高岡漆器とは
高岡漆器とは、富山県高岡市で作られている漆器です。高岡漆器の中には表面に貝殻を使った特殊な装飾がほどこされ、青い光を淡く放つものも。その加飾方法の繊細さ、凛とたたずむ美しさなどから、多くの漆器愛好家をとりこにし続けています。
現代でも産業として発展し続け、海外での評価も高い高岡漆器。国内外の展示会へ積極的に出展し、販路拡大へ繋げています。
高岡漆器の歴史と職人の意地
高岡漆器のはじまりは1609年、加賀藩の2代藩主であった前田利長が高岡城を築いた頃といわれています。
利長は城下町に職人を集め、武具のほかにも箪笥や膳といった生活用品を作らせました。高岡城自体はわずか5年ほどで廃城になりますが、城下町の職人たちはそのまま残り、日用品をはじめ優れた工芸品を創り続けることになります。
その後、朱や黒の漆を何層も重ね塗りしながら彫刻を加える、「堆朱(ついしゅ)」や「堆黒(ついこく)」といった中国の技法を積極的に取り入れ、徐々に独特の工芸文化を形成していきます。
江戸時代中期頃になると、名工として活躍した辻丹甫(つじたんぽ)により「彫刻塗」が編み出されました。また、江戸時代末期には、中国・明代の漆器を研究していた石井勇助(いしいゆうすけ)が「勇助塗」を創出。その後の高岡漆器を特徴づける代表的な技法が、続々と考案されていきます。
明治時代に入ると、錆入れ(さびいれ)や螺鈿(らでん)といった多彩な加飾技法が生み出され、漆器の一大産地にまで成長。このような伝統的な技法の伝承が評価され、1975年には国の伝統的工芸品に指定されることになったのです。
塗りの技術が際立つ高岡漆器の特徴
高岡漆器は主に3つの代表的な技法によって支えられ、それぞれには独特の特徴があります。
1つ目は、「彫刻塗(ちょうこくぬり)」。
彫刻塗は模様を手彫りした木地に、雷文や亀甲の地紋を加えます。木地に彫られる模様は、草花や鳥獣をはじめ、牡丹や孔雀、さらには青海波など。その上に、朱や黒などの漆を塗り重ねて仕上げていきます。木彫りが浮き出るような立体感と、独特の光沢感が特徴的な技法です。
2つ目は、「青貝塗(あおがいぬり)」。
青貝塗は、貝殻の光沢のある部分だけを薄く削り取り、菱形や三角形などの細片である「青貝」を作り出すところからはじまります。さらに、青貝同士を組み合わせながら、漆塗りの上に花鳥風月などの絵柄を加飾。
一般的に、このような技法は「螺鈿」と総称され、通常は約0.3ミリの厚さの貝が素材に使用されます。しかし、高岡漆器の場合には、さらに薄い貝を使用。その薄さは、なんと約0.1ミリというから驚きです。
このような螺鈿細工により、下地の漆が透けて見えると同時に、貝片の光沢が青白く輝いて見えるという、高岡漆器独自の特徴が生まれます。
最後の3つ目は、「勇助塗」と呼ばれる技法です。
中塗りや上塗りをした木地の上に、唐風の意匠を追加。さらに、花鳥風月や人物などを錆漆で描いたり、箔絵や玉石などをほどこしたりします。唐風の優雅な雰囲気と、和風の繊細な装飾が相まって、格調高く趣のある高岡漆器が仕上がります。
高岡漆器の現代での使われ方とお手入れ方法
高岡漆器は食器やお盆をはじめ、化粧道具から重箱まで、日常生活のあらゆるシーンで利用することができます。和小物や箸・箸置きは多くの人が手に取りやすく、購入はもちろん、体験コーナーとしても人気が高いです。
ただし漆器である以上、お手入れなどを含め、使用する際にはいくつか注意が必要です。
まず、漆器は紫外線に弱いため、陽の当たる場所に長時間放置するのはやめましょう。直火はもちろん、電子レンジやオーブンに入れるなど、極端に温度が高い状態も避ける必要があります。
さらに漆器はキズが付きやすいことから、お手入れの際には、タワシや磨き粉の使用は控えてください。ほかの陶磁器や金属などの食器とは重ねず、柔らかいスポンジで洗う・柔らかい布で丁寧に水気を拭き取るようにしましょう。
高岡漆器を保管する場合には、直射日光の当たらない棚などへ。使用頻度がそれほど多くない場合は、薄い布や揉み紙の袋で包んでから箱などに入れます。気温と湿度の安定した場所に保管すると、次に使用するときまで綺麗な状態を保つことが可能です。
万が一、ヒビが入ったり、割れてしまったりしたときには、購入元へ修理の相談・依頼をしてみてください。頑固な汚れも落として、綺麗に塗り直してくれる工房もあります。ただし、修理には数か月以上の期間を必要とする場合が多いため、スケジュールには余裕をもって早めに相談しましょう。
高岡漆器の見学・体験ができる場所
公益財団法人 高岡地域地場産業センター
所在地 | 富山県高岡市御旅屋町101 御旅屋セリオ2階 |
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電話番号 | 0766-25-8283 |
定休日 | 毎週水曜日、年末年始(12月29日~翌年1月3日) |
営業時間 | 10:00~18:00 |
HP | https://www.takaokajibasan.or.jp/ |
備考 | 漆器体験教室3,000円~ |
有限会社 武蔵川工房
所在地 | 富山県高岡市地子木町 1-23 |
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電話番号 | 0766-26-0792 |
定休日 | 土・日・祝日 |
営業時間 | 9:00~17:00 |
HP | https://raden-musasigawa.com/ |
備考 | 螺鈿体験・見学あり |