庄川挽物木地とは
庄川挽物木地(しょうがわひきものきじ)とは、主に富山県高岡市や砺波市、南砺市などで作られている伝統工芸品です。挽物とは木材をロクロなどで削りだし、椀や盆などに加工した製品のことをいいます。
かつて庄川で行われていた木材運搬の事業で集まった木材を木地(きじ)に加工、売り始めたことが庄川挽物木地の始まりといわれています。
天然の木材を職人がロクロで丁寧に削りだした木地の器は、杢目の美しさと使い込むほどに醸し出す風合いで高い人気を誇る工芸品です。
庄川に育まれた庄川挽物木地の歴史
庄川挽物木地(しょうかわひきものきじ)が作られるきっかけとなったのは、1570年頃から行われていた流木事業でした。加賀藩の御用木を庄川を使って運搬し、庄川町青島に構えられた貯木場へ集めるという事業です。この事業によって、庄川町は北陸一の木材集積地となりました。
こうして材木業が盛んになった庄内町で、1860年頃に越後屋清次という職人がロクロ木地の工房を開いたのが庄川挽物木地の始まりです。それ以前から庄川町にはロクロ師がいたという説もありますが、ロクロ木地の技術を広めたのは越後屋清次だといわれています。
いずれにしても150年以上の歴史を持つ庄川挽物木地は、庄川の豊かな自然がもたらした恵みといえます。
江戸末期に生産が始まった庄川挽物木地は、明治時代に入ると更に発展を見せました。「報恩講(ほうおんこう)」と呼ばれる法要のために、お椀を揃える人が増えたのです。需要が増幅したことによって、「木地師(きじし)」と呼ばれる専門の職人も増えていきました。
木地師になるための道のりは険しく、当時は小学校を卒業すると同時に職人の元へ弟子入り。独り立ちするまでには10年以上の月日を要します。このようにして受け継がれ進化し続けた木地師の技が、現在の庄川挽物木地を作り上げたのです。
こうした職人たちの技術と歴史が認められ、庄川挽物木地は1978年に経済産業大臣指定の伝統的工芸品に認定されました。
庄川町は2004年に砺波市と合併し、現在も高岡市や南砺市に並ぶ全国有数の庄川挽物木地の生産地となっています。
「使い手のための器」と評される庄川挽物木地の魅力
庄川挽物木地(しょうかわひきものきじ)の魅力は何といっても、その杢目の美しさです。原木を横木で加工するため、同じ木から切り出した木地でも杢目が異なります。それを職人が手作業で挽きあげることによって、温かみのある唯一無二の挽物木地となるのです。
庄川挽物木地の種類は、磨きをかけた「白木地(しらきじ)」と「拭き漆」を施したものに分けられます。
特に白木地の製品は、庄川挽物木地の中でも特徴的な製品として人気があります。一般的な木地は、漆などで塗装を施し製品となります。一方、白木地製品は丁寧に磨き上げるのみで漆などを一切塗布しません。
そのため、空気に触れることによって木材の色、そして艶が変化するのです。でき上がったばかりの白木地は木材本来の色をしていますが、5年ほど使うと漆を塗ったような高級感のあるこげ茶へと変わっていきます。変化を楽しみながら使用できるのは白木地製品の最大の魅力といえます。
白木地製品は、使い続けていくことで完成されていく「使い手のための器」なのです。
また、拭き漆を施した製品は漆特有の深い色調が魅力的です。色を付けることによって、木材のもつ杢目の美しさが際立ちます。
白木地も拭き漆も、ともに甲乙つけがたい製品であることは間違いありません。
庄川挽物木地は原木の乾燥から木地の仕上げまで1年。木材や職人によってはそれ以上を要することもあります。それだけの歳月をかけ丁寧に作られた製品は、どれも職人のぬくもりが感じられる、唯一無二の作品なのです。
庄川挽物木地の現代での使われ方とお手入れ方法
丈夫で使うほどに味わいを増す庄川挽物木地は、普段使いの椀や盆として昔から親しまれています。
最近では木材の保温性に着目した、タンブラーやマグカップなどの加工品も人気があります。ほかにもカッティングボードやティーポットなど、柔軟な発想で和食器以外の製品が生み出されています。
更には、オリジナリティを求める愛好家やアーティストのために、磨きをかけるまえの白木地を販売している工房もあるようです。それぞれ好みのカラーリングや彫刻をするなど、楽しみ方はさまざまです。
丹念に乾燥させ、磨き上げられた庄川挽物木地のお手入れは非常に簡単です。
直射日光を避け、時々ほこりを拭くだけ。天然の木材を使用しているため長年使用すると多少の歪みなどが出ることはあるものの、割れたりすることはほぼないそうです。
普段使いをするにあたって、お手入れが面倒でないのはうれしいポイントです。
庄川挽物木地の見学・体験ができる場所
庄川水記念公園
所在地 | 富山県砺波市庄川町金屋1550 |
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電話番号 | 0763-82-5696 |
定休日 | 年末年始 |
営業時間 | 9:00~18:00(12月末から翌年2月末まで16時閉館) |
HP | https://mizukinen.com/tokusankan.htm |
備考 | 敷地内の特産館にて庄川挽物木地の販売、展示、実演などを行っています。 |
わたなべ木工芸
所在地 | 富山県南砺市福光6230-1 |
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電話番号 | 0763-52-0497 |
定休日 | 不定休 |
営業時間 | 10:00~17:00 |
HP | https://www.urusitoki.jp |
備考 | 伝統的な和食器のほかにも、ボールペンやパン皿のような作品を販売しています。営業日でも店舗近くの工房で作業をしている場合があるので、来店前に電話必須です。 |