東京染小紋とは
東京染小紋(そめこもん)とは、その名の通り東京で作られている染め物です。江戸独特の粋な心を表現し、発展してきた染め物として知られています。小紋は染め物の中でも特に繊細で、小さな柄で構成された模様を繰り返し描いて作られているのが特徴です。
パッと見たときには華やかな印象は感じられませんが、よく見ると江戸らしい粋な雰囲気や美しさが感じられます。京都などで作られているような色鮮やかで華やかなものとは少し異なり、控えめでありながらも繊細な美しさを誇る染め物といえるでしょう。
東京染小紋は手作業で染められているため、奥行きを感じられるのも魅力のひとつです。遠目で見るとまるで無地のように見えますが、近づくほどにその美しさが感じられます。単色で染めて作るシンプルなものはもちろん、複数の色や柄で染めた作品も多いです。
最近ではネクタイやスカーフ、ハンカチなどのさまざまなアイテムに幅広く使用されています。東京染小紋は小さな模様を細かく描くからこそ、少しの狂いも許されない熟練の技が必要な工芸品です。
日本の中心「江戸」で洗練された東京染小紋の歴史
江戸の粋が表現された染め物である東京染小紋は日本の中心地である東京で進化し、洗練されてきました。東京染小紋の歴史は古く、1600年代頃の江戸時代にまでさかのぼります。
東京染小紋の起源は江戸時代、室町時代に発祥した小紋型染めと呼ばれる技法といわれています。当時は染め物を大紋型染め・中型染・小紋型染めなどと分けて呼んでおり、その中でも模様や柄の小さなものを小紋型染めと呼んでいました。
【江戸の武士たちによって発展】
江戸の武士たちが小紋染めを裃(かみしも)の染め模様として採用し、江戸での需要が増えたのがきっかけで小紋染めが徐々に発展していきます。さらに時代が進んで江戸に町人文化が栄える時代になると、小紋は武士階級のみならず商人など庶民の着物にも広く浸透しました。
この頃には庶民のおしゃれには欠かせない染め物とされていたそうです。
【江戸時代後期から明治に大きく発展】
元々の小紋は武家それぞれの柄を近くで見ないと分からないくらい細かく表したものでしたが、庶民はさらに小さい柄や新しい柄を取り入れるようになります。それらの小さな柄が描かれたものを、「江戸小紋」と呼ぶようになりました。
明治時代には小紋模様の種類はさらに増え、華やかな女性の着物として磨き上げられました。現在ではこのような江戸小紋から派生した柄の自由度が高いものも含めて、「東京染小紋」と呼んでいます。1974年に国の伝統的工芸品に指定されました。
江戸の品格を表すかのような小粋でシックなこの染め物は、現在も東京で活動する職人たちにしか生み出せない高度な技術の結晶です。
遠目では無地に見えるほど細かな模様が特徴
東京染小紋は高品質な伊勢の型紙を使い、東京で染め師により型付け・染色されたものを指します。小紋の柄は非常に細かい点や線で作られるのが特徴で、1寸(約3cm)平方に千個以上の穴をあけるものもあるほどです。
シンプルなパターンを繰り返して作られる模様は、遠目からは無地に見えるほど精緻であり、色みは1~2色程度に抑えられています。そのため、現代の人から見てもミニマルでモダンな印象があります。
【柄が細かいほど格が高い】
また、東京染小紋は柄が細かいほど格が高いとされており、職人たちにも細かさを極めた高い技術が求められます。細かな柄を均一に染め上げるのは非常に難しく、限られた職人にしか作れません。
小紋柄は長い反物に1つの型紙をずらしながら染めていきますが、型紙をずらすときに自然なつなぎになるようにしたり、むらのない均一な柄を付けられたりするのが一流の職人の腕前です。
【和装以外でも活躍】
東京染小紋は和装だけにとどまらず、さまざまなシーンで活躍しています。染め物といえば着物を思い浮かべますが、最近ではスカーフやネクタイといった洋装にも組み合わせられる商品も増えてきました。
現代での使われ方とお手入れ方法
小紋柄は遠くから見ると無地のように見えますが、近くで見ると細かい模様に気づくというシンプルなのに贅沢な模様染めです。シンプルだからこそ、着るシーンや使い方には注意が必要です。着物として着る場合には、江戸小紋と東京染小紋の違いを知る必要があるでしょう。
江戸小紋は江戸時代から続く伝統的な模様のものを指し、江戸小紋の中でも比較的新しく遊び心のある柄のものは東京染小紋となります。江戸小紋の中でも模様の細かいものは特に格が高いとされ、「鮫柄」「行儀」「通し」は江戸小紋三役と呼ばれる最も格の高い柄です。
江戸小紋は、紋を入れ、合わせる帯を選べば結婚式などで略礼装として着用しても問題ない着物となります。一方、より柄の自由度が高い東京染小紋は、カジュアルなお出掛けに使うのがおすすめです。
歌舞伎鑑賞や料亭での食事にはもちろん、三角形をモチーフにした「鱗」柄などモダンな幾何学模様の東京染小紋ならば、ジャズクラブへ出掛けるなどの洋風なシーンでも個性を発揮してくれます。
染め物はお手入れが難しいイメージがありますが、基本的には優しく手洗いすればOKです。洗濯機で洗う場合は色落ちする可能性があるので、白いものと一緒に洗わないなどの工夫が必要になります。
東京染小紋の見学・体験ができる場所
江戸小紋博物館(大松染工場)
所在地 | 東京都墨田区八広2-27-10 |
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電話番号 | 03-3611-5019 |
定休日 | 土・日・祝日(見学の際は要連絡) |
営業時間 | 13:00~17:00 |
HP | https://edokomon-daimatsu.com/ |
備考 | 見学、体験 |
江戸小紋染工房小林染芸
所在地 | 東京都板橋区高島平7-40-5 |
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電話番号 | 03-3939-2861 |
定休日 | お問い合わせください |
営業時間 | お問い合わせください |
HP | https://www.edokomon-somekoubou.com/ |
備考 | 見学、体験、オンラインショップ |