に塩沢紬は注目されるようになりました。大正時代には麻織物よりも生産量が多くなったといわれています。
1975年、経済産業省により伝統的工芸品に指定され、今でも高級品である日本三大紬として広く知られています。
独特な気品や落ち着きを演出する塩沢紬の特徴
塩沢紬は、たて糸に生糸や玉糸、よこ糸に真綿の手紡糸(てぼうし)を使用します。塩沢紬の最大の特徴は、たて糸によって表現される非常に繊細な絣(かすり)模様です。絣模様とは、生地を織る前の糸の段階で、染め分けされた絣糸を組み合わせた柄のことを指します。織りなす模様の輪郭がかすれたように見える点が特徴です。
塩沢紬には、蚊絣・亀甲絣・十字絣など、さまざまな絣模様が織りなされた着物があります。高級感の強い結城紬や大島紬とは異なり、気品のある渋めな印象も塩沢紬のポイントといえるでしょう。
表面に細かいシボ状の風合いを出し、着物として着用する際は滑り止めのような効果を発揮します。そのため、着崩れを起こしにくく、身体馴染みが良い面も塩沢紬ならではの特色です。
すり込みや括りと呼ばれる特徴的な製作過程を含め、塩沢紬の製作工程は気の遠くなるような作業の積み重ねです。職人の丁寧さと根気強さによって生み出された塩沢紬は、独特な気品・落ち着きを印象付ける伝統工芸品として愛されています。
塩沢紬の現代での使われ方とお手入れ方法
塩沢紬は、高級品である結城紬や大島紬と肩を並べる伝統工芸品ですが、現代では「知る人ぞ知る」ような、やや”通好み”の着物です。着物の表面に細かいシボ状の風合いがあるため、薄手でザラザラとした手触りを感じられます。シーズンとしては夏の時期に好まれますが、四季を通じて愛用する人も少なくありません。
昔から、絹で作られた織物は贅沢品として富裕層に親しまれていました。しかし、紬は絹の中でも余り物であるくず繭を使用していた背景から、庶民が身にまとうカジュアルな着物に分類されています。そのため、格式の高いシーンには少々不向きな印象を持たれています。現代のイメージで表すのであればジーンズを履くような場面で着るものなので、気負うことのないカジュアルなシーンであれば着ていくことができるでしょう。
塩沢紬の中でも訪問着や色無地、紋がないものはおしゃれ着として認められている傾向にあります。場面を選んで塩沢紬を取り入れることがおすすめです。
塩沢紬のお手入れ方法は一般的な着物のお手入れ方法と同様です。着物は体温で生地が温まることや汗により湿気を纏った状態になることから、カビや黄ばみを生じやすくなります。着物を脱いだ後は風通しの良い場所で、着物を風に当てておきましょう。着物用のハンガーを用いて、一晩吊るしておけば問題ありません。特に湿気の多い時期などは十分な注意が必要です。
十分風にさらした後は、表面についてしまったホコリなどを清潔なタオルで落とします。摩擦が生じないように優しく行うことが重要です。また、保管場所も湿気の生じにくいタンスにし、定期的なチェックを行うようにしてください。
塩沢紬は非常に縮みやすい特徴があるため、シミができた場合は水を用いずに処理しなければなりません。お酒やお茶などをこぼした場合は、汚れが広がらないようハンカチで押さえ、専門家へ相談しましょう。醤油やソースなど色の濃いものをこぼした場合は、手を触れることなく早急に専門家へ相談してください。
塩沢紬の見学・体験ができる場所
塩沢つむぎ記念館
所在地 | 新潟県南魚沼市塩沢1227-14 |
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電話番号 | 025-782-4888 |
定休日 | 年末年始 |
営業時間 | 9:00〜17:00 |
HP | http://www.city.minamiuonuma.niigata.jp/kanko/kanko_museum/experience/1455872593667.html |
備考 | 塩沢紬の工芸品展示、販売や製作工程の見学・織物アート体験ができます。 |
なぐも織 展示室
所在地 | 新潟県南魚沼市塩沢1172番地6 |
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電話番号 | 025-782-1147 |
定休日 | 年末年始 |
営業時間 | 9:00~17:00 |
HP | http://www.tsumugi-kan.jp/memorialhall/buy.html |
備考 | 機織り体験・織物アート体験・織工房見学などができます。 |