四日市萬古焼とは
四日市萬古焼(よっかいちばんこやき)とは、三重県四日市市で作られる陶磁器・焼き物の一つです。桑名の裕福な商人であり廻船問屋『萬古家』の沼波弄山(ぬなみろうざん)※によって創始されました。
四日市萬古焼は、幼いころから茶道に精通した弄山の趣味が興じ、みずから茶器を焼いたことがきっかけで始まったと言われています。
四日市萬古焼の材料となる陶土は、現在の四日市市旭日町小向で採れる良質な鉱物、葉長石(ようちょうせき、別名:ペタライト)が含まれたもの。陶器と磁器の間の性質を持ち、磁器の硬質さと陶器の柔らかさを持つ『半磁器』の部類です。
弄山が作ったこの焼き物には『萬古不易(ばんこふえき)』または『萬古』の印が押されており、作品が永遠に残り、後世に伝わっていきますようにという願いが込められています。
四日市萬古焼には茶器、土鍋、花器、酒器、茶道具、室内置物、豚を模した蚊遣り豚など、実に幅広いジャンルがあり、色も形もさまざまです。形成方法も自由なので装飾や技法に決まりがなく、土の種類によって焼き方も変えて行われます。
そのため、四日市萬古焼とはどんな焼き物であるかと問われると『萬古の印があるものが萬古焼である』という答えになるのです。
※沼波五左衛門の号名
ハイセンスな色や柄を受け継ぎ守ってきた四日市萬古焼の歴史
沼波弄山によって四日市萬古焼が生み出されたのは、今から約300年前。元文年間(1736~1741)と呼ばれる時代です。四日市萬古焼は1736~1740年に伊勢国小向村(現在の三重県朝日町)で開窯されました。弄山の作品では、硬彩釉による赤絵をほどこした優美な作品や、オランダ蘭書の影響を受けたキリンや象、ライオンなどの柄を色絵で描いたものが有名です。
また1750年代に入ると弄山は江戸に拠点を移し、この時期に焼かれたものは『江戸萬古』と言い、弄山が作ったこれらの四日市萬古焼はまとめて『古萬古(こばんこ)』と呼ばれています。
しかし、弄山の没後は後継者がおらず、萬古焼はしばらく途絶えてしまいます。その後1832年(天保3年)に森有節(もりゆうせつ)・千秋(せんしゅう)兄弟が復興し、幕末になると桑名や四日市市だけでなく、津、松阪など伊勢国の広範囲で生産されるようになりました。
森有節らによる萬古焼は『復興(再興)萬古』や『有節萬古』と呼ばれ、華やかな桜色になる腥臙脂釉(しょうえんじさい)を発明。華やかな焼き物で大人気となったのです。
そんな有節萬古焼は山中忠左衛門※の目にとまり、四日市市の地場産業として1853年(嘉永6年)には窯を築き、1873年(明治3年)には量産体制も整うなど、産業の焼き物として栄えることになります。
四日市萬古焼は1979年1月、通産省大臣(現:経産大臣)によって伝統的工芸品に指定されています。四日市市と菰野町を中心に10社以上の窯元があります。
※:四日市萬古焼の父と言われる人
萬古の印だけじゃない!自由でバラエティ豊富な四日市萬古焼の特徴
四日市萬古焼の特徴は作品に『萬古の印』があることが一番の証であり、実にさまざまな形成方法、焼き方、絵付け、色付けの手法が取り入れられています。
成形方法としては、水ごて、排泥鋳込み(はいでいいこみ)、型萬古などがあり、焼成方法も土の種類によって焼き方を変える自由な作り方です。
その他の特徴は、四日市萬古焼の素材が持つ性質『半磁器』の特性を知ることでわかります。非常に硬くて丈夫なうえ、耐水性も高い。耐熱性のある陶土を使っているので、レンジはもちろん、炭火や空焚き、直火で使用してもOK。
そのように丈夫で強い性質は陶土の約4割がリチウム鉱石からできているおかげです。そのため四日市萬古焼では土鍋や調理器具が有名で、遠赤外線効果や保温性が高いことで知られています。急須も代表的であり、萬古焼のシンボルとなっています。
また、そのデザインはシンプルなタイプから色柄を楽しめるものまで幅広く、おしゃれにこだわる人にも、独創性のあるユニークな焼き物をお探しの方にも注目されているのです。
四日市萬古焼を大切に長く使うためのポイントを知ろう
四日市萬古焼は耐久性が高いことを紹介しましたが、手入れのコツを知っておかないと大切に長く使い続けることができない可能性があります。土鍋を例に見て行きましょう。
四日市萬古焼の土鍋は、丈夫でひび割れしにくい特徴を持っていますが、その手入れには注意が必要です。
初めて四日市萬古焼の土鍋を使うときには、事前に米のとぎ汁や小麦粉を入れた水を土鍋でひと煮立ちさせ、冷めるまで放置してください。その後でしっかりと洗います。
この処置は『目止め(めどめ)』といい、この手間をすることで、土鍋にヒビが入りにくくなり水漏れやカビを防止できます。
パッと見にはわかりにくいのですが、土鍋を始めとする『土もの』の器には細かな穴が無数に開いているからです。その穴をふさがず濡れたままいきなり火にかけてしまうと弱って来た部分からヒビが入りやすく、水漏れや割れにつながります。
細かな目の間に食材や収納のニオイが入り込んでしまうと、嫌なニオイに変化して定着してしまう可能性も。
また、土鍋の中の料理は入れっぱなしにせず、使った後は良く洗って十分に乾燥させることも大切です。しっかりと洗っても乾かないうちに収納してしまうと、嫌なニオイやカビの原因になってしまいます。
それでも家庭で使われている土鍋の中で最も多い※のが萬古焼です。ほかの陶器に比べて丈夫で目も細かいので、ニオイにも強い。お手入れのコツを頭に入れておけば安心して長く使えます。
※:土鍋の全国シェア80%は萬古焼
四日市萬古焼の見学・体験ができる場所
萬古の里会館
所在地 | 三重県四日市市陶栄町4-8 |
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電話番号 | 059-330-2020 |
定休日 | 月曜(祝日は除く) |
営業時間 |
9:00~17:00 |
HP | http://bankonosato.jp/wp/exhibition/ |
備考 |
陶芸体験:1人3,000円,2時間程度 |
醉月陶苑
所在地 | 三重県四日市市南いかるが町19-4 |
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電話番号 | 059-332-8218 |
定休日 | 金曜日 |
営業時間 | 9:00~17:00 |
HP | https://bankoyaki.jp/ |
備考 | 一般3,000円,2時間程度 |