高山茶筌とは
高山茶筌(たかやまちゃせん)とは、奈良県生駒市高山町にて生産されている茶筌です。
誕生当時から変わらず、今でも全部の工程を手作業でおこなっている高山茶筌。なんと全国の茶筌のほとんどがこの高山茶筌なのだそうです。
茶筌とは、茶道でお茶を点(た)てるときに使うもの。一般的には材料に竹を使用しますが、最近では金属やプラスチックの茶筌も出てきています。
高山茶筌に使われているのは「淡竹(ハチク)」「黒竹(クロチク)」「煤竹(ススタケ)」の3種類です。
加工しやすい淡竹は、煮沸して油抜きをし、天日干しで白くした白竹を使います。この天日干しは、高山の風物詩でもあります。
黒竹は2年ほどで幹が黒くなる竹のことで、煤竹は長い年月をかけて自然に燻った色に変化した茶褐色や飴色の竹のことです。
それぞれの竹を流派ごとに使い分け、数種類の高山茶筌を作ります。
茶道のお茶を点てて振る舞う一連の芸道は日本を代表する文化となり、世界中にも知られるようになりました。
秘伝の技として伝えられた高山茶筌の歴史
高山茶筌の始まりは室町時代の中期です。
侘茶(わびちゃ)の創始者ともいわれる茶人・村田珠光(むらたじゅこう)が依頼し、鷹山民部丞入道宗砌(たかやまみんぶのじょうにゅうどうそうせつ)が苦心の末に作り上げたといわれています。
宗砌が作った茶筌は後土御門天皇(ごつちみかどてんのう)に気に入られ、「高穗」の名を賜り、「高穗茶筌(たかほちゃせん)」と呼ばれるようになりました。
その後、地名・家名を「高穂」にちなみ、「鷹山」から「高山」にあらためられたと伝えられています。「高穗茶筌」が「高山茶筌」に変わった経緯・時期などはわかっていません。
茶筌の製造技術は、高山一族において子どものなかの1人にだけ伝えていく一子相伝(いっしそうでん)のかたちで代々引き継がれていきました。
茶道は千利休によって確立され、茶筌の生産もますます盛んになっていきます。後に高山一族の家臣16人にも技法が伝えられ、流派の違いによるさまざまなかたちの茶筌が考案されました。
昭和に入っても一子相伝は続けられましたが、人手不足により伝統の技術は一般に公開されるようになります。戦後は多くの業者が茶筌産業に参入し、高山の茶筌作りはますます栄えていきました。
伝統を引き継いで、全国で唯一の茶筌作りの里として発展してきた高山。今でもほとんどの茶筌がこの高山で作られています。
そんな歴史ある高山茶筌は、1975年に経済産業大臣によって国の伝統的工芸品に指定されました。
お茶の味を左右する高山茶筌
高山茶筌の特徴は、流派やお茶の種類によってさまざまな種類の茶筌が作られていることです。
たとえば、表千家に使われる「煤竹茶筌」や武者小路千家・山田宗徧流に使われる「黒竹茶筌」などがあり、その数は60種類以上といわれています。
茶筌によってお茶の味わいも微妙に異なってくることから、茶道において茶筌はとても大切な道具です。
茶筌は、原竹(げんちく)を必要なサイズにカットし、穂先となる部分を割ったり裂いたりして作っていきます。
穂先を丸くする作業「味削り(あじけずり)」は最も難しく、茶筌を作る過程のなかでも特に重要視されている工程です。この作業でお茶の味が決まってきます。
長い歴史のなかで、努力と研究を重ねて完成した高山茶筌の技術。「指頭芸術」ともいわれるその繊細な職人芸は、国内外から高い評価を得ています。
高山茶筌の現代での使われ方とお手入れ方法
高山茶筌は、昔も今も変わらず茶道の場で使われています。
千利休によって確立された茶道は、日本を代表する文化として世界でも有名。お茶を味わうだけでなく、心を落ち着かせ、その場の空気感をも堪能することができます。
決められた作法や礼儀があるためハードルが高いと思われるかもしれませんが、茶道は日本ならではのわびさびの精神やおもてなしの心を学ぶことができる最高の文化です。
現在は中学・高校の部活や習い事としても人々に親しまれています。
そんな茶道で必要となる茶筌には正しいお手入れが必要です。
新しい茶筌を使い始めるときは、水洗いをしてお湯に通します。使った後は食洗機や洗剤を使わずに、水を溜めた容器のなかで振り洗いをしてください。
直射日光が当たらない場所で自然乾燥させたら、温度変化のない冷暗所で保管します。
穂先が折れてきたときが買い替えの目安です。茶筌は消耗品になるので修理はできません。長く使えるようにきちんとお手入れして使っていきましょう。
高山茶筌の見学・体験ができる場所
翠華園 谷村弥三郎
所在地 | 奈良県生駒市高山町5725 |
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電話番号 | 0743-78-0053 |
定休日 | 不定休(土日祝日) |
営業時間 | 平日9:00〜15:00 |
HP | http://www.yasaburo.com/ |
備考 |
【茶筌作り体験(要予約)】 【茶筌制作工程見学(要予約)】 |
生駒市高山竹林園
所在地 | 奈良県生駒市高山町3440 |
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電話番号 | 0743-79-3344 |
定休日 | 年末年始(12月27日〜1月5日) |
営業時間 | 9:00〜17:00 |
HP | https://www.tikurinen.jp/ |
備考 |
【茶筌制作実演】 その他お抹茶体験もおこなっています。 |