東京銀器とは
東京銀器は、東京都で生産されている金属工芸品です。大東区、荒川区、文京区などで作られており、日本の代表的な伝統工芸品として、海外でも高く評価されています。
伝統的に使用されている原材料は、高純度の銀です。地金に使われる銀の純度は、92.5%以上。質の高い銀には優れた耐久性があり、長く使える銀器として、多くの人から愛されています。
平安時代から続く東京銀器の歴史
日本の銀器の歴史は、平安時代まで遡ることになります。当時の法令などが記された書物『延喜式(えんぎしき)』の中に、銀製の食器についての記載があるのです。このことから、延喜式が書かれた916年には、すでに銀器が使われていたことがわかります。
ただし、本当の始まりは定かではありません。鉱山が多い日本では、平安時代よりも前から、貴重な素材として扱われていた可能性があります。
日本の銀器は、平安時代以降も生産が続けられ、徐々に進化していきました。より本格的な生産がスタートするのは、室町時代以降。各地で銀山が発見され、西洋から新たな精錬法が入ってきたことで、多くの銀製品が作られるようになったのです。
江戸時代中期になり、より経済が発展していくと、銀製品の需要はさらに増えることになります。銀が装飾品として好まれるようになり、多くの町人が銀器を使い始めたのです。
増え続ける需要に応えるため、生産も活発になっていくと、東京は銀器の産地として知られるようになりました。この時期が、東京銀器の始まりとされています。
当時の銀器作りでは、銀師(しろがねし)、金工師(きんこうし)と呼ばれる職人が活躍しており、多彩な作品が次々に登場。1867年に開催されたパリの万国博覧会では、日本の職人が手掛けた作品も出品されています。完成度の高い銀製品は、ヨーロッパの人々からも高く評価され、多くの注目を集めました。
外国人との交流が増えた戦後は、海外での需要もさらに多くなります。日本の職人は、欧米のスタイルも貪欲に吸収し、それまでは考えられなかった新しい作品を生み出していきました。多様性を獲得した日本の銀器は、その後も進化を続け、現在の東京銀器へとつながっているのです。
銀の魅力を凝縮した東京銀器の特徴
東京銀器は、銀特有の美しさが魅力です。手作業で丹念に作られる銀器は、優雅な輝きを放っており、日常生活で使うだけでなく、じっくりと観賞して楽しむこともできます。
職人が熟練の技術で施す装飾も、美しさのポイント。模様つけ用の金づちを使い、丸槌目(まるつちめ)、茣蓙目(ござめ)、岩石目(がんせきめ)といった伝統的な模様を刻みこんでいきます。
アンティーク風の美しさを求める人たちからは「古美(ふるび)」という仕上げ方法が人気。空気中の硫化ガスに反応し、銀の光沢が失われる現象を利用したものであり、通常の銀器とは違った雰囲気を出せる技法です。古美には変色を防止する効果があるため、独特の色を長く楽しむことができます。
また、非常に長持ちするため、長期間愛用する人が多いことも特徴のひとつです。生活の中で頻繁に使っていても、簡単には劣化しません。
東京銀器の高い耐久性の秘密は、硬質な金属を少しだけ加えること。実は、純度100%の銀は、それほど頑丈ではありません。柔らかいため、加工はしやすくなりますが、劣化しやすいデメリットがあります。しかし、硬質な金属を加えることで、より丈夫な銀器を作ることができるのです。
職人の手による美麗な装飾は、長く使うほど味が出てくるため、高い耐久性は重要な要素。使い込んだ東京銀器は、模様の凸凹が手になじみ、より深い魅力を発揮するようになります。
東京銀器の現在とお手入れのコツ
銀を材料とする東京銀器は、人体に悪影響を与える心配がほとんどないため、幅広い用途の製品が作られています。食器や置物、装身具のほかにも、耳かきやベビースプーン、菓子切など、その種類はさまざまです。重厚な輝きは、長く使っても色褪せることがなく、記念品や贈答品としても選ばれています。
アジア圏では、やかんや急須にも用いられており、絶大な人気を獲得。職人のこだわりが詰まった高品質な作品の数々は、現在も世界中のファンを魅了しているのです。
美しい東京銀器をより長く使っていくためには、日頃から丁寧に手入れをしておくことが大切。汚れが付着した場合は、きちんと洗い流しましょう。食器の場合、マヨネーズやドレッシングで変色することも多いので、注意が必要です。
洗った後に水の跡が目立たないようにするには、ぬるま湯を使い、水分を早めに拭き取ることがポイント。洗剤が残らないよう、すすぎも念入りに行ってください。
変色を防ぐためには、ガス調理機の近くに置くことを避けましょう。ガスの影響を受けると、表面が黒ずんでくることがあります。
保管の際には、柔らかい布で包み、ジップ付きのビニール袋などで密閉する方法がおすすめ。銀は大気中の硫黄化合物でも変色するため、美しさを保つには、空気との接触を避けてください。
布で包む理由は、袋のポリエチレンが原因となる変色を防ぐため。銀はラップでも変色する可能性があるので、保管の際は布を使うようにしましょう。
長く使わない銀器でも、しっかり対策をしたうえで保管すれば、またきれいな状態で使うことができます。
東京銀器の見学・体験ができる場所
株式会社浅野工芸
所在地 | 東京都足立区中央本町5-12-8 メゾンクレール1F |
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電話番号 | 03-6806-3131 |
定休日 | 土・日・祝日 |
営業時間 | 8:30~17:30 |
HP | https://asanokogei.wixsite.com/website |
備考 | 仏具、茶器、優勝カップ制作の見学、ぐい呑作りの体験 |
有限会社日伸貴金属
所在地 | 東京都台東区三筋1-3-13 伊藤ビル1F |
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電話番号 | 03-5687-5585 |
定休日 | 土・日・祝日 |
営業時間 | 9:00~17:00 |
HP | https://www.nisshin-kikinzoku.com/ |
備考 | オリジナル銀器製作の体験 |