山形仏壇とは
山形仏壇とは、山形県で生産されている金仏壇のことです。
1980年に、日本の伝統的工芸品に指定されました。
山形仏壇は、自然素材の温かさを感じる木目を生かした漆塗りに加え、躍動感あふれる彫刻や、錺金具(かざりかなぐ)、蒔絵が、華やかさと堅牢さを演出しています。
この山形仏壇作りを最初にはじめたのは、江戸で彫刻技術を学び、その技術を携えて山形に戻ってきた星野喜兵衛だといわれています。
江戸時代に生まれた山形仏壇の歴史
山形仏壇のはじまりは、江戸時代中期にまでさかのぼります。
江戸の浅草で後藤茂兵エ門に弟子入りした星野喜兵衛は、木彫りの彫刻技術を学んだ後、山形に戻ってきて欄干や仏具の製作をはじめました。
その後、同じく江戸に行き、彫刻技術を学んで山形に戻ってきた2代目喜兵衛のもとには、漆塗りを生業とする塗師や、蒔絵師、錺金具職人など、各分野の職人たちが集まりました。
山形県は元々良質な樹木が多く、漆業や木工業が盛んな地域でした。
また、最上川舟運の発達により、大阪や京都などの文化や職人技が伝わってくるようになったため、高い技術力をもつ塗師や蒔絵師が多く存在していたのです。
そこで、これまで欄干や仏具を作ってきた喜兵衛は、各分野の職人たちをとりまとめ、仏壇作りに取り組んでいくことになりました。これが、山形仏壇作り産業化のはじまりです。
仏壇作りが、山形の地場産業として確立された背景には、山形ならではの地域性も関係していたとされています。
山形には、月山(がっさん)・羽黒山(はぐろさん)・湯殿山(ゆどのさん)といった出羽三山への信仰など、昔から信仰心の篤い人が多かったこともあり、仏壇作りは地域の人たちに受け入れられ、発展していったのです。
明治時代に入った頃には、仏壇作りは山形を代表する重要な地場産業にまで成長していました。
そこで職人たちは、山形仏壇を量産するため、「木地(きじ)、宮殿(くうでん)、彫刻、塗装、金具、蒔絵、箔押し・仕組」の7工程に分けて分業体制を整えました。
分業制にすることで、各工程を担当する職人たちの技術力はさらに高まり、後継者もしっかりと技術力を身につけることが可能になります 。
明治以降は、金箔を使わないシンプルな見た目が特徴的な唐木仏壇が流通するようになりましたが、山形仏壇は金仏壇の製造を続け、1980年に伝統的工芸品の指定を受けました。
これらの過程を経て作られ続けてきた山形仏壇作りの伝統技術は、今も脈々と受け継がれ、金仏壇の伝統工芸品に指定されるほど、高い品質を維持し続けています。
近年では、住宅様式に合わせた仏壇作りや、山形県産の材木のみを使った仏壇製作に挑戦するなど、協同組合をあげて山形仏壇と、産地の需要開拓に取り組んでいます。
分業制で作られていく山形仏壇の特徴
山形仏壇は、木造箇所を作る「木地(きじ)」からはじまり、黄金に輝く仏壇へと仕上げる「箔押し・仕組」まで、全部で7つの工程を経て完成します。
山形仏壇の特徴ともいえる宮殿は、釘や接着剤などを一切使わず、木材のみで強固に組み上げていく桝組で作られていきます。
とても細かく作りこまれた宮殿は、山形仏壇の堅牢さを如実に見て取ることができます。
そして、山形仏壇の華やかさを演出する彫刻の工程では、欄干などに菊や牡丹、鳳凰や鶴、天女といった柄が彫刻されます。
また、金具も独特で、特殊加工された黒金具が使用されている点も山形仏壇の特徴です。
本体に漆を塗る工程にも、山形仏壇の特徴があります。
金仏壇は通常、黒漆を塗って仕上げるのですが、山形仏壇では木目を見せるため、塗っては研ぐという作業を何度も繰り返して仕上げていきます。
漆で塗装された上に、図柄を描き、金銀粉を蒔いて絵を完成させる「蒔絵」では、模様を盛り上げて立体感を出す「盛り上げ蒔絵」を採用。
この点も、山形仏壇の特徴といえます。
山形仏壇の現代での使われ方とお手入れ方法
山形仏壇は、伝統的な様式と堅牢なつくりが特徴的ですが、住環境の変化などに合わせ、現在はさまざまな種類の仏壇が作られています。
和室や洋室どちらにも合わせられるデザインのものや、サイズのバリエーションも豊富になっています。
時代のニーズに合わせて柔軟に対応してきたからこそ、300年もの間、人々に愛され、作り続けられてきたのです。
また、宗派によって形も違うため、「山形仏壇」には本当にさまざまな形のものが存在しているのです。
さらに、最近では、仏壇作りとは異なる分野でも、その高い技術力を発揮。
山形仏壇作りで彫刻の工程を担当している彫刻師によって、鳥や花など、仏壇に彫られる柄をモチーフにしたブローチなどのアクセサリー類が販売されています。
職人によって彫られれた木のブローチは、素朴な色味とやわらかい質感が魅力的で、見ているだけでホッと安心するような温もりを感じます。
このように、山形仏壇作りで培われてきた技術力は、時代の流れと共に、仏壇作り以外の場にも広がりを見せているのです。
山形仏壇の見学・体験ができる場所
山形市産業歴史資料館
所在地 | 山形県鋳物町10番地 |
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電話番号 | 023-643-6031 |
定休日 | 日曜、祝日、第2・第4土曜日、年末年始 |
営業時間 | 8:30~17:00 |
HP | http://www.city.yamagata-yamagata.lg.jp/shisetsu/sub2/shisetsu_kankobunka/2844d7df4bb2cb50.html |
備考 | 山形県の主な伝統工芸品や、産業史料を見学できる。 |
小嶋源五郎本店
所在地 | 山形県山形市旅篭町1丁目12番38号 |
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電話番号 | 023-641-1700 |
定休日 | 不定休 |
営業時間 | 9:00~18:00 |
HP | http://gengorou.co.jp/ |
備考 | 創業100年で、仏壇仏具を専門に扱っているお店。 |