岐阜提灯とは
岐阜提灯は、岐阜で作られる伝統工芸品です。生産されているほとんどが、お盆の時期に使う先祖供養具、いわゆる盆提灯として作られています。
誕生した江戸時代から当時の製法を守り続けている岐阜提灯には、職人の技や想い、そして日本古来の伝統が受け継がれています。
美濃で生産される美しい和紙に職人が描く水彩画は、落ち着いた色味ながら繊細かつ優美で華やかな仕上がりが魅力的です。灯りをつけるとより一層美しく輝きます。
細部にまでこだわった製法は現在も全工程を職人の手作業で担っています。盆提灯として使われる岐阜提灯には、故人を想う温かい心が込められているのです。
岐阜提灯の歴史と明治天皇
岐阜は昔から良質な和紙の生産地として栄えていました。さらに辺りには竹林も豊富にあったため、提灯作りに限らず和傘や団扇などの生産も盛んに行われる、ものづくりの土地でした。
岐阜提灯の発祥は諸説ありますが、徳川家光に献上されたといわれていることから、1600年代の初期には既に確立されていたと考えられています。その後も将軍家や大奥からも御用があったとされており、庶民には手の出ない高級品として扱われていました。
そのため地方へ出荷するほどの大量生産はできず、優れた工芸品でありながら全国にその名を知られることはありませんでした。
岐阜提灯が全国に名を知られるようになったのは、明治時代に入ってからです。
1878年に東海北陸地方巡幸で岐阜に立ち寄った際、明治天皇の目に留まったのが岐阜提灯でした。この出来事をきっかけに岐阜提灯はさらに技術とデザインを高め、確固たる地位を築き上げました。
1995年にはこれらの歴史や価値、技術が認められ経済産業大臣指定の伝統的工芸品として認定されました。この際に火袋に使用されている美濃和紙も同じく、国の伝統的工芸品の認定を受けています。
卓越した技術の結晶 岐阜提灯の魅力と特徴
岐阜提灯の特徴は、職人の技が光る細工の数々です。シンプルな形の提灯には、職人のこだわりが詰まった細工がいたるところにちりばめられています。
手作業の制作を主にした岐阜提灯には代表的な三つの技術があり、それぞれ「張り」「摺込み」「絵付け」に分けることができます。それぞれ高度な技術を必要とするため、専門の職人が担当するようになりました。以下で簡単に作業内容を紹介します。
まず「張り」です。張師と呼ばれる職人が担当するのは、提灯の骨組みを巻き上げ土台を作り、その上に地紙を張るところまで。
細く割いた竹ひごを螺旋状に巻き上げて作られる骨組みは、その巻く回数で格付けがほぼ決まってしまいます。より高級とされる提灯にはより多くの竹ひごが巻かれ、ひごの細さはより細くなっていくのです。
これを均一な張りと幅で巻き上げるのには熟練の技が必要となります。
地紙を貼る作業において難しいとされているのは、透けるほどに薄く漉かれた美濃和紙を、ピンと張った状態で糊付けしなければならないこと。少しの力加減でしわになってしまったり、破れてしまったりする和紙を扱うのは並々ならぬ集中力を要する作業です。
続いて「摺込み」は岐阜提灯において特に特徴的な工程のひとつです。もとは一定の絵柄を大量生産するために用いられた技法でしたが、現在では岐阜提灯に欠かせない伝統技法となりました。
摺込みは絵柄に合わせた型紙を作成し、ブラシで形に添って色を乗せていく技法です。一見単純な作業のようですが、色や絵柄の数だけ型紙を使い、提灯の立体感に合わせた色付けをしなければなりません。根気と技術を必要とされる工程です。
最後に「絵付け」です。岐阜提灯の絵付けは、でき上がった無地の火袋に絵付師が直接筆で描く手法が使われています。丸く曲線を描いた火袋は竹ひごの部分にごつごつとした凹凸ができています。
ただ正確に絵を仕上げるだけでも難しい作業ですが、岐阜提灯の絵付師は何十もの火袋に全く同じ絵柄を描かなければなりません。下書きもない一発勝負のこの作業には、大胆さや繊細さを兼ね備えた高度な技術を必要とします。
こうして何人もの職人たちの手を介して作り上げられる岐阜提灯は、上品で優美な仕上がりで人々を魅了してきたのです。
岐阜提灯の現代の使われ方とお手入れ方法
岐阜提灯はその生産のほとんどがお盆に使われる盆提灯です。一年に一度しか使わない盆提灯は、ついつい手入れを忘れてしまいがちです。
自然素材で作られている岐阜提灯には「久しぶりに箱を開けたら虫食いで穴が開いていた。」ということも。
毎年箱から出して、飾る際に虫干しも済ませてしまうのが良いでしょう。しまう際は火袋の扱いに充分気をつけて、中入れを忘れずに入れてしまってください。防虫剤を入れるのも効果的です。
盆提灯には故人が家に戻ってくる目印という大切な役目があります。美しい状態で役目を果たせるよう、定期的にお手入れすることをおすすめします。
岐阜提灯の見学・体験ができる場所
美濃手すき和紙専門店カミノシゴト
所在地 | 岐阜県美濃市相生町2249 |
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電話番号 | 0575-33-0621 |
定休日 | 月~木(祝日は営業) |
営業時間 | 10時~17時(変更あり) |
HP | https://www.kaminoshigoto.com/#minowashi-shop |
備考 | 岐阜提灯をはじめとした、美濃和紙を使った工芸品を購入することができます。 |
株式会社オゼキ
所在地 | 岐阜県岐阜市小熊町1-18 |
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電話番号 | 058-263-0111 |
定休日 | 土・日・祝日 |
営業時間 | 9:00~17:00 |
HP | http://www.ozeki-lantern.co.jp/ |
備考 | 岐阜提灯の専門店。伝統的な岐阜提灯や、現代的な照明を購入することができます。 |